「このつらさを何とかしたい」と思う一方で、「治療であの出来事を思い出すのが怖い」と感じることがあります。専門的なトラウマ治療には、記憶に向き合う方法も、出来事の受け止め方を中心に扱う方法もあります。大切なのは名前だけで治療を選ぶことではなく、何をするのかを知り、自分が納得できる進め方を確かめることです。
1. つらい記憶を、何度も話さなければいけませんか?
治療を調べていて「エクスポージャー(曝露)」という言葉に出会い、画面を閉じたくなった方もいるかもしれません。ようやく普段の生活を送れているのに、あの場面をもう一度話すなんて、と感じることもあるでしょう。
持続エクスポージャー療法(PE)には、なぜ記憶を扱うのかについての考え方があります。思い出すことや、思い出しそうな場所を避けると、その場の苦痛は小さくなります。ただ、避けていったん楽になる経験が重なると、避け続けることが習慣になり、記憶に結びついた苦痛が長引く場合があるという説明です。PEでは治療者とともに記憶や避けてきた状況に向き合い、この関係を少しずつ変えていくことを目指します。
ここで区別したいのは、「記憶に向き合うこと」と「思い出したくないことを、ただ繰り返し語らされること」は同じではないという点です。記憶を扱う目的も方法も治療によって異なり、どの治療もPEのように記憶へ近づくことを重視するわけではありません。出来事に伴う自分への見方を検討する治療や、今の人間関係と生活に焦点を当てる治療も研究されています。
回復の主体は、治療を受ける本人です。何を扱うのか、どんな負担がありそうかを知らないまま始める必要はありません。まずは「思い出すことが怖い」と伝えるところから、治療について話し合えます。
2. 治療の最初に確かめるのは、記憶よりも安全です
専門的な治療の初回を想像すると、「何があったか、最初から最後まで説明しなければ」と身構えるかもしれません。けれども治療の出発点には、今どう過ごしているかを一緒に確かめるという作業があります。
英国NICEの診療ガイドラインは、PTSDの評価について、心理的な症状だけでなく、身体の状態、暮らしや人との関係、危険が迫っていないかまで含めて検討するよう求めています。複雑性PTSDを含め追加の支援が必要な人については、住まいなど生活の安全と安定を考慮し、強い感情や解離、対人関係の難しさなど、治療の妨げになる問題への手助けも求めています。飲酒や薬物の問題があっても、それだけで治療から締め出さないという方針です。
「治療を受けたほうがよいと分かっていても、予約するのが怖い」。NICEは、不安や恥ずかしさから治療を避けたり、相手を信頼するまでに時間がかかったりすることを想定しています。複雑性PTSDなど追加の支援が必要な人には、必要に応じて治療の時間や回数を増やし、信頼関係を築く時間をとることも勧めています。
ここで大切なのは、本人が選べるという感覚です。治療者が善意で急いでも、説明が足りなかったり方針が突然変わったりすれば、受ける側は置き去りにされたように感じるかもしれません。トラウマインフォームドケアでは、目的を共有し、相手の意思を尊重し、予測できる関わり方を大切にします。
「今日は出来事の詳細には触れたくありません」「まず、治療で何をするか教えてください」「負担が強いときはどう調整しますか」。こうした希望は治療の邪魔になる注文ではなく、安全を確かめ、納得して進めるための質問です。話せる速さを競う必要はなく、その人が取り組める条件をつくることも治療の一部になります。
3. PE療法は、怖い記憶とどう向き合うのでしょうか?
PEは持続エクスポージャー療法という名前のとおり、「避けてきたことに向き合う」方法を中心に据えています。ただ、日常で無理に怖いことを経験するという意味ではなく、治療者と方針を立て、苦痛の強さや反応を確かめながら、専門的な治療の枠組みの中で行います。
PEの説明は、二つの方向に分けると分かりやすくなります。
一つは、記憶の中の出来事に向き合うことです。思い出すと強い苦痛が生じる記憶を、治療の中で扱います。避け続けることで記憶に結びついた恐怖が残るという考え方に基づき、記憶に触れたときの反応や、出来事の受け止め方が変わっていくことを目指します。
もう一つは、現実の生活で避けている状況に近づくことです。例えば、何かを思い出しそうで避けている場所や活動があるとき、それにどう取り組むかを治療者と検討します。ここでいう曝露は危険な場所へ無条件に戻れという指示ではなく、何を避けているのか、その場でどんな不安が生じるのかを見極めて、計画的に進めるものです。
PEのような曝露を伴う治療では、初めのうちに強い恐怖が生じ、負担の大きさが治療の中断につながる場合もあると指摘されています。ですから、「効果が期待できるなら、怖くても我慢して最後までやるべきだ」と考える必要はありません。負担の見通しや対応も含めて話し合う意味があります。
NICEは、トラウマに焦点を当てた認知行動療法について、専門的な訓練と継続的な指導を受けている担当者が、手引きに基づいて実施するよう求めています。標準的には8~12回を目安としながら、複数の体験がある場合などには回数を増やすことも示しています。記憶だけでなく、感情への対処、回避への取り組み、仕事や人間関係を含む生活の立て直しまで視野に入れます。
4. CPT・CT・NET――同じ記憶でも、扱い方は違います
「記憶を扱う治療」にも、いくつもの入口があります。
CPT(認知処理療法)が重視するのは、トラウマ体験と結びついた意味や受け止め方です。岩井圭司の2020年の論考によると、体験を詳しく書く形式もありましたが、今は筆記による曝露を伴わない形式が主流になっています。
CT(PTSDに対する認知療法)でも記憶を扱いますが、PEとは目的の置き方が違います。つらい記憶に触れたときに生じる理解や評価を確かめ、記憶に結びついた意味を検討します。記憶に近づく技法が含まれていても、PEと同じように苦痛への慣れを主な狙いにするわけではない、と資料では区別されています。つまり「曝露をするか、しないか」だけでは、治療の中身を言い表せません。
NET(ナラティブ・エクスポージャー療法)は、つらい出来事の記憶を言葉にすることに加え、その前後にある人生の記憶とのつながりにも目を向けます。孤立したように感じられる出来事を、人生の時間の流れの中で扱うところが特徴です。PEのように苦痛の強い場面に向き合うことを重視する方法と、NETのようにつながりを重視する方法では、同じ「曝露」という言葉を使っていても目指すところが異なります。
英国NICEは、PE、CPT、CT、NETを、出来事から1か月を超えて受診した成人のPTSDに対するトラウマ焦点化認知行動療法の選択肢として挙げています。共通しているのは、専門家が手引きに沿って進め、トラウマに結びついた感情や意味、回避、日常生活への影響を扱うという枠組みです。ただし、共通の名前の下にあっても、受ける人が実際に行うことは一様ではありません。
治療の名前だけを聞いて、すぐに決めなくても構いません。「私の場合は何をすることになりますか」「出来事を詳しく語ることが不安です」と尋ねれば、治療を受けるうえで確かめたい点が見えてきます。自分の言葉で質問できることも、選ぶための大事な一歩です。
5. EMDRは、目を動かすだけの治療なのでしょうか?
「目を左右に動かす治療」と聞くと、不思議に感じるかもしれません。EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)は、目の動きだけで成り立つ治療ではありません。
英国NICEが示すEMDRは、段階を踏んで進める専門的な心理療法です。まずトラウマによる反応について説明を受け、つらい記憶や場面にどう対応するかを学びます。そのうえで治療の対象とする記憶を選び、セッションの中で扱っていきます。自分についての別の受け止め方を育てることも含まれます。
特徴的なのは、左右交互の刺激を使う場面です。眼球運動が一般的ですが、本人の希望や事情によっては、左右のタップや音を使う方法もあります。刺激だけでなく、対象の記憶や苦痛への対応を含む全体の流れが大切です。セッションの合間に使える落ち着き方やフラッシュバックへの対処も扱います。
NICEは、訓練を受け、継続的な指導も受けている担当者が、検証された手引きに沿って実施するよう求めています。通常は8~12回が目安ですが、複数の体験を抱えている場合などには増やすことも想定しています。
推奨には条件もあります。NICEは、成人で非戦闘性の出来事から1~3か月が経ち、本人がEMDRを希望する場合には実施を検討し、3か月を超えている場合には提供を勧めています。いずれもPTSDの診断、または臨床的に重要な症状がある人についての推奨です。作用の仕組みを決めつけず、具体的な進め方を確かめることが大切です。
6. 結局、どの治療が一番効くのでしょうか?
治療の名前を知るほど、「一番効くのはどれだろう」と迷うかもしれません。研究は参考になりますが、誰にでも当てはまる順位表にはなりません。
2020年にLewisらがまとめた系統的レビューでは、成人のPTSDに対する114件の無作為化比較試験、計8171人のデータを検討しています。トラウマ焦点化認知行動療法とEMDRには、臨床的に意味のある改善を支持する確かな根拠がありました。手順を定めた個別の認知行動療法の中では、CPT、CT、PEの根拠が特に強いと評価されています。
日本からの研究もあります。AsukaiらはPTSDの患者24人を対象にPEと通常治療を比較し、治療後のPTSD症状と抑うつ症状について、PEを受けた群でより大きな改善を報告しました。両群を合わせてPEを完了した19人については、12か月後にも低い症状水準が保たれていました。ただし、こちらは少人数の研究です。国内で効果を確かめた意義と、結果を一般化する限界は分けて考える必要があります。
記憶への曝露を中心にする方法だけが研究されているわけでもありません。岩井圭司の論考は、対人関係療法(IPT)をPEと比較した研究にも触れています。ただ、研究の蓄積という点では、トラウマ焦点化CBTとEMDRをまず検討する根拠のほうが整っています。出来事から3か月を超えた成人で、トラウマ焦点化治療に取り組めない、あるいは望まない場合や、治療後に不眠や怒りなどが残った場合には、それらの症状に焦点を当てたCBTを検討することもあります。
ここで覚えておきたいのは、「効果があると示された治療」と「今の自分が取り組める治療」の両方を考えることです。希望と負担の見通しを専門家と確かめることも、治療選びの一部になります。
7. 受けられる場所は、どうやって探せばよいですか?
「トラウマ治療」「カウンセリング」だけで探すと、実際にどの方法を受けられるのか分かりにくいことがあります。「持続エクスポージャー療法(PE)」「認知処理療法(CPT)」「EMDR」「トラウマ焦点化認知行動療法」のように治療名を含めて調べると、問い合わせたい内容を絞りやすくなります。
施設のサイトに治療名があっても、受けるための条件までは分からないことがあります。問い合わせでは、次の五つを確かめると具体的です。
- 現在、希望する治療を実施していますか。 新たに受ける人を受け付けているかも尋ねます。
- 誰が担当しますか。 その治療についての訓練歴や、継続的な指導を受ける体制を確かめます。
- 何回くらい通いますか。 標準的な回数だけでなく、状況に応じて調整できるかも聞きます。
- 負担が強くなったときはどうしますか。 記憶を扱う前の準備や、セッションの合間の対処も確認します。
- 通い続ける条件は合いますか。 担当者の性別に希望を出せるか、通院方法、費用、予約待ちを尋ねます。
NICEが示す8~12回は英国の治療指針上の目安で、日本の施設での回数や費用を表すものではありません。国内施設の実施状況、費用、待ち時間は、候補の施設ごとに確認します。
本人が希望する場合の選択肢として、NICEは支援者が関わるコンピューターを使ったトラウマ焦点化CBTも挙げています(日本で受けられるかは確認できていません)。NICEは、出来事から3か月を超え、対面治療やEMDRよりこの形を希望する成人について、重いPTSD症状、特に解離症状がなく、自他を傷つける危険がない場合に検討するとしています。これは訓練された担当者が課題への助言や経過確認を行う、通常8~10回のプログラムです。
探し始めた段階で、治療法を一つに決める必要はありません。まずは「どんな治療を、どんな条件で受けられるか」を確かめるところからで十分です。
8. フラッシュバックがつらいとき、まずできること
記憶が急に迫ってくるようなときは、「なぜこんな反応が起きるのか」と分析するより、今いる場所に注意を戻すことが先です。専門治療で用いられる対応の一つに、グラウンディングという考え方があります。
治療の中では、例えば、部屋の家具や外の天気、足の裏に床が触れる感覚など、周囲の具体的なものに注意を向けて言葉にするよう教わることがあります。頭の中に現れた記憶から、今の周囲にある具体的な情報へ注意を向ける方法です。
トラウマ焦点化治療でも、記憶を扱うことと、強い苦痛やフラッシュバックへの対処を身につけることは組み合わせて考えられています。今つらいときに、記憶を掘り下げる作業まで始めなくて構いません。
9. AIで試す前に、決めておくこと
ここからは、治療を受けるための希望や質問を、声に出して整理する方法を紹介します。AIに専門的なトラウマ治療を再現させるのではなく、相談の準備を手伝ってもらう補助的な使い方です。実際の治療では、同じ相手との関係が続き、担当者が経過を覚えていて、言葉にならない沈黙を待ってくれることがあります。AIとのやり取りは、その代わりにはなりません。
対象は18歳以上です。自分を傷つけたい、誰かを傷つけそうという考えがあるとき、現実かどうか判断しにくい体験や強い疑い深さがあるとき、眠らないのに活動が高まっているときは使いません。強いフラッシュバック、解離、パニックの最中や、飲酒・薬物の影響下にあるときも同様です。始めてから苦痛、考えの堂々巡り、不眠、焦りが増えたら、途中でやめます。
話す内容には、氏名、生年月日、住所、勤務先や学校名、第三者を特定できる情報を入れず、「家族A」「上司B」などに置き換えます。AIは治療者でも診断者でも緊急対応者でもなく、話した内容が主治医に自動で伝わることも、危険を察知して外部へ連絡することもありません。差し迫った危険があるときは救急に連絡し、そうでない場合も深刻な状態については主治医に伝えてください。診断や薬、受診、休職の判断をAIの返答で決めることはしません。
これから使う指示文では、出来事の詳細を再現したり、記憶への曝露を試したりはしません。「話したいことだけを話して、話したくないことは残しておく」という境界を決めて始めます。
10. 🎤 AIに話して、治療への希望を整理する
治療への希望を、声で整理してみましょう。指示文をAIに送ったら、マイクに向かって話してみてください。
治療に望むことを整理する
専門的なトラウマ治療への希望・不安・担当者への条件を声で整理したいです。最初に「治療で何を大切にしたいですか」と一つ聞き、「以上です」までは短い相づちだけにしてください。その後、私が話した希望と確認したいことを、私の言葉のまま、話した順に並べてください。省略や言い換えはしないでください。出来事の詳細・記憶の再現・曝露・感情の掘り下げは求めないでください。1回10〜15分。まとめの前に確認の質問をする場合も一つずつ聞き、最初の質問と合わせて計5問までにしてください。いつでも中止できます。氏名・生年月日・住所・勤務先・学校名・第三者の特定情報は「上司A」「家族B」に置き換えてください。診断、原因推定、信念・性格の命名や断定、論破、勝手な解釈・意味づけ、「本当はこう感じているのでは」という言い換え、助言・励ましの連発、「大丈夫」の保証の反復、薬・受診・休職の判断は禁止です。
消えてしまいたい気持ち、自分や誰かを傷つけそうな考えが出たら深掘りせず、主治医への相談か受診を勧めて終了してください。答えがなくても責めず、未達を意欲不足とみなさず、「今回は見つかりませんでした」で終えてください。
専門機関に聞くことを整理する
実施の有無に加えて、担当者や負担への対応も質問にできます。
専門施設に聞きたいことを声で整理します。治療名、担当者の訓練、進め方・回数、苦痛が強まったときの対応、担当者への希望、費用・予約待ちを候補にしてください。実施状況や金額は推測しないでください。まず「一番確かめたいことは何ですか」と尋ね、「以上です」までは短い相づちだけにしてください。その後、私が挙げた質問を、私の言葉のまま、話した順に5つ以内で並べてください。体験の詳細や曝露は求めないでください。1回10〜15分。まとめの前に確認の質問をする場合も一つずつ聞き、最初の質問と合わせて計5問までにしてください。いつでも中止できます。氏名・生年月日・住所・勤務先・学校名・第三者の特定情報は「上司A」「家族B」に置き換えてください。診断、原因推定、信念・性格の命名や断定、論破、勝手な解釈・意味づけ、「本当はこう感じているのでは」という言い換え、助言・励ましの連発、「大丈夫」の保証の反復、薬・受診・休職の判断は禁止です。
消えてしまいたい気持ち、自分や誰かを傷つけそうな考えが出たら深掘りせず、主治医への相談か受診を勧めて終了してください。質問が挙がらなければ、そのまま終えてください。
AIが勝手に意味づけしたとき
例えば「担当者に話せるか不安です」と話しただけなのに、AIが「幼少期の体験から人を信用できないのですね」と返してきたとします。そんなときは「幼少期や人への不信感については話していません。その解釈を削除し、私の発言だけ残してください」と訂正できます。AIの推測を受け入れる必要はありません。
11. 🎤 診察で何から話すか、決めておきたいとき
治療名を決めなくても、今の困りごとを整理できます。
話した内容だけで診察用メモを作ってください。最初に「今、話せる範囲で困っていることは何ですか」と尋ね、「以上です」までは短い相づちだけにしてください。最後に「今困っていること」「治療への希望」「医師に聞きたいこと」の3項目の見出しの下に、私の発言を言葉のまま、話した順に振り分けてください。言い換え・要約・省略はしないでください。出来事の詳細、記憶の再現・曝露・感情の掘り下げは求めないでください。1回10〜15分。まとめの前に確認の質問をする場合も一つずつ聞き、最初の質問と合わせて計5問までにしてください。いつでも中止できます。氏名・生年月日・住所・勤務先・学校名・第三者の特定情報は「上司A」「家族B」に置き換えてください。診断、原因推定、信念・性格の命名や断定、論破、勝手な解釈・意味づけ、「本当はこう感じているのでは」という言い換え、助言・励ましの連発、「大丈夫」の保証の反復、薬・受診・休職の判断は禁止です。
消えてしまいたい気持ち、自分や誰かを傷つけそうな考えが出たら深掘りせず、主治医への相談か受診を勧めて終了してください。答えがなくても責めず、未達を意欲不足とみなさず、「今回は見つかりませんでした」で終えてください。
何があったかを詳しく話せなくても、今の困りごとから相談を始められます。当院では、AIで作った診察メモを画面のまま見せていただいて構いません。話す範囲や順番は自分で選べます。なお、PEやCPTなどのトラウマ焦点化認知行動療法、EMDRといったトラウマに特化した専門治療は、当院では行っていません。実施している医療機関をお探しいただくことになりますが、紹介状(診療情報提供書)は必要に応じて作成します。
よくある質問
Q. トラウマ治療では、つらい体験を必ず詳しく話す必要がありますか? 曝露を用いて記憶に向き合うPEやNETに対し、CPTには詳しい筆記による曝露を伴わない形式があります。治療法によって進め方が違うため、準備や本人の希望も含めて確認できます。
Q. EMDRと持続エクスポージャー療法は、どちらが効果的ですか? どちらにも、成人のPTSDに対する研究上の根拠があります。単純な優劣では決められず、対象となる状態、進め方、本人の希望を合わせて考えます。
Q. フラッシュバックがあっても、専門治療を受けられますか? フラッシュバックがあっても、専門治療を検討できます。専門治療では、記憶だけでなく苦痛やフラッシュバックへの対処も扱います。症状が強い場合や生活上の安全に課題がある場合は、準備や治療計画を調整します。
参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません)
- NICE『Post-traumatic stress disorder(NG116)』NICE、2018年。
- 岩井圭司「トラウマ臨床総論」、亀岡智美「トラウマインフォームドケアの意義と広がり」『精神科治療学』星和書店、2020年。
- Judith Lewis Herman『Trauma and Recovery』Basic Books、1992年(初版)。
- David A. Clark・Aaron T. Beck『Cognitive Therapy of Anxiety Disorders: Science and Practice』Guilford Press、2010年。
- Asukaiほか「Efficacy of exposure therapy for Japanese patients with posttraumatic stress disorder due to mixed traumatic events」『Journal of Traumatic Stress』2010年。
- Lewisほか「Psychological therapies for post-traumatic stress disorder in adults: systematic review and meta-analysis」『European Journal of Psychotraumatology』2020年。