福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
休診日: 水曜・木曜・日曜・祝日

セディール(一般名: タンドスピロン)は、「セロトニン作動性抗不安薬」と呼ばれるタイプの抗不安薬です。デパスやソラナックスなどのベンゾジアゼピン系抗不安薬とは作用の仕組みが異なり、依存性が問題になりにくいことが大きな特長です。

一方で、効果の現れ方は緩やかで、飲んですぐ不安が和らぐタイプの薬ではありません。毎日続けて飲みながら、じわじわと不安の底上げをしていくイメージの薬です。このページでは、セディールの効果と副作用、効くまでの期間、やめ方までをまとめました。

どんな薬か

セディールは1996年から使われている国産の抗不安薬で、添付文書上の効能・効果は、神経症における抑うつ・恐怖と、心身症(自律神経失調症、本態性高血圧症、消化性潰瘍)における身体症候ならびに抑うつ・不安・焦躁・睡眠障害です。

不安や緊張が続く方、ストレスで動悸や胃の不調などの身体症状が出やすい方に処方されることの多い薬です。ベンゾジアゼピン系と違って眠気やふらつき、依存の心配が比較的少ないため、長く飲み続ける必要がある場面や、依存が心配で抗不安薬をためらっている方の選択肢になります。

効果と作用の仕組み

セディールは、脳内のセロトニン1A受容体という部分に働きかけて、不安や緊張を和らげると考えられています。ベンゾジアゼピン系抗不安薬がGABAという神経の仕組みを介して速く強く効くのに対し、セディールはセロトニンの神経系を介してゆっくり効いていきます。

この仕組みの違いのため、ベンゾジアゼピン系にみられるような依存や、急にやめたときの強い反動が問題になりにくいとされています。国内の臨床試験でも、薬物依存性を示す訴えはジアゼパム(ベンゾジアゼピン系)に比べ有意に少なかったと報告されています。

そのぶん切れ味は穏やかで、頓服的に「不安なときだけ飲む」使い方には向きません。全般性不安障害のように不安が持続するタイプの状態で、毎日飲み続けて土台を整える薬とお考えください。なお、罹病期間が長い方や重症の方、ベンゾジアゼピン系で効果が不十分だった方では、効果が現れにくいことが添付文書にも記載されています。

服用の仕方

添付文書上の標準的な用法は、成人で1日30mgを3回に分けて服用し、年齢・症状により適宜増減して1日60mgまで、とされています。高齢の方では1日15mgなどの低用量から開始することがあります。実際の量や飲み方は、症状や体質に合わせて医師が調整しますので、必ず処方どおりに服用してください。

食事の影響はほとんどないとされているため、食後・空腹時のどちらでも大きな差はありません。飲み忘れたときの対応は自己判断で2回分をまとめて飲まず、主治医や薬剤師に確認してください。

効果が出るまでの期間

セディールは即効性のある薬ではありません。飲み始めてすぐには変化を感じにくく、毎日続けるうちに徐々に不安や緊張が和らいでくるのが典型的な経過です。効果の実感には1〜2週間以上かかることが多く、じっくり続けることが大切です。

「効かない」と感じても、自己判断で中断せず、診察のときにそのままお伝えください。量の調整や、ほかの治療への切り替えを一緒に検討します。なお、十分な量まで増やしても効果がみられない場合には漫然と続けず中止することが添付文書で求められており、その判断も医師が行います。

主な副作用と対処

セディールは副作用が比較的少ない薬とされています。添付文書上、1%以上の頻度で報告されているのは眠気のみです。そのほか、0.1〜1%未満の頻度で、めまい・ふらつき・頭痛・不眠、悪心(吐き気)・食欲不振・口渇・便秘、倦怠感、動悸、肝機能値(AST・ALT・γ-GTP)の上昇などが報告されています。

眠気やふらつきは飲み始めに出やすい傾向があります。多くは体が慣れるにつれて軽くなっていきますが、生活に支障が出るほど強い場合は、量やタイミングの調整で改善できることがありますので、遠慮なくご相談ください。

まれだが注意したい副作用

頻度はまれですが、次のような症状には注意が必要です。

  • 肝機能障害・黄疸: だるさが続く、皮膚や白目が黄色くなる、といった変化があれば受診してください。
  • セロトニン症候群: 興奮、体の一部がぴくつく、発汗、ふるえ、発熱などが急に現れる状態です。特に、SSRIなどセロトニンに作用する抗うつ薬と併用しているときに注意が必要とされています。
  • 悪性症候群: 高熱、意識のもうろう、強い筋肉のこわばり、大量の発汗などが現れる状態で、抗精神病薬や抗うつ薬との併用時、また本剤の急激な減量・中止の際にも報告されています。

これらが疑われる症状が出たときは、服用を続けるかどうかを含め、すみやかに主治医に連絡してください。意識がもうろうとする、高熱が続くなど緊急性が高いと感じる場合は、救急(119)の利用をためらわないでください。

減らすとき・やめるとき

セディール自体は、ベンゾジアゼピン系のような依存や強い離脱症状が問題になりにくい薬です。とはいえ、悪性症候群は急激な減量・中止でも報告されているため、やめるときも自己判断で急に中断せず、主治医と相談しながら進めるのが原則です。

また、ベンゾジアゼピン系の薬からセディールに切り替える場合には注意が必要です。両者には交差依存性がないため、ベンゾジアゼピン系を急にやめてセディールに置き換えると、退薬症状(離脱症状)が出て症状が悪化することがあります。切り替えの際は、前の薬を徐々に減らしながら進めますので、必ず医師の指示に従ってください。

生活上の注意

  • 運転について: 添付文書では、眠気・めまい等が起こることがあるため、服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないよう注意することとされています。運転が生活に欠かせない方は、処方前に必ずご相談ください。
  • アルコール: 眠気やふらつきが強まるおそれがあるため、飲酒は控えめにし、習慣がある方は主治医にお伝えください。
  • 妊娠・授乳: 妊娠中または妊娠の可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。授乳中は、治療の有益性と母乳栄養の有益性をふまえて、授乳の継続・中止を検討します。
  • 併用薬: ハロペリドールなどの一部の抗精神病薬、カルシウム拮抗薬(血圧の薬)、SSRIなどセロトニンに作用する抗うつ薬とは、併用に注意が必要とされています。飲んでいる薬・サプリメントは必ずお伝えください。
  • 持病のある方: 呼吸器や心臓の病気、腎臓・肝臓の機能低下がある方では、慎重な調整が必要になることがあります。

当院で処方するとき

当院では、不安や緊張、ストレスによる身体症状に対して、依存のリスクをなるべく避けたい場合の選択肢のひとつとしてセディールを検討します。「抗不安薬は癖になりそうで怖い」という方にも、仕組みの違いを説明したうえでご提案することがあります。

即効性は乏しい薬なので、効果の実感まで続けられるよう、診察のたびに効き具合と副作用を確認しながら量を調整していきます。効果が不十分な場合には、抗うつ薬など別の治療への変更も含めて一緒に考えます。薬への不安や疑問は、どんな小さなことでも診察のときにお聞かせください。

参考文献

  • セディール錠5mg/10mg/20mg 添付文書(住友ファーマ、2026年3月改訂・第2版)。KEGG MEDICUS経由で参照(参照日: 2026-07-07)。

よくある質問

セディールはやめられなくなりませんか?

セディールはベンゾジアゼピン系の抗不安薬と作用の仕組みが異なり、依存性が問題になりにくい薬とされています。国内の臨床試験でも、薬物依存性を示す訴えはジアゼパム(ベンゾジアゼピン系)に比べ有意に少なかったと報告されています。ただし、やめるタイミングや減らし方は主治医と相談しながら決めていくのが安心です。

飲んですぐに効きますか?

即効性は期待しにくい薬です。ベンゾジアゼピン系のように「飲んで30分で楽になる」タイプではなく、毎日続けて飲むことで徐々に効果が現れてきます。効果の実感には1〜2週間以上かかることが多いため、すぐ効かないからと自己判断でやめず、続けながら経過を主治医に伝えてください。

服用中に車の運転はできますか?

添付文書では、眠気・めまい等が起こることがあるため、服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないよう注意することとされています。運転が必要な生活状況の方は、処方の際に必ず主治医にご相談ください。

妊娠中・授乳中でも飲めますか?

妊娠中または妊娠の可能性がある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。授乳中は、治療の有益性と母乳栄養の有益性をふまえて授乳の継続・中止を検討します。妊娠を考えている段階から、早めに主治医にご相談ください。

お酒と一緒に飲んでもよいですか?

おすすめできません。セディールには眠気やめまいの副作用があり、アルコールと重なるとふらつきなどが強まるおそれがあります。また、不安を紛らわすための飲酒はかえって症状を長引かせることがあります。飲酒の習慣がある方は、量やタイミングを主治医にご相談ください。

関連ページ

執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

WEB予約