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ジプレキサ(一般名: オランザピン)は、抗精神病薬に分類されるお薬です。ドパミンやセロトニンなど複数の神経伝達物質の受容体に働きかける、非定型抗精神病薬と呼ばれるグループに含まれます。

日本では、統合失調症双極性障害における躁症状およびうつ症状の改善、そして抗がん剤の投与に伴う吐き気・嘔吐に使われています。このページでは主に精神科での使われ方(統合失調症・双極性障害)を中心に解説します。なお、ここでの説明は一般的な情報であり、実際の飲み方は診察のうえで主治医が個別に判断します。

どんな薬か

ジプレキサは、脳内のドパミンやセロトニンなどの働きを調整することで、幻覚・妄想や気分の高ぶり・落ち込みを和らげることが期待されるお薬です。気分の両方向(躁とうつ)に使える点が特徴です。

錠剤には2.5mgなどの規格があり、口の中で溶けるザイディス錠や細粒もあります。最も大切な注意点は、糖尿病の方・糖尿病の既往がある方には使えない(禁忌)ことと、体重や血糖への影響に注意が必要なことです。詳しくは後述します。

効果と作用の仕組み

ドパミンやセロトニンは、現実感・気分・不安などに関わる神経伝達物質です。統合失調症では一部の経路でドパミンが過剰に働いていると考えられ、ジプレキサはこの働きを抑えることで幻覚・妄想などを和らげます。

双極性障害では、気分の高ぶりを鎮めるとともに、うつ症状の改善にも働きかけます。あわせてヒスタミンなどの受容体にも作用し、これが眠気や食欲の変化につながります。効果の現れ方には個人差があります。

服用の仕方

添付文書上の標準的な用量は、適応によって異なります。統合失調症では1日1回5〜10mgで開始し維持量1日1回10mg(1日最大20mg)、双極性障害の躁症状では10mgで開始(1日最大20mg)、うつ症状では5mgで開始し10mgに増量(1日最大20mg)とされています。いずれもあくまで添付文書上の標準で、実際の量は症状や体質を見ながら医師が調整します。

眠気が出やすいため、就寝前など飲むタイミングを工夫することもあります。ほかに治療中の病気やお薬がある方は、必ず診察時にお伝えください。特に糖尿病の情報は重要です。

効果が出るまでの期間

ジプレキサの鎮静的な作用は比較的早く感じられることがありますが、幻覚・妄想や気分症状に対する本来の効果は、数日から数週間かけて徐々に現れることが一般的です。

すぐに変化を感じなくても、自己判断で量を増やしたり中止したりせず、診察で経過をお伝えください。効果と副作用のバランスを見ながら調整していきます。

主な副作用と対処

比較的みられる副作用として、傾眠(22.3%・眠気)、体重増加(20.1%)、不眠(10.3%)、便秘、食欲亢進、口の渇きなどが報告されています。体重増加と食欲の変化が比較的目立つお薬です。

体重や体調の変化が気になるときは、我慢せず主治医にご相談ください。食事や運動の工夫も含めて一緒に考えていきます。眠気やふらつきは飲み始めや増量時に出やすいので、その時期は特に注意して過ごしてください。

まれだが注意したい副作用

最も重要なのが血糖に関わる副作用です。まれに高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡があらわれることがあり、そのため糖尿病の方・糖尿病の既往がある方には使えません(禁忌)。糖尿病でない方でも、口の渇き・多飲・多尿・頻尿などの症状に気づいたら、すぐに受診してください。

そのほか重大な副作用として、悪性症候群、低血糖、肝機能障害、痙攣、遅発性ジスキネジア、横紋筋融解症、麻痺性イレウス、無顆粒球症、肺塞栓症・深部静脈血栓症などが知られています。高熱・体のこわばり・意識のもうろう、強い筋肉痛や赤褐色の尿、片方の足の腫れや痛みなどがあらわれたら、すぐに受診してください。差し迫った状態のときは、ためらわず救急(119)に連絡してください。

減らすとき・やめるとき

ジプレキサに、いわゆる依存性のある薬という位置づけはありません。ただし、自己判断で急に中止すると、症状がぶり返したり不安定になったりすることがあります。添付文書でも、症状が増悪した場合は量を増やさず、徐々に減量して中止するなど適切に対応することとされています。

調子が良くなったと感じても、減らす時期やペースは主治医と一緒に決めていくことが大切です。特に統合失調症や双極性障害では、症状が落ち着いたあとも再発予防のために服用を続けることが多いお薬です。まずは診察でご相談ください。

生活上の注意

  • 車の運転など: 眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるため、添付文書では高所での作業や自動車の運転など危険を伴う機械の操作をしないよう注意することとされています。運転の必要がある方は、必ず主治医にご相談ください。
  • 血糖・体重: 定期的に血糖・体重・脂質の変化を確認しながら使います。のどの渇きや尿の量の増加など、気になる変化は早めにお伝えください。
  • 妊娠・授乳: 妊娠中の方・妊娠の可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合に使用するとされています。妊娠後期に抗精神病薬を使用した場合、新生児に一時的な症状が報告されています。授乳については、母乳中への移行が報告されており、添付文書では授乳しないことが望ましいとされています。妊娠・授乳に関することは必ずご相談ください。
  • 飲み合わせ: ほかのお薬やアルコールとの併用で眠気が強まることがあります。受診の際はお薬手帳をお持ちください。

当院で処方するとき

当院では、診断と症状の状態、体質、これまでの病気(特に糖尿病の有無)をうかがったうえで、ジプレキサが適しているかを判断します。糖尿病の方には使えないため、血糖に関する情報は必ず確認します。

開始後しばらくは、効果とともに体重・血糖・眠気の変化を確認するため、比較的こまめに診察を行います。薬は治療の柱の一つですが、それだけがすべてではありません。休養や生活の調整と組み合わせながら、回復を一緒に目指していきます。薬への不安や疑問は、どんな小さなことでも診察でお聞かせください。

参考文献

  • ジプレキサ錠2.5mg 他 添付文書(2024年11月改訂・第3版) — KEGG MEDICUS掲載の電子添文を参照(参照日: 2026-07-07)

よくある質問

糖尿病だとジプレキサは使えないのですか?

はい。ジプレキサ(オランザピン)は血糖値を上げ、まれに糖尿病性ケトアシドーシスや糖尿病性昏睡といった重い状態を引き起こすことがあるため、糖尿病の方・糖尿病の既往がある方には使えないことになっています(禁忌)。糖尿病でない方でも、投与中は血糖の変化に注意しながら使います。持病やこれまでの病気は必ず診察でお伝えください。

太りやすいと聞きました。本当ですか?

ジプレキサは体重増加や食欲亢進が比較的みられやすいお薬で、臨床試験でも体重増加は多く報告されています(約20%)。あわせて血糖や脂質にも影響することがあるため、定期的な確認をしながら使います。体重の変化が気になるときは主治医にご相談ください。食事や運動の工夫も一緒に考えていきます。

よく眠れるので睡眠薬代わりになりますか?

ジプレキサには眠気が出やすい性質がありますが、承認されている効能は統合失調症・双極性障害・抗がん剤による吐き気であり、睡眠薬として使うお薬ではありません。眠気を目的に自己判断で量を変えることはせず、飲み方は主治医の指示に従ってください。

気分の波にも効くのですか?

ジプレキサは双極性障害の躁症状・うつ症状の両方に使われるお薬です。気分の高ぶりを抑えるだけでなく、落ち込みの改善にも用いられます。どの症状に対して処方されているか、気になるときは主治医に確認してみてください。

やめるときはどうすればよいですか?

いわゆる依存性のある薬という位置づけではありませんが、自己判断で急にやめると症状がぶり返すことがあります。症状が増悪したときも量を増やさず、徐々に減らして中止するなど医師が適切に判断します。減らす時期やペースは主治医と相談して決めましょう。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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