統合失調症
統合失調症とは
統合失調症は、脳の病気であり、主に幻聴・妄想・思考のまとまりの欠如が特徴です。
発症率は約1%で、15歳から35歳に多く見られる慢性疾患です。
男女差は少なく、遺伝的要素も一部関与しています。
統合失調症の症状
大きく陽性症状、陰性症状、認知機能障害の3つの症状に分類されます。
陽性症状
概要
本来ないものがある症状。脳の敏感さやドーパミンの過剰が背景にあると言われています。
主な症状
- 幻聴: 「ないはずの声」が聞こえる。例:「自分の考えが声に出る」「悪口を言う声」など。
- 妄想: 「独特な考えにとりつかれる」。例:「悪い組織に狙われている」「自分は神の生まれ変わり」など。
- 興奮や過敏: イライラ、大声、物を壊すなど。
陰性症状
概要
意欲など本来あるものがなくなる症状。急性期の改善後に目立ち、生活に影響します。
主な症状
- 意欲低下(アパシー): 何もやる気がせず、日常のセルフケアが困難。
- 感情平板化: 感情が動かず、表情や言葉の抑揚が減る。
- 社会的ひきこもり(自閉): 人や外を避け、結果的に孤立。
認知機能障害
概要
記憶や判断など、脳の考える機能の障害。急性期の改善後に目立ち、社会生活に影響します。
主な症状
- 記憶力の低下: 新しいことを覚えにくく、忘れやすい。
- 注意力の低下: 集中が続かず気がそれる。
- 実行機能の低下: 段取りや優先順位の調整が難しくなる。
統合失調症の原因・機序
原因はまだ不明な点が多いですが、主に以下の仮説があります
- ドーパミン仮説: ドーパミンの過剰で様々な症状が出る。
- 神経発達障害仮説: 神経の発達段階で微妙な異常がある。
- 脆弱性ストレスモデル: ストレスへの敏感さが元来あり、ストレスで悪化する。
病期
統合失調症の病期は4段階に分けられます
- 前駆期: 不安や過敏などの症状が現れる。
- 急性期: 幻聴や妄想などの陽性症状が強く出る。
- 休息期: 陽性症状が改善し、陰性症状が目立つ。
- 回復期: 陰性症状が徐々に回復し、社会生活に戻る。
鑑別疾患
統合失調症の診断には以下の疾患との鑑別が必要です
- 躁うつ病(双極性障害)
- 自閉症スペクトラム
- 器質性疾患(甲状腺の異常など)
統合失調症の治療
治療は「薬物療法」と「心理社会的治療」の2本柱です。
薬物療法
ドーパミンなどを抑える抗精神病薬を使用。例:リスペリドン、オランザピン等。
心理社会的治療
目的
薬でカバーしきれない症状への対策、症状の自己管理、段階的な社会復帰。
主な治療
- 心理教育: 病気や症状、治療を学び自己管理を目指す。
- 生活支援: 日常生活の困難をサポートし、再燃予防を図る。
- 日中活動・就労支援: デイケアや作業所に通いリハビリを行う。
各時期の治療と対策
- 前駆期: 急性期への移行を防ぐための休養や薬の調整。
- 急性期: 脳の興奮を抑える薬物療法と休養が最優先。
- 休息期: 再燃を防ぎながら意欲の改善を図る。
- 回復期: 再燃を防ぎつつ社会参加を目指す。
実際の対処方法
- 幻聴への対処: 幻聴かどうかを見極め、距離を取って受け流す。
- 妄想への対処: 客観的に見て、別の見方を探る。
- 再燃を防ぐ: 薬の継続と前触れに気付くことが重要。
- 副作用の対策: 医師と相談しながら薬のバランスを模索する。
- 受け入れと抑うつ: 自分を認め、焦らずに受け入れを進める。
- ご家族の対応: 穏やかな対応を心掛け、病気や症状の対策を学ぶ。
まとめ
統合失調症は約100人に一人がなる脳の病気で、再燃予防と日常生活の維持が重要です。
治療は薬物療法と心理社会的治療を柱とし、リハビリや対処法を用いて段階的な社会復帰を目指します。
参考文献
執筆・監修
精神保健指定医 野口晋宏