福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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はじめに

「夜、布団に入ると脚の奥のほうがむずむずして、どうにも落ち着かない。じっとしていられず、つい脚を動かしたり、起き上がってマッサージしたりしてしまう。動かしているあいだは少し楽になるのに、やめてまた横になると、またむずむずがやってくる」――。

そんな状態がつづいて、寝つきが悪くなり、睡眠時間が削られている方がいらっしゃいます。「ただの寝つきの悪さ」「気の持ちよう」と思って我慢している方も少なくありませんが、これは**レストレスレッグズ症候群(restless legs syndrome)**という、れっきとした病気かもしれません。「むずむず脚症候群」とも呼ばれます。

この記事では、

  • レストレスレッグズ症候群でよくみられる訴えと、見分けるための4つの特徴
  • 背景にある鉄不足やカフェインなどの要因
  • 不眠だけでなく、気分の落ち込みや不安を伴いやすいこと
  • 治療で改善が期待できること、受診の目安

を、患者さん向けにかみくだいてお伝えします。一人で抱え込んでいた方が、「もしかして自分もそうかもしれない」と気づくきっかけになればと思います。

「脚がむずむずして眠れない」とはどんな感覚か

レストレスレッグズ症候群でよく聞かれるのは、「脚の奥に、なんとも表現しにくい気持ち悪さがある」という訴えです。表面のかゆみや痛みとは少し違い、脚の深いところ、とくにふくらはぎの奥のあたりに違和感を感じるという方が多くいらっしゃいます。

その感覚を言葉にしてもらうと、

  • 虫が這(は)っているような、むずむずする感じ
  • なんとも言えない、じっとしていられない不快感
  • 脚を動かしたくてたまらない衝動

といった表現になります。「ピリピリ」「ジンジン」といったしびれや痛みとは異なり、「動かさずにはいられない」という強い衝動を伴うのが特徴です。

この違和感があると、脚を動かしたり、立って歩いたり、さすったりせずにはいられません。そして動かしているあいだは楽になるのに、やめるとまたぶり返すため、夜なかなか寝つけず、睡眠時間が減ってしまうのです。寝不足から日中に眠気が出ることもあります。

見分けるための4つの特徴

レストレスレッグズ症候群には、専門家が診断の手がかりにする4つの基本的な特徴があります。ご自身の状態を振り返るときの目安にもなりますので、紹介します。

  1. 脚を動かしたいという強い衝動がある ―― 不快な感覚に伴って、脚を動かさずにはいられない気持ちが起こります。
  2. じっとしていると悪化する ―― 横になったり座ったりして安静にしているときに、症状が出たり強くなったりします。
  3. 動かすと軽くなる ―― 歩いたり、脚を動かしたり、ストレッチをしたりすると、少なくともそうしているあいだは症状がやわらぎます。
  4. 夕方から夜にかけて強くなる ―― 日中より、夕方や夜のほうが症状が出やすく、強くなる傾向があります。

この「動かしたくなる・じっとすると悪化・動かすと楽・夜に悪化」という4つがそろっているかどうかが、見分けるうえでの大きなポイントです。なお、これらはあくまで気づきの手がかりであり、似た症状を起こす別の状態(脚のこむら返り、関節の痛み、むくみなど)もあります。最終的な診断は医師が行いますので、当てはまる点があれば一度ご相談ください。

夜だけでなく、日中に出ることもある

「夜の病気」というイメージがありますが、症状が進むと日中の安静時にも出ることがあります。たとえば、帰宅の電車で座っていると脚の違和感が出てきて、じっと座っていられない、という方もいらっしゃいます。会議中や映画館など、長く座っている場面で落ち着かなくなるのも、同じ理由であることがあります。「行儀が悪い」「落ち着きがない」と誤解されてつらい思いをされる方もいますが、ご本人の意志でどうにかできるものではありません。

めずらしくない、ありふれた病気です

レストレスレッグズ症候群は、決してまれな病気ではありません。人口のうち数パーセントの方にみられるとされ、睡眠にまつわる悩みのなかでも比較的よくある病気として知られています。

それにもかかわらず、「年のせい」「疲れのせい」「気のせい」と思われて見逃されやすいのが、この病気のもう一つの特徴です。脚の感覚という、ほかの人に伝えにくい症状であることや、動かすと楽になるため本人も「病気」と思いにくいことが、その背景にあります。だからこそ、「自分だけかもしれない」と思い込まず、こういう病気があると知っておくことが大切です。

背景にあるもの ―鉄不足やカフェインなど

レストレスレッグズ症候群には、症状を起こしたり強めたりする背景や要因があることが知られています。代表的なものをいくつか挙げます。

  • 鉄が不足した状態(鉄欠乏) ―― 体の鉄が足りない状態が関係することがあると考えられています。月経の量が多い方や、貧血を指摘されたことのある方では、背景に鉄不足がかくれていることがあります。
  • カフェイン ―― コーヒー、紅茶、緑茶などに含まれるカフェインは、症状を強めることがあるとされています。
  • お酒(飲酒)・たばこ(喫煙) ―― これらも症状を悪くする要因になりうると言われています。
  • 睡眠不足 ―― 睡眠が足りないこと自体が、症状を悪化させることがあります。

なかでも鉄不足は、検査で調べられ、対応できる可能性のある要因です。ただし、「鉄が足りないから市販のサプリを飲めばよい」と自己判断するのは禁物です。鉄が必要かどうか、どの程度補うべきかは、検査と医師の判断によって決まります。まずは状態を正しく評価してもらうことが、改善への近道になります。

不眠だけでなく、心にも影響することがあります

レストレスレッグズ症候群でつらいのは、脚の不快感そのものだけではありません。夜ぐっすり眠れない日がつづくと、心にも影響が及ぶことがあります。

実際、この病気の方では、症状による苦痛や慢性的な睡眠不足のためか、気分の落ち込み(抑うつ)や不安を伴いやすいことが知られています。「眠れないのは脚のせいだと思っていたけれど、最近は気分まで沈みがちで、何をするのもおっくう」――そんなふうに感じている方もいらっしゃるかもしれません。

脚の症状と心の状態は、こうしてつながっていることがあります。だからこそ、脚のむずむずを「たかが脚の問題」と軽く見ず、眠れないことや気分の変化もあわせて、医師に率直にお話しいただくことが大切です。

治療で改善が期待できます ―一人で我慢しないで

ここまで読んで、不安に思われた方もいるかもしれません。けれども、お伝えしたい大切なことがあります。レストレスレッグズ症候群は、適切な評価と対応によって、症状の改善が期待できる病気です。

たとえば、カフェインやお酒など症状を強める要因を見直す、軽い運動や脚のマッサージを取り入れるといった、お薬以外の工夫から始められることもあります。背景に鉄不足などの要因がある場合には、それに応じた対応が検討されます。どのような対応が適しているかは、症状の程度や背景によって一人ひとり異なりますので、診断や治療の方針は医師が判断します。効果や治り方には個人差がありますが、長く我慢してきた症状が和らぎ、夜ぐっすり眠れるようになる方も少なくありません。

何年も「脚のせいで眠れない」と一人で耐えてきた方が、受診をきっかけに楽になることは十分にあります。「こんなことで病院に行ってもいいのだろうか」とためらう必要はありません。

受診の目安

以下に当てはまることがあれば、一度ご相談ください。

  • 夜、布団に入ると脚の奥がむずむず・もぞもぞして、寝つけない日がつづく
  • じっとしていると脚の違和感が強くなり、動かすと楽になる
  • 夕方から夜にかけて症状が強くなる
  • 電車や会議など、長く座っている場面で脚が落ち着かない
  • 寝つけないことで睡眠時間が減り、日中に眠気が出ている
  • 脚の症状とあわせて、気分の落ち込みや不安を感じている
  • 貧血や鉄不足を指摘されたことがある、月経量が多い

これらはあくまで気づきの手がかりであり、当てはまっても必ずこの病気というわけではありません。診断は医師が問診や必要な検査をもとに行いますので、安心してご相談ください。

まとめ

「夜、脚がむずむずして眠れない」という悩みの正体が、レストレスレッグズ症候群という治療できる病気であることがあります。脚を動かしたくなる・じっとすると悪化・動かすと楽になる・夜に強くなるという4つの特徴がそろうかどうかが、見分ける大きな手がかりです。

背景には鉄不足やカフェイン・お酒・たばこなどの要因がかくれていることがあり、不眠だけでなく気分の落ち込みや不安を伴うこともあります。人口の数パーセントにみられるありふれた病気でありながら、見逃されやすいのが実情です。

けれども、適切な評価と対応によって改善が期待できる病気でもあります。長いあいだ一人で我慢してきた方こそ、どうか抱え込まずに、お気軽にご相談ください。夜ぐっすり眠れる毎日を取り戻す、その一歩になればと思います。


参考にした書籍(要約・再構成。原文の転載ではありません):

  • 精神科臨床ライブ 精神科治療学 増刊号

よくある質問

脚がむずむずして眠れません。これは病気ですか?

脚を動かしたくなる衝動、じっとすると悪化、動かすと楽になる、夜に強くなる、という4つの特徴がそろう場合、レストレスレッグズ症候群という病気の可能性があります。めずらしくない病気で、治療で改善が期待できますので、一度ご相談ください。診断は医師が行います。

鉄が足りないと脚がむずむずするのですか?

鉄が不足した状態(鉄欠乏)が背景にあることがあると知られています。そのほか、カフェインやお酒、たばこが症状を強める要因になることもあります。ご自身で判断せず、医師の評価を受けることをおすすめします。

何科を受診すればよいですか?

睡眠の悩みや脚の異常感覚は、精神科・心療内科や睡眠を扱う医療機関で相談できます。不眠だけでなく気分の落ち込みや不安を伴うこともあるため、お困りの内容をそのままお話しください。

自分でできる工夫はありますか?

症状を強めうるカフェインやお酒・たばこを見直すこと、睡眠時間を確保すること、軽い運動や脚のマッサージを取り入れることなどが挙げられます。ただし、これらで十分かどうかは状態によりますので、自己流で抱え込まず、改善が乏しい場合は受診をご検討ください。

一時的なものなら様子を見てもよいですか?

ごく軽く、たまにしか出ないものまですぐ受診が必要とは限りません。ただ、毎晩のように眠りが妨げられる、日中の生活に支障が出ている、気分が沈みがちといった場合は、我慢せず相談することをおすすめします。

関連する病気の説明

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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