福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

はじめに

「最近、家族がいつもと違う気がする」と感じて、この記事を読んでいる方がいるかもしれません。

眠らなくても元気そうにしている。急に計画が増えた。いつもより早口でよくしゃべる。衝動的な買い物が増えた。そして、そのあとに急に落ち込む時期が来る。

こうした変化は、双極性障害2型における「軽躁状態」の可能性として、専門家に伝える価値のある情報です。ただ、「もしかして病気なのかも」と思っても、どうすればよいかわからず、一人で抱え込んでしまうこともあります。

この記事は、本人ではなく家族・パートナー・身近な人に向けて書いています。本人を責めずに、事実を整理し、相談へつなげるためのヒントをお伝えします。

なお、この記事は診断の根拠になるものではありません。双極性障害2型かどうかの判断は、必ず専門医が行います。

家族が先に気づくことがある理由

双極性障害2型の「軽躁状態」は、本人には「調子が良い時期」として感じられることが多く、本人自身は病気のサインとは気づきにくい特徴があります。

むしろ、「仕事がはかどる」「活動的でいられる」「気分が良い」と感じているため、それを問題として認識しません。気分がとても良い状態を異常とは感じにくいのは、ある意味では自然なことです。

一方、身近にいる家族やパートナーは、日常の中での変化に気づきやすい立場にあります。

  • 普段の睡眠時間を知っている
  • 以前と比べた話し方・行動の変化に気づける
  • 「元気な時期」のあとに「落ち込む時期」が来るパターンを見ている

こうした日常的な観察の積み重ねは、診察の場では非常に貴重な情報になります。「気のせいかもしれない」と思わずに、気になる変化はメモしておくことをおすすめします。

軽躁状態で周囲が気づきやすいサイン

軽躁状態のサインは、一つひとつを取り出すと「元気な人」にも見えることがあります。重要なのは、普段と比べて明らかに違う変化が数日以上続いているかどうかです。

眠りについて

  • 睡眠時間が明らかに短くなっているのに、疲れた様子がない
  • 夜遅くまで活動していても「全然眠くない」と言う
  • 「4時間も寝たから十分」などと言う時期がある

話し方・コミュニケーション

  • いつもより早口になった、話す量が増えた
  • 会話が止まらない、途中で話を変えることが多い
  • 夜中や早朝にメッセージを送ってくる

行動・計画

  • 急に新しい趣味・仕事・計画を始める
  • 予定を次々と入れてスケジュールが詰まっている
  • 衝動的な買い物・ネットショッピングが増えた
  • 大きな買い物や契約を突然決める

気分・態度

  • 自信満々になり、「自分には何でもできる」という発言が増える
  • 些細なことでイライラしやすい、怒りっぽくなった
  • 人付き合いが急に活発になる

そのあとに来る変化

  • 活動的な時期のあとに、急に落ち込む・引きこもる時期が来る
  • 「あのときなんであんなことをしたんだろう」と後悔することが多い

「元気なだけ」と見えるときに注意したいこと

軽躁状態の難しさは、「元気で調子が良い状態」に見えることです。本人は問題を感じていないため、「受診する必要がない」と感じやすく、周囲が異変に気づいても伝えにくい状況になります。

ただ、身近な人が「普段と違う」と感じるとき、その感覚には根拠があることが多いものです。以下のような場合は、変化を記録しておくことをおすすめします。

  • 「良い時期」と「落ち込む時期」が以前から繰り返している
  • 良い時期の行動が、後になってトラブルや後悔につながっている
  • 周囲が「いつもとは違う」と感じているのに本人だけ気づいていない

「元気なら問題ない」ではなく、その後に来る変化や全体のパターンを見ることが大切です。

本人に伝えるときのポイント

受診を勧めるタイミングや伝え方は、関係性に大きく影響します。焦らず、日常の会話の中で話しやすい状況を選んでください。

伝えやすい切り出し方の例

  • 「最近、眠れてる?ちょっと心配で」
  • 「最近調子はどう?気になることがあったら話してほしくて」
  • 「眠れなくても平気な感じが続いているみたいで、少し気になってる」

伝えるときに意識するとよいこと

  • 「あなたがおかしい」ではなく「私が気になっている」というスタンスで話す
  • 「最近3日間、ほとんど寝ていないみたいで」など具体的な事実を伝える
  • 「受診しなさい」と強要せず、「一緒に相談しに行ってみない?」と提案する
  • 相手が「大丈夫」と言っても、一度で決めようとしない

軽躁状態のときは、「自分は大丈夫」という確信が強くなりやすいため、すぐに受診に同意してもらえないこともあります。関係を保ちながら、繰り返し話せる余地を作ることが大切です。

やってはいけない対応・避けたい言い方

心配からくる言葉でも、受け取る側には傷になることがあります。以下の表現は、本人を追い詰めたり、関係を悪化させる可能性があるため避けることをおすすめします。

避けたい言い方

  • 「あなたは病気だ」
  • 「なんでこんな行動をするの?おかしいんじゃないの?」
  • 「またそんなに張り切って、どうせすぐ落ち込むんでしょ」
  • 「なんでわかってくれないの」と感情的に詰め寄る

避けたい対応

  • 本人の意思を無視して診察予約を取り、強引に連れていく
  • 「受診しないなら出ていけ」などの脅しや圧力をかける
  • 本人の行動をすべて監視・管理しようとする

本人には本人のペースがあります。家族ができることは、気になっていることを伝え、相談先を示すことです。治療をどう進めるかは、本人と医療者が相談しながら決めていきます。

受診時に家族がメモしておくとよいこと

本人が受診する際に、家族が観察した情報を整理しておくことは、診察に役立ちます。当院では、患者さんご本人が来院できるときに、ご本人の同意のもとで家族が同席することは可能です。

記録しておくとよい内容

  1. いつから変化が気になり始めたか
  2. 睡眠の変化
    • 何時に寝て何時に起きているか
    • 眠れていない様子なのに元気そうだった時期はいつか
  3. 行動の変化
    • 買い物や支出が増えた時期・内容
    • 新しい計画・約束が急に増えたこと
    • 衝動的な発言や行動があった具体的な出来事
  4. 気分・言動の変化
    • いつもより多弁・早口だった時期
    • イライラが強くなった時期
    • 「自分は大丈夫」という言動が増えたこと
  5. 「良い時期」と「落ち込む時期」のパターン
    • どのくらいの周期で繰り返しているか
    • 落ち込みの時期はどのくらい続くか

メモは細かくなくて構いません。「4月頃から眠れていない感じ。夜中に活動していた」「急に大きな買い物をした」程度の記録でも診察の参考になります。

家族だけで相談してもよいのか

当院では、家族だけでの相談は受け付けていません。

「本人をどう受診させればよいかわからない」「受診を拒否されている」「自分一人で抱えていてつらい」。こうした場合に家族だけで相談したいときは、保健所、精神保健福祉センター、こころの健康相談統一ダイヤルなどの公共相談窓口をご利用ください。

公共相談窓口で整理しやすいこと

  • 気になる行動・変化をどう見ればよいか
  • 本人への伝え方・関わり方
  • 家族として今できること、できないこと
  • 受診を勧めるための具体的な方法

当院を受診される場合は、患者さんご本人が来院できるときに、ご本人の同意のもとで家族が同席することは可能です。その際は、上記のようなメモを持参していただくと、診察の参考になります。

危険が差し迫るときの対応

普段の「気になる変化」の範囲を超えて、以下のような状況がある場合は、より緊急の対応が必要です。

すぐに相談・対応が必要なサイン

  • 「死にたい」「消えてしまいたい」という言葉を口にする
  • 自傷行為が見られる
  • 他者に危害を加えそうな言動がある
  • 現実とはかけ離れたことを確信して行動している
  • 経済的・法的に取り返しのつかない行動に向かっている

生命の危険が差し迫る場合は119番、他者への危害が心配される場合は110番に相談してください。かかりつけ医がいる場合は、すぐに電話でご相談ください。

公的な相談先として、厚生労働省のまもろうよ こころでは相談窓口が案内されています。こころの健康相談統一ダイヤル0570-064-556 です。相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なります。

「元気そうに見えるが、死にたいとも言う」という状態は、一人で判断せず、早めに専門家へ相談してください。

よくある質問

本人が受診を嫌がっているとき、どうすればよいですか?

無理に連れていこうとすると、関係が悪化してその後の相談が難しくなることがあります。当院では家族だけでの相談は受け付けていません。家族だけで相談したい場合は、保健所、精神保健福祉センター、こころの健康相談統一ダイヤルなどの公共相談窓口をご利用ください。

家族だけで先に相談してもよいですか?

当院では家族だけでの相談は受け付けていません。患者さんご本人が受診できる場合に、ご本人の同意のもとで家族が同席することは可能です。家族だけで相談したい場合は、保健所や精神保健福祉センターなどの公共相談窓口をご利用ください。

軽躁状態と、ただの元気な性格・一時的な好調の違いはどこですか?

見分けの目安は、普段と比べてどのくらい違うか、その変化が数日以上続いているかです。睡眠が短くても疲れない、衝動的な行動が増えるなど、以前にはなかった変化があれば記録しておくとよいでしょう。

どんな記録をつければ診察に役立ちますか?

日付、睡眠時間、具体的な行動、気分・言動の変化を簡単にメモしてください。「夜中2時まで活動していた」「急に高額なものを購入した」といった記録でも役立ちます。

怒りっぽい・イライラしやすい状態のとき、どう接すればよいですか?

正面から議論せず、刺激を増やさないことが基本です。感情的に言い返すより、短く穏やかに伝え、必要なら距離を置いて家族自身の安全を確保してください。

衝動的な買い物や大きな契約が増えているとき、どう対応すればよいですか?

無理に止めようとすると衝突になることがあります。まずは「大きな決断は少し待って」と穏やかに伝え、家計や生活に実害が出ている場合は早めに医療機関や必要に応じて法律・生活相談の専門家に相談してください。

「死にたい」という言葉が出たとき、または自傷行為があるとき、どうすればよいですか?

本人を一人にしないようにし、危険が差し迫っている場合は119番または110番に相談してください。かかりつけ医がいる場合はすぐに電話し、公的相談窓口の利用も検討してください。「どうせ大丈夫だろう」と判断せず、まず相談することが大切です。

まとめ

「家族の様子が気になるが、どうすればよいかわからない」。そうした気持ちを抱えている方に、この記事が少しでも役立てば幸いです。

家族にできることは、変化を観察し記録すること、責めずに気になっていることを伝えること、そして適切な相談先につなぐことです。治療を決めるのは本人ですが、家族が状況を整理しておくことで、本人が受診できるタイミングで話が進みやすくなることがあります。

当院では家族だけでの相談は受け付けていません。家族だけで相談したい場合は、公共の相談窓口をご利用ください。本人が受診できる場合は、ご本人の同意のもとで同席していただけます。

関連する固定ページ

WEB予約