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はじめに

職場で毎年行われるストレスチェック。何気なく回答したら「高ストレス」の判定が届いて、驚いた——そんな経験をされた方は少なくありません。「自分はメンタルが弱いということ?」「会社に知られたら不利になる?」「病院に行かないといけないの?」と、結果の紙を前に戸惑ってしまう方もいらっしゃいます。

まずお伝えしたいのは、高ストレス判定は「あなたが弱い」という意味ではない、ということです。厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」でも、メンタルヘルス不調はストレスの多い状況では誰にでも起こりうるもので、こころの強い・弱いは関係ないと説明されています。

この記事では、ストレスチェックの結果をどう受けとめればよいか、ストレスの仕組みとセルフケアの工夫、そして産業医面談や医療機関への相談を考える目安を、「こころの耳」の資料をもとにお伝えします。なお、診断や治療方針の判断は医師が行います。ここでご紹介するのは、相談前に知っておくと役立つ「目安」とお考えください。

高ストレス判定は「診断」ではなく「気づきのきっかけ」

ストレスチェックの判定は、うつ病などの診断を下すものではありません。「いま、ストレス反応が強めに出ている可能性がある」というサインであり、いわば健康診断でいう「要注意」の知らせに近いものです。

ストレスには、大きく3つの要素が含まれると説明されています。

  • ストレス要因(ストレッサー):仕事、職業生活、家庭、地域などに存在する、ストレスを生じさせる外からの刺激
  • ストレス反応:ストレス要因に対して、身体面・心理面・行動面に表れるさまざまな反応
  • ストレス耐性:押されたボールが元の形に戻ろうとするような、回復しようとする力

ここで大切なのは、ストレス反応が出ていても、その要因が何かには自分では気づきにくい、とされている点です。高ストレス判定は、その気づきにくい状態を数字として見えるようにしてくれた、と受けとめることができます。また、ストレス反応の出方は、仕事以外の要因や個人の要因、そして上司・同僚からのサポートといった「緩衝要因」にも影響されると考えられています。同じ職場でも人によって反応が違うのは自然なことなのです。

「いつもと違う自分」のサインを振り返る

判定が届いたら、この1か月ほどを振り返ってみましょう。「こころの耳」の資料では、ストレスを感じているときのサインとして、次のような例が挙げられています。

  • ひどく疲れた、へとへとだ、だるい
  • 気がはりつめている、落ち着かない、不安だ
  • ゆううつだ、気分が晴れない、何をするのも面倒だ

こうした状態に心当たりが多いほど、心と体が休息や対処を必要としているサインかもしれません。逆に、判定が「高ストレス」でなくても、いつもと違う状態が続いているなら、それも大切な気づきです。

結果を放置しないほうがよい理由

「忙しいから」「たいしたことないから」と結果を引き出しにしまってしまう方は多いのですが、ストレス要因によるストレス反応が続くと、健康障害につながりうるとされています。頭痛や胃の不調で内科を受診しても原因がわからない——そんなとき、背景にメンタルヘルス不調が隠れていることもあります。

また、「精神的に弱いから不調になる」「怠けている」「甘えている」といった見方は誤解だと、国の資料でもはっきり述べられています。予防のポイントとして挙げられているのは、次の3つです。

  1. ストレスへの気づきをよくすること——自分のストレス状態を客観的に見ることを習慣にする
  2. メンタルヘルスへの理解をすすめること——小冊子や記事などで知識を高める
  3. 相談すること——話を聞いてくれる人を持つ

ストレスチェックの結果を「自分の状態を客観的に見る機会」として使うこと自体が、予防の第一歩といえます。

今日からできるセルフケアの工夫

「こころの耳」では、ストレスと上手につき合うための方法として、次のようなセルフケアが紹介されています。どれも特別な道具はいりません。

  • リラクセーション:心身の緊張をゆるめること。腹式呼吸は自宅や職場の自席でも短時間ででき、手軽な方法のひとつです
  • ストレッチ:長時間同じ姿勢でいるときや、仕事量・人間関係のストレスがかかる場面でも筋肉は緊張しています。ゆっくり伸ばすことで血行を促し、リラックスにつながります
  • 適度な運動:勝ち負けや技術にこだわらず、「楽しむ」気持ちで、手軽にできる好きな運動を
  • 快適な睡眠:起きたときに気持ちがよく、日中に眠くならない睡眠が目安です。必要な睡眠時間には個人差があります
  • 親しい人との交流:友人や知人と話すことで気持ちが整理され、解決の糸口が見えることもあります
  • 笑い・趣味:日常に笑いを取り入れること、仕事から離れた趣味の時間を持つことも役立つとされています

一方で、注意点もあります。ストレス解消のための喫煙はすすめられておらず、習慣的な飲酒もすすめられていません。運動や趣味も、翌日の生活に響くほどやり込むのは逆効果とされています。「頑張って解消する」のではなく、心地よい範囲で続けることがコツです。

産業医面談と医療機関、どう使い分ける?

高ストレス判定が出た場合、多くの職場では、希望すれば医師(産業医)による面接指導を受けられる案内があるはずです。事業場内の産業医・保健師などの専門家は、職場の状況をふまえて相談に乗ってくれる、まず頼りやすい相談先です。なお、ストレスチェックの個人結果は、本人の同意なく会社側に提供されない仕組みになっていますので、その点は過度に心配しなくて大丈夫です。

職場に相談できる専門家がいない場合や、体調の不調がはっきりしてきている場合には、精神科・心療内科などの専門医に相談する選択肢があります。「こころの耳」の資料でも、事業場内に専門家がいないときは専門医への相談が案内されています。

受診の目安

次のような状態があるときは、判定結果にかかわらず、医療機関への相談を検討することをおすすめします。

  • 眠れない、朝起きられないなど、睡眠の不調が続いている
  • ゆううつな気分や、何をするのも面倒な状態が数週間続いている
  • 頭痛や胃痛などの体調不良で仕事を休む日が増えているのに、検査では原因がわからない
  • セルフケアを試しても、疲れや緊張が抜けない状態が続いている
  • 飲酒の量や頻度が増えている

特に、消えてしまいたい・自分を傷つけたいといった気持ちが出てきているときは、期間を問わず、できるだけ早くご相談ください。すでに通院中の方は主治医に、緊急のときは救急(119)に連絡してください。診断は医師が行います。

まとめ

ストレスチェックの高ストレス判定は、診断でも「弱さの証明」でもなく、自分の状態に気づくためのきっかけです。メンタルヘルス不調は誰にでも起こりうるもので、こころの強い・弱いは関係ありません。

結果が届いたら、この1か月の「いつもと違う自分」を振り返り、呼吸法や睡眠、交流といったセルフケアを心地よい範囲で取り入れてみてください。そのうえで、不調のサインが続くときは、産業医面談や精神科・心療内科への相談を選択肢に入れていただければと思います。結果の紙をしまい込む前に、ご自身をいたわる一歩として活用していきましょう。


参考にした資料(要約・再構成であり、原文の転載ではありません):

  • 15分でわかるセルフケア(厚生労働省「こころの耳」)
  • 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

執筆・監修:精神保健指定医 野口晋宏

よくある質問

高ストレス判定が出たら、必ず病院に行かないといけませんか?

必ずしもそうではありません。高ストレス判定は診断ではなく、「ストレス反応が強めに出ているかもしれない」というサインです。ただし、眠れない・気分が沈む・体調不良が続くなど、生活に影響が出ている場合は、産業医面談や精神科・心療内科への相談を検討することをおすすめします。診断は医師が行います。

高ストレス判定の結果は、会社に知られてしまいますか?

ストレスチェックの個人結果は本人の同意なく会社に提供されない仕組みになっています。心配な場合は、実施者(産業医・保健師など)や案内文に記載された窓口に確認してみてください。結果の取り扱いに不安があるからと、ご自身の不調を放置しないことが大切です。

判定は普通だったのに、最近つらいです。受診してもよいのでしょうか?

はい、かまいません。ストレスチェックは回答した時点の状態を映すものであり、その後の変化までは反映されません。「ひどく疲れた」「気分が晴れない」「眠れない」など、いつもと違う状態が続いているなら、判定にかかわらず相談を検討してよいサインです。

受診するほどではない気がします。まず自分でできることはありますか?

腹式呼吸などのリラクセーション、ストレッチ、楽しめる範囲の運動、快適な睡眠、親しい人との交流などが、セルフケアとして紹介されています。一方で、喫煙や習慣的な飲酒によるストレス解消はすすめられていません。セルフケアを試しても不調が続くときは、専門家への相談をご検討ください。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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