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リーマス(炭酸リチウム)は、躁うつ病(双極性障害)の躁状態の治療に使われる気分安定薬です。古くから使われてきた双極性障害治療の基本となる薬で、気分の大きな波をしずめ、安定させる働きがあります。

一方で、効果が期待できる血中濃度と、副作用が出やすくなる濃度が比較的近いという特徴があり、定期的な血液検査で濃度を確認しながら使うことがとても大切な薬でもあります。

このページでは、リーマスの効果、飲み方、血液検査が必要な理由、リチウム中毒のサイン、生活上の注意点までをまとめました。服用中の方も、これから服用する方も、気になるところから読んでいただければと思います。

どんな薬か

リーマスは、炭酸リチウムを成分とする気分安定薬です。リチウムは自然界にも存在する元素で、その炭酸塩が薬として使われています。添付文書上の効能・効果は「躁病および躁うつ病の躁状態」で、気分が異常に高ぶる、眠らなくても平気になる、活動的になりすぎるといった躁状態を改善するために処方されます。

また、症状が落ち着いたあとも、維持量に減らして服用を続けることが多い薬です。双極性障害のうつ状態や再発予防を目的として、医師の判断で用いられることもあります。

リーマスを安全に使ううえで欠かせないのが、血中濃度の測定です。定期的に採血をして、濃度が「ちょうどよい範囲」に収まっているかを確認しながら治療を進めます。

効果と作用の仕組み

リチウムがどのように気分を安定させるのか、その仕組みは完全には解明されていません。脳の神経細胞の情報伝達を調整し、気分の波をなだらかにする方向に働くと考えられています。

抗うつ薬のように落ち込みを持ち上げる、睡眠薬のように眠気を促すといった分かりやすい作用ではなく、気分の「振れ幅」そのものを小さくしていくイメージの薬です。躁状態の高ぶりをしずめるとともに、長く続けることで気分の波のぶり返しを防ぐことを目指して使われます。

服用の仕方

添付文書上の標準的な用法・用量は、成人では1日400〜600mgから開始し、1日2〜3回に分けて服用します。その後、3日から1週間ごとに様子をみながら増やしていき、治療量は1日1200mgまでとされています。症状が改善したら、維持量として1日200〜800mgを1〜3回に分けて服用する形に減らしていきます。

ただし、これはあくまで添付文書上の標準です。実際の量は、血中濃度の測定結果、年齢、腎臓の働き、体調などをみながら、医師が一人ひとりに合わせて調整します。同じ量を飲んでいても血中濃度には個人差があるため、量の数字だけで判断せず、検査結果とあわせて主治医と確認していくことが大切です。

効果が出るまでの期間

リーマスは、飲んだその日から気分が変わるタイプの薬ではありません。少しずつ量を増やし、血中濃度が適切な範囲に達してから、徐々に効果が現れてきます。

飲み始めの時期や増量した時期には、1週間に1回をめどに血中濃度を測定することが添付文書でも求められています。検査で濃度を確かめながら、週単位で効果をみていくのが一般的な進め方です。すぐに変化を感じられなくても、自己判断で量を変えたりやめたりせず、診察のときに感じていることをそのまま教えてください。

主な副作用と対処

添付文書で頻度0.5〜5%未満とされている副作用には、手のふるえ(振戦)、口の渇き、吐き気・嘔吐、下痢、食欲不振、胃の不快感、めまい、ねむけ、尿の量が増える(多尿)、脱力感・倦怠感などがあります。

飲み始めや増量した時期に出やすく、体が慣れるにつれて軽くなっていくことも少なくありません。ただ、我慢して飲み続ける必要はありません。量の調整や飲み方の工夫で楽になることがありますので、つらい症状があるときは遠慮なく主治医に相談してください。

注意していただきたいのは、「いつもの副作用が、いつもより強い」ときです。吐き気や下痢、手のふるえが急に強くなった場合は、次に述べるリチウム中毒の初期サインである可能性があります。

まれだが注意したい副作用

最も大切なのがリチウム中毒です。血中濃度が上がりすぎると、初期症状として、吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状、手のふるえの悪化、ふらつき、ろれつが回らない、もうろうとする、強いだるさなどが現れます。さらに進行すると、急性腎障害や全身のけいれんなどに至るおそれがあります。

リチウム中毒は、発熱・下痢・大量の汗・食事や水分が十分とれないなど、体の水分が失われる状況で起こりやすくなります。体調を崩しているうえに普段と違う症状が出てきたときは、服用を続ける前に早めに主治医に連絡してください。意識がもうろうとする、けいれんが起きたなど差し迫った状況では、ためらわず救急(119)に連絡してください。

このほか頻度は不明ですが、重大な副作用として、悪性症候群、脈が非常に遅くなる不整脈(洞不全症候群・高度徐脈)、尿が大量に出る腎性尿崩症、急性腎障害、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、認知症のような症状、薬剤性過敏症症候群などが添付文書に記載されています。こうした変化を早く見つけるため、リチウム濃度だけでなく、腎機能・甲状腺機能・血清カルシウムの定期的な検査を行いながら治療します。

減らすとき・やめるとき

リーマスは、いわゆる依存性のある薬としては位置づけられていません。ただし、自己判断で急にやめることはおすすめできません。躁状態やうつ状態の症状がぶり返すことがあるためです。

減らす・やめるタイミングは、気分が安定している期間の長さ、これまでの再発の経過、生活の状況などをふまえて判断します。やめたい気持ちがあるときは、その気持ちも含めて主治医に伝えてください。減らす場合も、血中濃度と体調を確認しながら段階的に進めていきます。

生活上の注意(運転・アルコール・妊娠授乳ほか)

自動車の運転: 添付文書では、めまいやねむけ等があらわれることがあるため、自動車の運転など危険を伴う機械の操作には従事しないよう注意することとされています。運転が生活に欠かせない方は、診察時にご相談ください。

水分・塩分: 脱水はリチウム中毒の大きな要因です。発熱や下痢のとき、夏の暑い時期、運動で汗を多くかくときは、意識して水分をとってください。また、極端な塩分制限は血中のリチウム濃度を上げることがあり、食塩制限のある方への投与は禁忌とされています。減塩の食事指導を受けている方は必ず主治医に伝えてください。

飲み合わせ: 一部の痛み止め(ロキソプロフェンなどのNSAIDs)、利尿薬、一部の血圧の薬(ACE阻害薬・ARB)などは、リチウムの血中濃度を上げることがあります。市販の痛み止めを買うときは薬剤師に、他の医療機関にかかるときは医師に、リーマスを服用中であることを必ず伝えてください。

アルコール: 添付文書に飲酒についての具体的な記載はありませんが、深酒は脱水や飲み忘れにつながりやすいものです。飲酒の習慣がある方は、量も含めて診察時にお知らせください。

妊娠・授乳: 添付文書では、妊婦または妊娠している可能性のある方には投与しないこととされています。ヒトで心臓の奇形の頻度が増えたという報告があるためです。また、服用中は授乳を避けることとされています。妊娠を考えている方、妊娠の可能性がある方は、自己判断で中止するのではなく、できるだけ早く主治医に相談してください。妊娠を考える段階からご相談いただければ、薬の変更を含めた治療計画を一緒に立てることができます。

当院で処方するとき

当院では、躁うつ病(双極性障害)の治療でリーマスを処方する場合、開始前に腎臓や甲状腺の状態を確認し、開始後は血中濃度を測定しながら量を調整していきます。添付文書では、飲み始めや増量時は1週間に1回をめどに、維持量になってからは2〜3ヵ月に1回をめどに血中濃度を測定することとされており、当院でもこれに沿って定期的な採血を行います。

検査の数字だけでなく、睡眠時間や気分の波といった生活の様子も、薬を調整する大切な手がかりになります。診察では、最近の生活の変化も含めて教えてください。リーマスは、きちんと検査をしながら使えば、双極性障害の治療を長く支えてくれる薬です。不安な点をそのままにせず、診察のたびに遠慮なくご相談ください。

参考文献

  • リーマス錠100・リーマス錠200 添付文書 2025年7月改訂(第5版)(KEGG MEDICUS、参照日: 2026-07-07)

よくある質問

血液検査はいつまで続ける必要がありますか?

リーマスを服用している間は、継続的な血液検査が必要です。添付文書では、飲み始めや増量した時期は1週間に1回をめどに、維持量で安定してからは2〜3ヵ月に1回をめどに血中濃度を測定することとされています。効果と安全の両方を確認するための検査ですので、症状が落ち着いていても続けることが大切です。

風邪で熱が出たり、下痢をしたときはどうすればよいですか?

発熱・下痢・大量の汗などで体の水分が失われると、血中のリチウム濃度が上がり、中毒症状が出やすくなります。水分をしっかりとり、食事や水分が十分とれない状態が続くときや、吐き気・強いふらつき・手のふるえの悪化など普段と違う症状が出たときは、早めに主治医に連絡してください。

市販の痛み止めを飲んでもよいですか?

ロキソプロフェンなどのNSAIDsと呼ばれるタイプの痛み止めは、リチウムの血中濃度を上げることがあり、飲み合わせに注意が必要とされています。市販薬を購入するときは薬剤師にリーマスを服用中であることを伝え、繰り返し使いたい場合は主治医に相談してください。

妊娠を考えていますが、リーマスは続けられますか?

添付文書では、妊婦または妊娠している可能性のある方には投与しないこととされています。ただし、自己判断で急にやめると症状がぶり返すおそれがあります。妊娠を考えている段階で早めに主治医に相談していただければ、薬の変更を含めた治療計画を一緒に検討できます。

飲み忘れたときはどうすればよいですか?

気づいたときに2回分をまとめて飲むことは避けてください。血中濃度が急に上がるおそれがあります。基本的には次の服用時間から通常どおり再開し、飲み忘れが続くときや判断に迷うときは、主治医または薬剤師に確認してください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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