はじめに
「無料のゲームだと思って遊ばせていたら、クレジットカードに数万円の請求が来ていた」「ガチャを引くのがやめられないらしく、お小遣いがすぐ底をつく」「いくら使ったのか本人にもわからなくなっている」――お子さんのゲーム課金やガチャをめぐるお金のトラブルに、戸惑っているご家庭は少なくありません。気づいたときには高額になっていることも多く、どう声をかければいいのか迷ってしまうものです。
まずお伝えしたいのは、こうした悩みはあなたのご家庭だけのものではない、ということです。今のゲームは、ついお金を使いたくなるように、とても巧みにつくられています。とくに「ガチャ」と呼ばれるしくみは、大人でも夢中になってしまう要素を持っています。お子さんの意志が弱いから、というだけの問題ではないのです。
この記事では、ガチャがなぜギャンブルに近いのか、どんなお子さんが課金を止めにくいのか、そしてゲームの中でお金は何に使われているのかを整理したうえで、上限設定やプリペイド型の活用、お小遣いを通じたお金の学びなど、ご家庭でできる予防策をご紹介します。なお、診断や治療方針は医師が行います。気になる点は主治医や当院にご相談ください。
ガチャは「ギャンブルに近いしくみ」になっています
ゲームに課金すると言っても、お子さんが何を買っているのかは、ゲームに詳しくないと分かりにくいものです。代表的なものの一つが「ガチャ」です。
ガチャとは、一定の金額(多くは一回数百円程度)を支払うと、くじ引きのように、ランダムにアイテムやキャラクターが手に入るしくみのことです。名前は、昔からあるカプセル入りおもちゃの「ガチャガチャ」に由来しています。問題は、お金を払っても「何が当たるかわからない」という点です。
この「何がもらえるか分からない」というしくみは、ギャンブルにとても近いものだと考えられています。ガチャでアイテムを引くときには、ドキドキするようなスリルがあります。このスリルこそが、もう一回、もう一回と引いてしまう衝動を抑えにくくしている大きな要因です。ほしいアイテムがなかなか出ないと、出るまで引き続けてしまい、結果として高額になってしまうのです。
買い切りのゲームや、月額が決まっている定額制(サブスクリプション)のサービスは、支払う金額の上限がはっきりしているため、比較的安心です。一方で、ゲームの中での課金には上限がないことが多く、使いすぎてしまいやすい――この違いを知っておくことが、対策の第一歩になります。
コンプガチャが規制された経緯
ガチャの中でも、とくに射幸性(しゃこうせい)が強いとして問題になったしくみがあります。射幸性とは、努力ではなく偶然によって利益を得られる要素や、その度合いのことです。
かつて日本では、「コンプリートガチャ(コンプガチャ)」と呼ばれるしくみが広まったことがありました。これは、ランダムに手に入る特定のアイテムを全種類そろえる(コンプリートする)と、希少なアイテムが手に入る、というものです。全部そろえたい一心で課金が止まらなくなりやすく、射幸性があまりに強いという理由から、後に禁止されました。
海外に比べると、日本はこうした課金への規制が比較的ゆるいとされ、高額課金につながりやすいしくみが批判の対象になることもあります。ご家庭で守る意識を持っておくことが、いっそう大切になります。
「集めるのが好きな子」は止めにくいことがあります
同じゲームでも、お子さんによって楽しみ方は違います。中でも、ゲームの世界をひとりでじっくり味わい、アイテムやキャラクターをコツコツ集めることに喜びを感じるタイプの子がいます。こうした「集めること・やり込むこと」を目標にする楽しみ方は、それ自体はとても豊かなものです。
ただ、このタイプのお子さんは、「すべてのアイテムをコレクションしたい」という気持ちが強いため、珍しいアイテムが手に入るまでガチャを止められなくなってしまう場合があります。コレクションを完成させたいという欲求と、ガチャの「当たるまで引きたくなる」しくみが組み合わさると、課金が膨らみやすいのです。
これは性格の良し悪しの問題ではありません。集める力ややり込む集中力は、お子さんの長所でもあります。だからこそ、本人を責めるのではなく、しくみの側から使いすぎを防ぐ工夫が役に立ちます。
ゲームの中で「お金」は何に使われているのか
課金への対策を考えるうえで、お子さんがゲームの中でお金を何に使っているのかを知っておくと、話し合いがしやすくなります。課金の目的は、大きく次のように分けられます。
- 遊ぶ権利を買う:ゲームソフトそのものや、新しいストーリー・キャラクターなどの追加コンテンツを購入するもの。金額の上限がはっきりしていることが多く、比較的安心です。
- 有利な状況を手に入れる:強いアイテムやキャラクターを手に入れて、ゲームを有利に進めるためのもの。ガチャもここに含まれます。
- 「時間」を買う:お金を払うことで、キャラクターが早く強くなったり、短い時間で回復して次のプレイを始められたりするしくみ。短い時間で先に進めるようになります。
- おしゃれ・コレクション:勝ち負けには直接関係しませんが、キャラクターの衣装やアクセサリーをそろえたり、珍しい持ち物を集めて自慢したりするためのもの。
このように、課金にはさまざまな目的があり、その中には比較的安全なものと、上限がなく使いすぎやすいものとがあります。ガチャのように「有利な状況を手に入れる」「時間を買う」タイプの課金は、とくに注意が必要です。
なお、外見や持ち物にお金をかけること自体は珍しくありませんが、キャラクターの見た目や持ち物が、現実の世界と同じように、からかいやいじめ、たかり(おごらせること)のきっかけになることもあります。お子さんが見栄や付き合いのために無理をしていないか、気にかけておきたいところです。
家庭でできる、お金の使いすぎを防ぐ工夫
しくみが分かったら、具体的な対策です。完璧を目指す必要はありません。できるところから始めてみてください。
決済の方法を見直す
子どもがネットでお金を使うときの主な決済方法には、親のクレジットカード、プリペイド(前払い)カード、銀行振り込み、電子マネーなどがあります。
このうち、親のクレジットカードをそのまま使える状態にしておくと、許可なく使ってしまったり、知らないうちに高額になってしまったりするリスクがあります。パスワードや使用上限の設定をしっかりしておくことが欠かせません。
おすすめしやすいのは、**プリペイド型(前払い式)**の電子マネーやカードに切り替える方法です。コンビニなどで購入でき、購入した金額以上は使えないため、使いすぎの防止に効果的です。あらかじめ使える金額が決まっているので、「今月はここまで」という枠を自然につくることができます。
使用履歴を一緒に確認する
電子マネーには、使用履歴を確認できるという利点があります。現金よりも、いつ・何に・いくら使ったかを把握しやすいのです。月に一度など区切りを決めて、お子さんと一緒に履歴を見てみましょう。叱るためではなく、「これにこれだけ使ったんだね」と現状を一緒に把握することが目的です。使ったお金が見える形になること自体が、使いすぎを抑える助けになります。
お小遣いやお手伝いを「お金の学び」に
子どもは、大人になるまでに、お小遣いをもらい、ときには無駄づかいもしながら、お金を使って人生の楽しみを増やす方法を学んでいきます。これは消費者教育の大切な一部です。お小遣いが足りないときに、家のお手伝いで稼ぐ、年齢によってはアルバイトをするといった経験も、働く大人になるための貴重な学びになります。
課金トラブルは困りごとですが、見方を変えれば、お金との付き合い方を一緒に考える機会でもあります。決められた範囲の中でやりくりする経験を重ねることが、長い目で見たいちばんの予防策になります。
受診・相談の目安
以下のようなことが続く場合は、主治医や当院への相談を考えてみてください。
- 注意しても課金が止められず、生活費やお小遣いに支障が出ている
- 親に隠れて課金を繰り返している、金額について嘘をつく
- 課金できないとひどくいらいらしたり、落ち着かなくなったりする
- ゲームやお金のことで、家庭内の対立が深刻になっている
- 課金の背景に、気分の落ち込みや不安、学校・友人関係のつらさがありそうだと感じる
お金の使いすぎが、別の困りごとのサインになっていることもあります。診断は医師が行いますので、気になるときは一人で抱え込まず、ご相談ください。
まとめ
ガチャの「何が当たるかわからない」しくみはギャンブルに近く、お子さんの意志の強さだけの問題ではありません。とくに集めることが好きなお子さんは止めにくくなりやすいので、しくみの側から対策を考えることが大切です。親のカード管理を見直し、プリペイド型で上限を設け、使用履歴を一緒に確認するだけでも、使いすぎはぐっと防ぎやすくなります。そして、お小遣いやお手伝いを通じてお金との付き合い方を一緒に学んでいくことが、いちばん確かな予防につながります。困ったときは責めるより、まず一緒に確認することから始めてみてください。
参考にした書籍(要約・再構成。原文の転載ではありません):
- ゲーム・ネットの世界から離れられない子どもたち(吉川徹)
よくある質問
ガチャに何度も課金してしまうのは、意志が弱いからでしょうか?
意志の弱さだけの問題ではありません。ガチャは「何が当たるかわからない」というギャンブルに近いしくみで、ドキドキするスリルが衝動を抑えにくくします。とくに集めることが好きなタイプのお子さんは止めにくくなりやすいので、性格のせいと責めるより、しくみの側から対策を考えるほうが現実的です。
子どもの課金を防ぐには、まず何をすればよいですか?
親のクレジットカード情報を端末に残さないこと、プリペイド型(前払い式)の電子マネーやカードに切り替えて使える金額に上限を設けること、そして使用履歴を定期的に一緒に確認することが基本です。一度に全部でなくても、できるところから始めてみてください。
高額な課金に気づいたとき、強く叱るべきでしょうか?
頭ごなしに叱ると、隠れて課金するようになり把握しにくくなります。まず金額と使い道を一緒に確認し、なぜそれだけ使ったのかを落ち着いて聞くことが大切です。生活に支障が出るほど止められない場合や、隠れての課金が続く場合は、主治医や当院にご相談ください。
無料のゲームなら、お金のトラブルは起きませんか?
基本料金が無料のゲームでも、ガチャや追加アイテムへの課金で高額になることがあります。「無料」とあっても、後から課金できるしくみが入っていないか、最初に確認しておくと安心です。