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デパケン(一般名: バルプロ酸ナトリウム)は、双極性障害の躁状態などに使われる気分安定薬です。もともとはてんかんの治療薬で、片頭痛の予防にも使われます。

気分の高ぶりを落ち着ける働きがある一方、妊娠に関して特に重要な注意があるお薬です。このページでは、その効果や注意点をわかりやすく解説します。なお、ここでの説明は一般的な情報であり、実際の飲み方は診察のうえで主治医が個別に判断します。

どんな薬か

デパケンは、脳の神経の過剰な興奮をしずめるように働くお薬です。精神科では、双極性障害の躁状態(気分が高ぶりすぎる時期)を落ち着け、気分の波を安定させる目的で使われます。

錠剤(普通錠)のほか、1日1回で済む徐放錠(デパケンR・セレニカR)もあります。このページは主に普通錠について説明します。最も重要な注意点は、妊娠に関するもので、妊娠を考えている方は必ず事前の相談が必要です(後述)。

効果と作用の仕組み

デパケンは、脳内で神経の興奮をしずめる方向に働く物質(GABA)などに関わり、神経の過剰な活動をおさえると考えられています。この働きが、気分の高ぶりをしずめ、波を安定させることにつながるとされています。

効果の現れ方には個人差があります。血液中の濃度が効果や副作用に関わるため、必要に応じて血液検査で確認しながら量を調整することがあります。

服用の仕方

添付文書上の標準的な用量は、双極性障害の躁状態などでは、1日400〜1,200mgを1日2〜3回に分けて飲む、とされています。いずれもあくまで添付文書上の標準で、実際の量は症状や体質、血液中の濃度を見ながら医師が調整します。

食後に飲むと吸収がゆるやかになることがあります。飲み方は指示に従ってください。重い肝臓の障害がある方や、一部の抗生物質(カルバペネム系)を使っている方などは使えません。ほかに治療中の病気やお薬がある方は、必ず診察時にお伝えください。

効果が出るまでの期間

デパケンは、躁状態に対して比較的早く働きかけることが期待される一方、合う量に調整するまでには、血液検査なども行いながら少し時間がかかることがあります。

すぐに変化を感じないときも、自己判断で量を変えたり中止したりせず、診察で経過をお伝えください。効果と副作用のバランス、血液中の濃度を見ながら調整していきます。

主な副作用と対処

比較的みられる副作用として、傾眠(眠気)が報告されています。そのほか、ふらつき(失調)、頭痛、不眠、吐き気・嘔吐、食欲不振、胃の不快感、便秘、発疹、だるさなども報告されています。

眠気は飲み始めに感じやすく、続けるうちに和らぐこともあります。吐き気や胃の不快感がつらいときは、飲み方の工夫や量の調整で楽になることもあります。体重増加や脱毛などがみられることもあります。気になる症状は無理に我慢せず、主治医にご相談ください。

まれだが注意したい副作用

頻度はまれですが、重大な副作用として、重い肝障害(劇症肝炎など)、血液中のアンモニアが上がることによる意識障害、重い血液の異常、急性膵炎、重い皮膚障害(TEN・スティーブンス・ジョンソン症候群)などが知られています。

強いだるさ、皮膚や白目が黄色くなる、食欲不振や吐き気が続く、ぼんやりして意識がはっきりしない、激しい腹痛、広い範囲の発疹などがあらわれたら、すぐに受診してください。差し迫った状態のときは、ためらわず救急(119)に連絡してください。これらを早めに見つけるため、定期的に血液検査を行います。

減らすとき・やめるとき

デパケンを自己判断で急にやめると、症状が不安定になることがあります。てんかんの方では、急な中止で発作が起こりやすくなるため、特に注意が必要です。

やめるときは、主治医と相談しながら徐々に減らします。調子が良くなったと感じても、減らす時期やペースは診察で一緒に決めていきましょう。

生活上の注意

  • 妊娠(特に重要): デパケンは、妊娠中に使用すると赤ちゃんに影響(二分脊椎などの奇形、発達への影響、自閉症のリスク上昇の報告)が生じるリスクが他の薬より高いことが知られています。妊娠を希望する方・妊娠の可能性がある方は、必ず事前に主治医にご相談ください。使用の可否や他の薬への変更を慎重に検討します。自己判断での中止はしないでください。
  • 車の運転など: 眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるため、添付文書では危険を伴う機械の操作の適否を医師が慎重に判断することとされ、眠気があらわれた場合は運転などをしないよう指導されます。運転の必要がある方はご相談ください。
  • 授乳: 母乳中へ移行することがあります。治療の有益性と母乳栄養の有益性を考えて方針を決めますので、ご相談ください。
  • 血液検査: 肝機能やアンモニア値などを定期的に確認します。
  • 飲み合わせ: 一部の抗生物質(カルバペネム系)とは併用できません。ほかのお薬との組み合わせにも注意が必要です。受診の際はお薬手帳をお持ちください。

当院で処方するとき

当院では、双極性障害の診断と気分の波の状態、これまでの病気をうかがったうえで、デパケンが適しているかを判断します。特に妊娠の可能性がある方には、事前に妊娠に関する注意を丁寧に説明し、必要に応じて他の選択肢も検討します。安全に使うため、定期的な血液検査を行います。

薬は治療の柱の一つですが、それだけがすべてではありません。生活リズムの調整や気分の波への対処と組み合わせながら、安定した毎日を一緒に目指していきます。薬への不安や疑問は、どんな小さなことでも診察でお聞かせください。

参考文献

  • デパケン錠100mg/200mg 添付文書(2026年3月改訂・第7版) — KEGG MEDICUS掲載の電子添文を参照(参照日: 2026-07-07)

よくある質問

妊娠を考えているのですが、デパケンを飲んでいて大丈夫ですか?

デパケン(バルプロ酸)は、妊娠中に使用すると赤ちゃんに影響(二分脊椎などの奇形、発達への影響)が生じるリスクが他の薬より高いことが知られています。そのため、妊娠を希望する方・妊娠の可能性がある方では、使用の可否や他の薬への変更を慎重に検討します。自己判断で中止せず、妊娠を考え始めた段階で必ず主治医にご相談ください。

どんな気分の症状に使うのですか?

デパケンは、双極性障害(躁うつ病)の躁状態、つまり気分が高ぶりすぎる時期を落ち着ける目的で使われます。もともとはてんかんの治療薬で、片頭痛の予防にも使われます。気分の波を安定させる気分安定薬の一つです。

血液検査をするのはなぜですか?

デパケンでは、まれに肝臓の障害や、血液中のアンモニアが上がることによる意識の変化などが起こることがあります。これらを早めに見つけるため、定期的に血液検査を行い、肝機能やアンモニア値などを確認します。検査は安全に使い続けるための大切な確認です。

太ったり眠くなったりしますか?

デパケンでは、眠気や体重増加が報告されています。眠気は飲み始めに感じやすく、続けるうちに和らぐこともあります。体重の変化が気になるときは主治医にご相談ください。食事や生活の工夫も一緒に考えていきます。

やめるときはどうすればよいですか?

自己判断で急にやめると、症状が不安定になることがあります(てんかんの方では発作が起こりやすくなります)。やめるときは、主治医と相談しながら徐々に減らしていきます。調子が良いと感じても、まずは診察でご相談ください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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