マイスリー(一般名: ゾルピデム酒石酸塩)は、不眠症の治療に使われる非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。特に寝つきの悪さ(入眠困難)に使われることが多いお薬です。
効き始めが早く寝つきを助ける一方、飲んだあとの寝ぼけ行動や記憶の抜けに注意が必要なお薬です。このページでは、その効果や注意点をわかりやすく解説します。なお、ここでの説明は一般的な情報であり、実際の飲み方は診察のうえで主治医が個別に判断します。
どんな薬か
マイスリーは、脳内で「GABA」という、気持ちを落ち着け眠りを促す働きをする物質の作用を強めることで、寝つきをよくするお薬です。作用時間が短めで、寝つきの改善に向いています。
錠剤は5mgと10mgの規格があります。なお、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)に伴う不眠には効果が期待できないとされ、これらには使いません。添付文書には、飲んだあとのもうろう状態・寝ぼけ行動に関する警告があり、飲み方を守ることが特に大切なお薬です。
効果と作用の仕組み
脳内のGABAは、神経の興奮を抑え、リラックスや眠りを促す働きをしています。マイスリーは、このGABAが働く部分に作用してその効果を強めることで、寝つきをよくします。
効き始めが比較的早いため、布団に入ってもなかなか寝つけないタイプの不眠に使われます。効果の感じ方には個人差があり、すべての方に同じように効くわけではありません。
服用の仕方
添付文書上の標準的な用法は、成人では1回5〜10mg、高齢者では1回5mgから始め、就寝直前に飲む、とされています。1日10mgを超えないこととされています。いずれもあくまで添付文書上の標準で、実際の量は症状や体質を見ながら医師が調整します。
飲み方で最も大切なのは、就寝の直前に飲み、飲んだらすぐに休むことです。飲んでから寝るまでに時間があいたり、途中で起きて活動したりすると、もうろう状態や記憶の抜けが起こりやすくなります。重い肝臓の障害がある方などは使えません。ほかに治療中の病気やお薬がある方は、必ず診察時にお伝えください。
効果が出るまでの期間
マイスリーは、飲んだその晩から寝つきの変化を感じやすいお薬です。効き始めが早いため、入眠困難の改善に使われます。
ただし感じ方には個人差があり、合う量や飲み方を調整することもあります。一晩で判断せず、しばらく様子をみながら主治医と相談していきましょう。
主な副作用と対処
比較的みられる副作用として、ふらつき、眠気、頭痛、残眠感(眠気の持ち越し)、めまい、悪心などが報告されています。ふらつきは特に夜間にトイレへ立つときなどの転倒につながることがあるため、注意してください。
翌朝に眠気やだるさが残るときは、その日は運転や危険な作業を避けてください。つらい副作用が続くときは、量の調整も含めて主治医にご相談ください。
まれだが注意したい副作用
特に注意したいのが、もうろう状態や睡眠随伴症状(寝ぼけて歩き回る、食べる、電話するなど)です。こうした出来事を本人が覚えていないことがあり、添付文書でも警告されています。飲んだらすぐ休む、飲んだあとに活動しないことが予防になります。心当たりがあれば主治医にお伝えください。
そのほか重大な副作用として、依存性・離脱症状、精神症状や意識障害(せん妄・錯乱・幻覚など)、一過性の健忘、呼吸抑制、肝機能障害・黄疸が知られています。呼吸が浅く苦しい、皮膚や白目が黄色くなるなどの症状があらわれたら、すぐに受診してください。差し迫った状態のときは、ためらわず救急(119)に連絡してください。
減らすとき・やめるとき
マイスリーは、連用によって依存が生じることがあるお薬です。急に量を減らしたり中止したりすると、不眠のぶり返し(反跳性不眠)やいらいら感などの離脱症状があらわれることがあります。
だからこそ、自己判断で急にやめないことが大切です。やめるときは、眠りの状態を見ながら主治医と相談し、時間をかけて少しずつ減らします。漫然と長く続けないことも大切で、眠りが改善したら減量・中止を一緒に検討していきます。
生活上の注意
- 車の運転など: 効果が翌朝以降に及び、眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるため、添付文書では自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないよう注意することとされています。眠気が残るときは運転を控えてください。
- 飲み方: 就寝の直前に飲み、飲んだらすぐに休みます。飲んだあとに活動しないでください。
- アルコール: 飲酒は作用を強め、もうろう状態や寝ぼけ行動を起こしやすくします。服用中はできるだけ飲酒を控えてください。
- 妊娠・授乳: 妊娠中の方・妊娠の可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用するとされています。授乳は避けることとされています(母乳中へ移行し、赤ちゃんに眠気を起こすおそれがあります)。妊娠・授乳に関することは必ずご相談ください。
- 処方の決まり: マイスリーは向精神薬に指定されており、1回の処方日数に上限があります。飲み合わせのため、ほかに使っているお薬は必ずお伝えください。受診の際はお薬手帳をお持ちください。
当院で処方するとき
当院では、不眠の背景(生活リズム、ストレス、ほかの病気など)をうかがったうえで、マイスリーが適しているかを判断します。特に寝つきの悪さに悩む方に検討されることがあります。もうろう状態や寝ぼけ行動を防ぐため、飲み方(就寝直前・飲んだらすぐ休む)を丁寧にお伝えします。
薬は睡眠の助けの一つですが、それだけがすべてではありません。生活リズムや寝る前の環境の見直しと組み合わせながら、眠りの改善を一緒に目指していきます。薬への不安や疑問は、どんな小さなことでも診察でお聞かせください。
参考文献
- マイスリー錠5mg 他 添付文書(2023年6月改訂・第2版、アステラス製薬) — KEGG MEDICUS掲載の電子添文を参照(参照日: 2026-07-07)
よくある質問
飲んだあとの記憶がないことがあります。大丈夫ですか?
マイスリー(ゾルピデム)では、服用後にもうろうとした状態や、寝ぼけて歩き回るなどの行動(睡眠随伴症状)があらわれ、そのときの出来事を覚えていないことがあります。これは注意が必要な副作用です。飲んだらすぐに休むこと、飲んだあとに活動しないことが大切です。心当たりがあれば主治医にお伝えください。
飲んですぐ寝ないといけないのですか?
はい。マイスリーは効き始めが比較的早いお薬です。飲んでから寝るまでに時間があくと、もうろう状態や寝ぼけ行動、記憶が抜けるといったことが起こりやすくなります。必ず就寝の直前に飲み、飲んだらそのまま布団に入ってください。
依存性はありますか?
マイスリーは連用によって依存が生じることがあるお薬です。急に量を減らしたり中止したりすると、不眠のぶり返し(反跳性不眠)やいらいら感などの離脱症状が出ることがあります。漫然と長く続けず、やめるときは主治医と相談しながら徐々に減らしていきます。
どんな不眠にも使えますか?
マイスリーは、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)に伴う不眠には効果が期待できないとされており、これらには使いません。不眠の背景によって適したお薬は異なります。まずは眠れない原因を診察で確認したうえで、合う治療を考えていきます。
お酒と一緒に飲んでもよいですか?
いけません。アルコールと一緒に飲むと、判断力や運動機能の低下が強まり、もうろう状態や寝ぼけ行動も起こりやすくなります。服用中はできるだけ飲酒を控えてください。飲酒した日の服用については主治医にご相談ください。