福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

エビリファイ(一般名: アリピプラゾール)は、抗精神病薬に分類されるお薬です。ドパミンという神経伝達物質の働きを「強すぎるときは抑え、足りないときは補う」ように調整する、パーシャルアゴニストという特徴を持っています。

日本では、統合失調症双極性障害の躁症状、そして既存の治療で十分な効果が得られないうつ病・うつ状態(抗うつ薬への追加)、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性に使われています。このページでは、主に大人の統合失調症・双極性障害・うつ病での使われ方を中心に解説します。なお、ここでの説明は一般的な情報であり、実際の飲み方は診察のうえで主治医が個別に判断します。

どんな薬か

エビリファイは、脳内のドパミンの働きが過剰なところでは抑え、不足しているところでは補うように調整することで、幻覚・妄想や気分の波を和らげることが期待されるお薬です。

錠剤には1mg・3mg・6mg・12mgなどの規格があり、散剤もあります。「抗精神病薬」という名前から強い薬を想像される方もいますが、うつ病で抗うつ薬に追加するときは1日3mgといったごく少量から使うことが多く、使う量や目的は一人ひとり異なります。

効果と作用の仕組み

ドパミンは、意欲や快の感覚、現実感などに関わる神経伝達物質です。統合失調症では一部の経路でドパミンが過剰に働いていると考えられ、多くの抗精神病薬はこの働きを抑えます。

エビリファイは、ドパミンを一律に抑えるのではなく、過剰なところは抑え、不足しているところは補うように調整します。この特徴から、感情の平板化や意欲低下といった症状が比較的起こりにくいとされます。うつ病では、抗うつ薬の効果を後押しする目的で少量を追加します。効果の現れ方には個人差があります。

服用の仕方

添付文書上の標準的な用量は、適応によって異なります。統合失調症では1日6〜12mgで開始し維持量は1日6〜24mg(1日最大30mg)、双極性障害の躁症状では開始24mg・維持12〜24mg(1日最大30mg)、うつ病・うつ状態では1日3mgから始め最大15mgまで、とされています。いずれもあくまで添付文書上の標準で、実際の量は症状や体質を見ながら医師が調整します。

エビリファイは効果が安定するまでに約2週間かかるとされ、2週間以内に増量しないことが望ましいとされています。うつ病に使う場合は、SSRIやSNRIなどの抗うつ薬と併用することが前提です。ほかに治療中の病気やお薬がある方は、必ず診察時にお伝えください。

効果が出るまでの期間

エビリファイは、飲んですぐに効果を実感できる薬ではありません。血中濃度が安定するまでに約2週間ほどかかるとされ、効果もその前後から徐々に現れることが多いお薬です。

焦って量を増やしたくなることもあるかもしれませんが、増量は決められた間隔をあけて慎重に行います。効き方や副作用について気になることは、診察でこまめにお伝えください。

主な副作用と対処

比較的みられる副作用として、不眠、神経過敏、不安、傾眠(眠気)、体重増加、アカシジア(静座不能)、振戦(ふるえ)、流涎(よだれ)などが報告されています。

なかでもアカシジアは、「じっとしていられない」「足がむずむずして動きたくなる」といった形であらわれ、本人もつらく感じやすい副作用です。がまんせず早めにご相談ください。量の調整や対応で和らぐことが多くあります。吐き気やめまい、頭痛などもみられることがありますが、飲み始めの時期に多く、体が慣れると軽くなることもあります。

まれだが注意したい副作用

頻度はまれですが、重大な副作用として、悪性症候群(0.1%)、遅発性ジスキネジア(0.1%)、痙攣(0.4%)、横紋筋融解症(0.1%)、麻痺性イレウス(0.1%)などが知られています。高熱・体のこわばり・意識のもうろう、手足や口の勝手な動き、強い筋肉痛や赤褐色の尿などがあらわれたら、すぐに受診してください。差し迫った状態のときは、ためらわず救急(119)に連絡してください。

また、まれに高血糖や糖尿病の悪化が起こることがあります。口の渇き・多飲・多尿・頻尿・強い脱力感などの症状に気づいたら、早めにご相談ください。前述の衝動制御障害(病的賭博・買い物・過食など)も、気づいたら主治医にお伝えください。

減らすとき・やめるとき

エビリファイに、いわゆる依存性のある薬という位置づけはありません。ただし、自己判断で急に中止すると、症状がぶり返したり不安定になったりすることがあります。

調子が良くなったと感じても、減らす時期やペースは主治医と一緒に決めていくことが大切です。特に統合失調症や双極性障害では、症状が落ち着いたあとも再発予防のために服用を続けることが多く、勝手な中断は再発のきっかけになりやすいとされています。まずは診察でご相談ください。

生活上の注意

  • 車の運転など: 眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるため、添付文書では自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないよう注意することとされています。運転の必要がある方は、必ず主治医にご相談ください。
  • 血糖・体重: 定期的に体重や血糖の変化を確認しながら使います。食事や運動などの生活習慣についても、できる範囲で一緒に考えていきます。
  • 妊娠・授乳: 妊娠中の方・妊娠の可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用するとされています。妊娠後期に抗精神病薬を使用した場合、新生児に一時的な症状が報告されています。授乳中は乳汁への移行が認められているため、方針を相談して決めます。妊娠を考えている方・妊娠が分かった方は、自己判断で中止せず必ずご相談ください。
  • 飲み合わせ: ほかのお薬やサプリメントとの飲み合わせで用量調整が必要になることがあります。受診の際はお薬手帳をお持ちください。

当院で処方するとき

当院では、診断と症状の状態、体質、生活の状況をうかがったうえで、エビリファイが適しているかを判断します。うつ病で使う場合は、まず抗うつ薬による治療を行い、効果が十分でないときに少量の追加を検討します。

開始後しばらくは、効果とともにアカシジアなどの副作用や体重・血糖の変化を確認するため、比較的こまめに診察を行います。薬は治療の柱の一つですが、それだけがすべてではありません。休養や生活の調整と組み合わせながら、回復を一緒に目指していきます。薬への不安や疑問は、どんな小さなことでも診察でお聞かせください。

参考文献

  • エビリファイ錠/散 添付文書(2025年12月改訂・第6版、大塚製薬) — KEGG MEDICUS掲載の電子添文を参照(参照日: 2026-07-07)

よくある質問

「抗精神病薬」と聞くと不安ですが、うつ病でも使うのですか?

エビリファイは統合失調症や双極性障害だけでなく、うつ病・うつ状態で抗うつ薬だけでは効果が十分でないときに、抗うつ薬に少量を追加する形でも使われます。この場合はごく少量(1日3mgなど)から始めることが多く、「症状が重い」という意味ではありません。名前の印象で不安になる方は多いので、気になることは遠慮なく診察でお尋ねください。

そわそわして落ち着かない感じがします。副作用でしょうか?

じっとしていられない、足がむずむずして動きたくなるといった症状は、アカシジア(静座不能)と呼ばれる副作用の可能性があります。エビリファイで比較的みられる副作用の一つです。がまんせず主治医にお伝えください。量の調整や対応で和らぐことが多く、自己判断で中止する必要はありません。

体重や血糖に影響はありますか?

抗精神病薬のなかでエビリファイは体重増加が比較的少ないとされますが、体重増加が報告されている副作用の一つであることに変わりはありません。また、まれに高血糖や糖尿病の悪化が起こることがあり、口の渇き・多飲・多尿・頻尿などの症状に注意が必要です。こうした症状に気づいたら早めにご相談ください。

ギャンブルや買い物がやめられなくなると聞きました。本当ですか?

頻度は高くありませんが、エビリファイを含む一部のお薬では、病的な賭博・買い物・過食・性欲亢進といった衝動を抑えにくくなる例が報告されています。もしこれまでと違う衝動的な行動に気づいたら、ご本人・ご家族から主治医にお伝えください。量の調整などで対応できます。

やめるときはどうすればよいですか?

エビリファイに依存性がある薬という位置づけはありませんが、自己判断で急にやめると症状がぶり返すことがあります。減らす時期やペースは、症状が安定していることを確認しながら主治医と相談して決めます。調子が良いと感じても、まずは診察でご相談ください。

関連ページ

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約