傷病手当金について
傷病手当金とは?
「傷病手当金」とは、病気やケガで働けなくなった場合に経済的な保障を提供する健康保険制度です。
給与の約3分の2に相当する金額が支給され、うつ病などの精神疾患も対象となります。
治療中の仕事を休んだ際に収入が途絶える不安がある方にとって、この制度は大きな支えとなります。
病気やケガで勤務先から給与が支払われなくなった場合に支給され、支給期間は最長1年6カ月。
標準報酬月額の2/3を日割りした金額が休んだ日数分支給されます。
傷病手当金の申請方法
傷病手当金を申請する際の手順は、大きく以下の3つのステップに分かれます。
- 申請書の取得
- 申請書の記入
- 申請書の提出
申請書の取得
傷病手当金支給申請書は、以下の方法で入手できます。
会社からもらう
会社の総務部や人事部が、従業員が傷病手当金を申請する場合に備えて、あらかじめ申請書を保管していることがあります。
休業前に出社が可能であれば、会社から傷病手当金支給申請書がもらえるか確認してみましょう。
会社から郵送してもらう
出社が難しい場合、会社に依頼して健康保険組合や協会けんぽから申請書を入手してもらい、それを郵送してもらうことも可能です。
インターネットからダウンロードする
協会けんぽでは、申請書をインターネットからダウンロードすることができます。
PDF形式の「傷病手当金支給申請書」を印刷して手書きで記入する方法です。
申請書の記入
傷病手当金支給申請書は、以下の4枚で構成されています。
- 被保険者記入用(本人が記入する):2枚
- 事業主記入用(会社が記入する):1枚
- 療養担当者記入用(医師が記入する):1枚
会社に「事業主記入用」の記入を依頼
書類をもらう際に、会社に「事業主記入用」の記入を依頼します。
これは、休職期間中に給与が支払われていないことを証明する書類です。
被保険者記入用の記入
申請者本人が「被保険者記入用」の2枚を記入します。
医師に「療養担当者記入用」の記入を依頼
来院時に受付スタッフに「療養担当者記入用」の用紙を提出してください。
その際に、申請する期間の日付をお伝えください。
初診日から患者さんを最後に診察した日までの間でしか記入できませんのでご注意ください。
記載例
初診日が4月1日で、申請書作成のための受診日が5月15日の場合、4月1日から5月15日の間で、記載可能です。
記載可能な例
- 4月1日から4月30日まで
- 5月1日から5月15日まで
など
記載できない例
- 3月20日から4月30日まで
→初診日以前は記載できません。 - 5月1日から5月31日まで
→最終診察日以降の、未来の期間については記載できません。
注意点
労務不能と認められる期間
前提として傷病手当金は制度の仕組み上、働けなかった期間を申請する「事後申請」になります。
主治医は診察した期間のうち「労務不能」と認めた期間を記入します。
患者さんが有給休暇を使用していた期間などは、主治医には把握できないため、初回申請時には有休の利用状況に関係なく、主治医が労務不能と判断した期間がそのまま記載されます。
継続申請の際の注意
継続申請の場合は、前回の申請期間の続きから記入します。
会社によっては手続きや給与の締め日などの関係で、申請期間が指定されることがあります。
この指定期間については、患者さんが主治医に直接伝え、主治医が労務不能と認めた範囲で書類が発行されます。
指定された期間と診断が一致していれば問題ありません。
ただし、受診日以降の未来の期間については証明できません。
最終受診日以前の期間のみ記載が可能です。
申請書の提出
4枚すべての書類が揃ったら、保険者(協会けんぽや健康保険組合)へ傷病手当金の支給申請を行います。
申請は会社を経由して提出するのが一般的ですが、本人が直接郵送して申請することも可能です。
支給条件
傷病手当金を受けるためには、次の条件をすべて満たす必要があります。
勤務先の健康保険に加入している被保険者本人であること
対象は、勤務先の健康保険に加入している方です。
パート・アルバイトでも加入していれば対象になりますが、被扶養者や自営業で国民健康保険に加入している方は対象外です。
業務外の傷病で仕事ができない状態であること
私的な病気やケガで、医師が「労務不能」と診断した場合に支給対象となります。
業務に起因する傷病は労災保険の適用となり、傷病手当金は支給されません。
勤務先から給与が支払われていないこと
有給休暇や病気休暇がある場合は、それらが優先されます。
給料が発生しない、または支給額が傷病手当金の額以下に減額された場合に受給できます。
連続して3日間の待機期間があること
傷病手当金は、3日連続で休んだ後の4日目から支給されます。
待機期間には有給休暇や公休日も含めることができます。
支給期間と金額
傷病手当金の支給期間は、支給開始日から通算で最長1年6カ月です。
この期間内で、医師が「労務不能」と認めた日数分が支給対象となります。
支給額は、支給開始日前の直近12か月間の標準報酬月額を基に計算され、その額の3分の2が支給されます。
傷病手当に関するよくある質問
休職中の通院頻度はどのくらいですか
休職中の通院回数が少ないと通院の必要がない程度の病状だと判断されてしまい支給が認められない可能性があります。
そのため2週間に一度の通院をお勧めしています。
どのくらいの間隔で申請書を提出すればよいですか
1カ月につき1枚を申請するのが一般的です。
退職後も傷病手当金を受け取れますか?
退職後も条件を満たせば、傷病手当金を受給することができます。
以下の2つの条件を満たしている必要があります。
- 退職日までに1年以上健康保険に加入していたこと
1年以上継続して健康保険に加入していれば、会社が変わってもブランクがなければ対象となります。 - 退職日に傷病手当金の受給資格者であること
退職日に出勤してしまうと、受給資格を失う可能性があります。退職日は出勤せずに済ませることが重要です。
傷病手当金と雇用保険(失業手当)の違いは
傷病手当金は、業務外の病気やケガによる療養中に「労務不能」となり、働けない状態の間に支給される健康保険制度です。
この「労務不能」とは、職があるにもかかわらず病気やケガで働けない状態を指します。
一方、失業手当は、「失業状態」にあり、次の仕事を探している間に支給される雇用保険制度です。
「失業」とは、働ける状態にあるにもかかわらず、職がない状態を指します。
これらは全く異なる状況であるため、同時に受給することはできません。
ただし、傷病手当金を受け取っている間に退職し、支給期間が満了した後であれば、失業手当を受給することが可能です。
この場合、失業手当の受給要件を満たしていることや、必要な手続きや医師の診断書が必要になります。
雇用保険の「傷病手当」との違いは
雇用保険にも「傷病手当」という制度がありますが、健康保険の傷病手当金とは異なる制度です。
健康保険の傷病手当金は、雇用されている方が病気やケガで労務不能となった場合に支給されます。
一方、雇用保険の傷病手当は、失業後、求職活動をしている途中で病気やケガにより「求職不能」となった場合に支給されるものです。
つまり、失業して求職中に病気やケガで働けなくなったときに補償される手当です。
パート勤務でも傷病手当金を受け取れますか?
勤務先の健康保険に加入していれば、パート勤務でも対象となります。
傷病手当金の申請から振り込みまでどのくらいかかりますか?
申請から3週間前後で指定口座に振り込まれることが多いです。
医療機関にかかる前の労務不能は証明できますか?
原則として、初診日以降にしか労務不能を証明できません。