認知症
認知症
認知症は、「中核症状」と呼ばれる物忘れなどの生活面の症状と、「周辺症状」と呼ばれる心の不調の双方が現れる「脳の不調」です。
脳の萎縮など、脳レベルでの障害が考えられています。
症状①中核症状
症状の一つ目は、脳のダメージに伴って現れる「中核症状」です。
以下のような症状が年単位で徐々に進行します。
- 物忘れ
- 見当識障害(時間や場所がわからなくなる)
- 思考や生活能力の全般的な低下(認知機能障害)
症状②周辺症状
もう一つの症状は「周辺症状」です。
これは、環境などのストレスも影響する様々な精神的な症状です。
以下のような症状が現れ、生活に大きな影響を与えることがあります。
- 不安や落ち込み
- もの取られ妄想
- 徘徊
認知症と区別が難しい不調
認知症と紛らわしい不調には以下の2つがあります。
①他の体の不調
甲状腺の異常や脳の病気など、他の体の不調で認知症と似た症状が出ることがあります。
また、薬の副作用や相互作用による場合もあります。
診断には、以下のような各種検査や薬の確認を行ってこれらを除外することが必要です。
- 採血
- 脳の画像検査
②老年期のうつ病
うつ病で意欲が低下したときに、記憶力の低下など認知症と似た症状が現れることがあります。
見分けが難しいこともありますが、うつ病の場合は「本人の自覚症状が強い」ことが特徴です。
診断までの3段階
次の3つの視点からの情報を総合して診断します。
①病歴・症状
これまでの経過や症状、その順番をしっかりと確認し、認知症の一般的な進行状況に合致するかを見ます。
②認知機能検査
長谷川式検査などの記憶に関する検査を行い、現在の物忘れの程度を確認します。
③各種検査(採血・画像等)
体の原因を除外するために、採血や脳の画像検査などを行います。
治療の3本柱
認知症の治療は、「中核症状への治療」「周辺症状への治療」「介護サービスの活用」の3本柱があります。
治療①中核症状への治療
中核症状は脳の萎縮自体からくるため、症状の進行を止めることは難しいですが、その進行を遅らせることが目標となります。以下の方法で進行の抑制を図ります。
- ドネペジルなどの抗認知症薬を早期から継続して使用する
- 頭を使う「認知リハビリ」を行う(デイサービス等を活用)
治療②周辺症状への治療
周辺症状は環境やストレスなどへの反応が大きいため、環境の調整で大きく改善することがあります。以下の方法を活用します。
- デイサービスなどの介護サービスを活用し、生活リズムや環境を整える
- 改善が難しい場合には、漢方薬や抗精神病薬などの薬物治療を検討
治療③介護サービスの活用
薬物治療のほかに、認知症の治療・ケアにおいて重要なのが「介護サービスの活用」です。
介護保険制度を利用し、以下の方法で本人の症状の安定と家族の介護負担の軽減を図ります。
- 介護保険の認定を受けるために、「かかりつけ医による診断書の作成」が必要
- 介護保険の申請を行い、認定調査や診断書の記載を通じて「介護保険の認定」を取得
- ケアマネージャーと相談し、症状に合わせたケアプランを立て、実際に介護サービスを利用
これにより、認知症の治療とケアを効果的に進めることができます。
参考文献
執筆・監修
精神保健指定医 野口晋宏