福岡県春日市須玖北4丁目34 2階
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パニック発作が出なくなり、電車にも乗れるようになりました。以前は怖かった場所にも少しずつ行けています。

そんなとき「もう治ったのでは」「そろそろ薬も通院も終わりでいいのでは」と考え始める方は少なくありません。

ただ、発作が出なくなっても、混雑する時間帯の電車は避けているかもしれません。近所には出かけられても、遠出をするとなると不安が残ることもあります。

パニック障害の回復を考えるときは、発作がどのくらい減ったかと、怖くて避けていたことがどのくらいできるようになったかの両方に目を向けることが大切です。

発作が止まっても、まだ行けない場所がある

パニック障害は適切な治療によって症状が落ち着いていく病気です。発作がなくなることは大きな回復のサインですが、それだけで治療が終わるとは限りません。

発作が起きていなくても「また起きるかもしれない」という予期不安が残ることがあります。そのため、電車や人混み、遠くへの外出など、以前怖かった場面を避け続ける方もいます。

認知行動療法の書籍には、橋や高速道路の運転が怖くなり、川の向こうにある新しい職場への異動を前に、仕事を辞めることまで考えた人の事例が登場します。

この人にとっては発作の回数が減ったとしても、橋を渡って仕事に通えるようになるかという問題が残ります。

パニック障害の治療では薬物療法によって発作の頻度や程度を軽くするとともに、「不安が起きても自分で対処できる」という感覚を取り戻すことも目指します。これは自己効力感と呼ばれるものです。

発作がなくなることと、発作への恐怖に生活を制限されなくなることは、必ずしも同じタイミングで進みません。

「避けたら楽になった」が次の不安を残すことがあります

パニック障害では怖い場面を避けたときに、かえって不安が残りやすくなることがあります。

たとえば電車に乗ろうとして強い不安を感じ、乗るのをやめて帰ったとします。その瞬間は不安がすっと軽くなるかもしれません。

避けることで楽になった経験があると、次に同じ場面に出会ったときも、避けることを選びやすくなります。

その場の不安が減っても、次に同じ場面に向かうときの不安まで減ったとは限りません。

パニック障害で生じる強い不安は、しばらくすると自然に和らぐことがあります。しかし、不安を感じるたびにその場を避けていると、不安が和らぐまで過ごす経験を積みにくくなります。

そのため治療では、以前避けていた場面に少しずつ慣れていき、不安に対処できるという感覚を取り戻すことも大切にします。

もちろん、こうした練習には強い不安や苦痛が伴うこともあります。急に長距離の電車や高速道路に挑むのではなく、少しずつ慣れを作っていくことになります。

薬物療法には発作を減らすだけでなく、こうした場面に向き合う際の不安を軽くする役割もあります。

薬を減らす時期は発作のない日数だけでは決まりません

「発作が出なくなったので、そろそろ薬を減らしたい」

これは回復してきた方にとって自然な希望です。ただし、最近の調子がよいという理由だけで、すぐに減薬できるとは限りません。

一般的には次のような変化がそろってきたかを確認します。

  • パニック発作がしばらく、数か月以上出ていません。
  • 「また発作が起きるかもしれない」という予期不安が大きく減っています。
  • 以前避けていた電車や人混みなどにも出かけられるようになっています。
  • 睡眠などの生活リズムが安定してきています。

ここで大切なのは、症状が落ち着いていることに加え、その状態がある程度続いているかという点です。

発作がなくなった直後と、発作のない状態が数か月続いている場合とでは、減薬を考える際の判断も変わってきます。

また、パニック障害では一度症状が落ち着いても、次のようなきっかけで不安や発作が戻ることがあります。

  • 睡眠不足や疲労が続いたとき
  • 仕事や人間関係のストレスが重なったとき
  • 体調を崩したとき
  • 引っ越しや仕事の変化など、生活環境が大きく変わったとき
  • 薬を自己判断で中止したとき

症状が落ち着いた後も一定の期間、治療や通院を続けることは、再発のリスクを下げることにつながるとされています。

薬を減らす時期は一律には決まらないため、生活の状況や安定している期間を確認しながら、主治医と相談していきます。

薬を減らして不調が出たら再発でしょうか

薬を減らしてから、めまいや頭痛、不安などが出てきたとします。

「やっぱり病気が戻ってしまった」と感じるかもしれません。

ただし、減薬後の不調は必ずしもパニック障害の再発とは限りません。薬を減らしたことによる症状と、もともとの病気の症状を区別する必要があります。

SSRIでは中断症状が起こることがあります

パニック障害の治療に使われるSSRIなどの抗うつ薬を急に中止すると、中断症状と呼ばれる体調の変化が起こることがあります。

代表的な症状には次のようなものがあります。

  • めまい、ふらつき
  • 頭痛
  • 吐き気、不眠
  • 気分の落ち込み、焦燥感

中断症状は薬を完全にやめた場合だけでなく、量を減らしたときにも起こることがあります。

これは必ずしも薬への依存を意味するものではなく、薬の量が急に変わったことに体が慣れるまでの反応として説明されます。

減らし方によって症状の出やすさが変わることも知られています。

2013年の精神科薬物療法の書籍では、パロキセチンについて、急に中止した場合に中断症状が出た割合は33%、徐々に減らして中止した場合には5%以下だったという数字が紹介されています。

これはパロキセチンについての記載で、すべての薬にそのまま当てはまる数字ではありません。それでも、少しずつ段階的に薬を減らすことの意味が分かる例です。

抗不安薬では再発との見分けが難しいことがあります

ベンゾジアゼピン系の抗不安薬では、薬を減らしたり中止したりすると、離脱症状が出ることがあります。

不眠、不安、気分の不快感、ふるえ、発汗、頭痛、吐き気などが代表的です。

ここで難しいのは、不安や不眠が、もともと薬で治療していた症状とも重なることです。

薬を減らしたあとに不安が強くなっても、離脱症状なのか、病気が再び悪くなったのかを簡単には見分けられない場合があります。

また、作用時間の短い薬では、服用を続けていても薬の血中濃度の変化に伴って日中に不安が出ることがあります。

同じ「不安が強くなった」という状態でも、薬の種類や服用の経過によって考えるべきことが違ってきます。

減薬は自己判断で一気に進めず、医師と予定を立てて少しずつ行うのが基本です。減薬後に不調が出た場合も、薬を減らした時期と症状の変化を伝えながら調整を考えます。

発作がない日の診察では何を話すのでしょうか

症状が落ち着いてからの通院は薬を受け取る時間だけでなく、生活の中での安定を確かめる時間でもあります。

たとえば睡眠不足や疲れが続いていないか、食事や運動のリズムが整っているかを確認します。仕事や人間関係のストレス、体調の変化、気分の落ち込みなどにも目を向けます。

以前は避けていた電車や人混みに少しずつ行けるようになっているかも、回復を考える手がかりです。

こうした変化を振り返ることで、再び不安が強くなりそうなときにも早めに気づき、対処を考えやすくなります。

薬の相談も「減らせるかどうか」だけではありません。

たとえば薬を飲み始めてから吐き気や便秘が気になる、食欲や体重が変わった、性機能について困っているといったことも、薬の調整を考える際の情報になります。

特に性機能の問題などは診察で言い出しにくいかもしれません。しかし、副作用が気になって薬をやめたくなっているのであれば、その理由も含めて相談することが大切です。

症状が安定してきた時期だからこそ、薬の効果だけでなく、飲み続けるうえで困っていることにも目を向けられます。

通院の間隔を延ばし、終診を考える

症状が安定してきたら、通院の頻度を少しずつ減らしていくこともできます。

たとえば2週間に一度だった通院が1か月に一度になり、その後2〜3か月に一度になっていく場合もあります。

通院間隔を延ばすことは治療をおろそかにすることではなく、回復の状況に合わせて通院のペースを変えていくことです。

もちろん、全員が同じ経過をたどるわけではありません。以前に再発した経験がある方や、まだ不安が残る場面がある方では、安定している期間や生活の状況を見ながら考えていきます。

春日メンタルクリニックでは2週間に一度の通院を基本としています。「薬を飲み続ける必要があるのか」「いつまで通院するのか」は外来でもよく聞かれる質問です。

初診のご予約はWEBから受け付けており、受診前にはWEB問診があります。

すでに治療を受けている方は、発作がいつごろから落ち着いたか、現在も避けている場面があるか、薬について気になることがあるかなどを整理しておくと、診察で話しやすくなります。メモはスマートフォンの画面のまま見せていただいても差し支えありません。

薬をいつ減らすか、いつ通院を終えるかは、今の症状とこれまでの経過を確かめながら相談していくことになります。

そして、回復を考えるときは通院が終わる日だけでなく、以前は怖くて避けていた場所に行けるようになったか、不安が出ても対処できると思えるようになったかも振り返ってみてください。

発作がなくなったことに加え、不安のために諦めていたことが少しずつできるようになっているかも、回復を考える大切な手がかりです。

参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません)

  • 『本当にわかる 精神科の薬 はじめの一歩』稲田健 編、羊土社、2013年。
  • 『認知行動療法トレーニングブック』Jesse H. Wrightほか(著者情報は記事用資料で推定)、医学書院、刊行年不明。

よくある質問

パニック発作が数か月出なければ薬をやめられますか?

数か月以上発作がないことは減薬を考える目安の一つですが、それだけで決まるわけではありません。予期不安が減っているか、以前避けていた場所に行けるようになったか、安定した生活が続いているかも確認します。

薬を減らしたあとに不安が戻ったら、元の量に戻した方がよいですか?

減薬後の不安には病気の再燃だけでなく、薬の離脱症状などが関係する場合もあります。自己判断で増減を繰り返さず、薬を減らした時期と症状の変化を主治医に伝えてください。

電車に乗る練習は、不安が完全になくなってから始めるものですか?

不安が残っていても、少しずつ苦手な場面に慣れていくことが治療の目標になる場合があります。ただし、こうした練習には強い不安や苦痛が伴うこともあるため、どのように進めるかを主治医と相談することが大切です。

薬の副作用が気になる場合も、減薬を相談してよいですか?

吐き気や便秘、体重の変化、性機能に関する困りごとも、薬の調整を考えるうえで大切な情報です。薬を減らしたい理由が副作用にある場合は、そのことも主治医に伝えてください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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