躁うつ病(双極性障害)
躁うつ病(双極性障害)とは
躁うつ病(双極性障害)は、「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す病気です。
双極という言葉は、躁の極とうつの極の2つを指します。
疫学的には、Ⅰ型の発症率は約1%弱、Ⅱ型は1~5%とされています。
主に10代で発症し、治療開始は20~40代が多いです。男女差はほとんどなく、遺伝要素は統合失調症と同程度であり、再発率は90%以上と高いです。
躁うつ病の症状
症状は大きく「躁の症状」と「うつ症状」の2つに分けられます。
躁症状
- 自尊心の高まり(誇大的になり、時に誇大妄想を認める)
- 睡眠欲求の減少(睡眠時間の短縮、寝なくても大丈夫と感じる)
- 多弁(話す内容が増え、話したくて仕方がないという焦燥感)
- 観念奔逸(考え方が次々と浮かび、まとまりがなくなる)
- 注意散漫(刺激に敏感で、すぐ気が散る)
- 目標のための行動の増加(予定をいくつも立てるなど)
- 過度の熱中(浪費や過度な投資など)
うつ症状
- 抑うつ気分(気持ちが浮かない)
- 不眠(眠れないまたは過眠)
- 興味の減退(何にも興味がわかない)
- 罪悪感(自分を責める)
- 活力の減退(意欲が出ない)
- 集中力の低下(集中できない)
- 食欲の低下(食欲が減り、体重も減る)
- 精神運動制止(動きがゆっくりになる、または逆の焦燥感)
- 希死念慮
躁うつ病の分類
躁うつ病は躁の強さによって分類されます。
- Ⅰ型:躁のエピソードとうつのエピソードを繰り返
- Ⅱ型:軽躁とうつを繰り返す
Ⅰ型では、特に躁のときに浪費や対人トラブルの危険があり、症状が強い場合は入院を要することもあります。
Ⅱ型は多くの方がうつのため、うつ病との見分けが難しいですが、うつ病とは治療法が異なるため鑑別が重要です。
特殊な状態
- 混合状態:うつと躁が混じった状態で、不安定リスクが高いため注意が必要です。
- 急速交代型(ラピッドサイクラー):年間に4回以上エピソードが変わる状態で、抗うつ薬などがリスクを上げることがあります。
躁うつ病の鑑別
- うつ病:双極性Ⅱ型はうつ病と見分けにくいが、治療が異なるため鑑別が重要です。
- ADHD:ADHDは変動の間隔が短く、共通点が多いですが、最近では併発することも多いとされています。
- 体の原因:甲状腺の異常など、体の原因がある場合もあります。
躁うつ病の治療
主には「薬物療法」と「心理教育」を組み合わせます。
薬物療法
- 気分安定薬:リチウムやバルプロ酸を使用し、気分の波を抑えます。再発予防に重要です。
- 抗精神病薬:オランザピンやアリピプラゾールなどが使用され、素早く躁状態を抑える効果があります。
薬物療法は、躁状態の改善にはリチウムと抗精神病薬の併用が基本です。
うつの改善にはリチウムが使用されますが、効果が弱い場合はラモトリギンや一部の抗精神病薬が使われます。
心理教育
気分の逆をする
うつの時に動きたくない、躁の時に動きたいという自然な流れに逆らうことで、波を減らし安定化を図ります。
生活リズムの安定
不眠やリズムの乱れが不安定のリスクになるため、生活リズムを一定に保つことが重要です。
軽うつ安定の受け入れ
軽うつ状態で安定することが多く、気持ちの葛藤が生じやすいですが、薬をやめると危険です。
疾患・長期治療の受け入れ
薬の治療を続ける必要があり、再燃リスクがあるため、治療の中断は避けるべきです。
薬の継続
再燃予防や社会生活の継続には薬の継続が必要です。
全体のまとめ
この病気は躁とうつを繰り返し、特に躁の時にトラブルが起こりやすいです。
再発リスクが高いため、気分安定薬の継続が必要です。
治療継続に葛藤が生じやすいですが、病気を理解し受け入れることで、安定した生活を目指すことが重要です。
参考文献
執筆・監修
精神保健指定医 野口晋宏