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休職の診断書を会社に出したあと、「傷病手当金の申請書もお願いします」と言われることがあります。療養中に何枚も書類を渡されると、どこから手をつければよいのか迷うかもしれません。この申請書は、本人・会社・医師が分担して完成させるものです。まずは自分が書く2ページを、一緒に見ていきましょう。

1. 4ページの申請書を、3人で完成させます

協会けんぽの「健康保険傷病手当金支給申請書」は、全部で4ページあります。1〜2ページ目は本人、3ページ目は勤務先、4ページ目は医師などの療養担当者が記入します。会社の出勤記録も医師の医学的な判断も、自分で埋める必要はありません。

ここで、似ている2種類の書類を整理しておきましょう。会社に出す休職診断書は、病気のために仕事を休む必要があると伝えるものです。一方、傷病手当金の申請書は、休んでいる間の収入を補う健康保険の給付を請求するものです。診断書を会社に出しただけで、給付が自動的に始まるわけではありません。

傷病手当金を受けるには、業務外の病気やけがの療養で働けないこと、連続する3日間の「待期」を満たしたうえで4日目以降も働けないことなどの条件があります。待期の3日には有給休暇や土日・祝日も含まれ、給与が出ていたかどうかは問いません。自宅で療養している期間も対象になり得ます。働けない状態かどうかは、医師の意見だけでなく仕事の内容も踏まえて判断されます。

まず本人が自分の情報を書き、会社と医師にそれぞれの証明を頼みます。そう考えると、4ページの書類にも少し見通しが立ちます。

2. 1ページ目は、本人確認と振込先です

最初のページは「誰が申請し、どこに振り込むか」を伝えるページです。健康保険の記号・番号、生年月日、氏名、住所、電話番号から確認していきます。

保険の記号・番号は「資格情報のお知らせ」などに載っています。退職後に申請する場合も、働いていたときの記号・番号を書きます。番号の後ろの枝番は書きません。記号・番号が分かるなら、マイナンバー欄を埋める必要はありません。分からずにマイナンバーで申請するときは、番号と身元を確認する書類の添付が必要です。

氏名は漢字だけでなく、カタカナ欄も大切です。カタカナは振込手続きに使われるため、姓と名の間を1マス空け、濁点・半濁点もそれぞれ1文字として記入します。普段の署名の感覚でつい詰めて書きたくなりますが、枠に合わせて確認しましょう。

次は振込先です。通常の口座を指定する場合は、自分名義の銀行名・支店名・口座番号を確認します。銀行の合併などで支店名が変わっていれば、新しい名称を使います。ゆうちょ銀行の場合は、通帳などの「記号・番号」をそのまま書くのではなく、振込用の漢数字3文字の店名と7桁の口座番号が必要です。

もう一つの選択肢が「公金受取口座」です。国に登録した口座を使いたい場合は「希望する」を選び、振込先の口座情報は記入しません。通常の口座を指定したいなら「希望しない」を選び、自分名義の口座を書きます。両方を書いても公金受取口座が優先されるので、どちらで受け取るかを先に決めておくと迷いません。

公金受取口座の登録は、マイナポータルの「おかね」から確認できます。未登録だったり情報を取得できなかったりすると、申請書が返されることがあります。「登録したつもり」のまま進めず、一度画面で確かめておきましょう。

最後に、書き方の細かな決まりも確認します。日付の月日が1桁なら「03」のように左側を0で埋め、書き間違えた部分は黒く塗りつぶして欄外に正しく書き直します。1ページ目で特に見直したいのは、カタカナの氏名と振込先です。ここを確認できたら、次は休職した期間について書いていきます。

3. 2ページ目は「いつ、どんな仕事を休んだか」

2ページ目の中心は、療養のために働けなかった期間です。最初の申請なら、連続して3日間休んだ「待期」の初日から日付を書きます。支給の対象になるのはその3日間を過ぎた4日目以降ですが、申請期間には待期も含めます。

例えば、11月1日から仕事を休み始め、3日まで続けて働けず、11月30日まで休職したとします。最初の申請期間は11月1日〜30日と書き、待期が成立すれば4日以降の働けない日が支給対象になり得ます。ただし、11月30日分までの申請書を11月中に提出することはできず、申請期間が終わってから提出します。

2026年10月版の協会けんぽの手引きでは、申請期間は暦で3か月以内とされ、超える場合は用紙を分けます。長い休職の全期間を最初から1枚に書く必要はありません。給与の支払い状況を会社が証明するため、協会けんぽは給与締切日ごとに1か月単位で申請することを勧めています。

次に、仕事内容を記入します。「会社員」だけで済ませず、「経理担当事務」「自動車の組立」「プログラマー」のように、実際の業務が伝わる言葉を選びます。働けなかったかどうかの判断には、仕事内容も関係するからです。退職後の申請でも、ここには在職中に担当していた仕事を書きます。

傷病名の欄も見落としやすいところです。4ページ目に医師が記入する傷病名と同じ場合は、該当するチェックを入れます。異なる場合は別の証明が必要になるので、自己判断で病名を合わせず、確認しておきましょう。

最後に、病気やけがの原因を選びます。仕事・通勤と関係がない場合は「1」、仕事に関係する場合は「2」、通勤途中のけがなら「3」です。業務や通勤が原因であれば、原則として労災保険の対象になります。原因の区分に迷うときは、推測で選ばず確認しましょう。労災を請求しているかどうかの欄も、空欄にしないことが大切です。

ここまでが、本人が記入する「申請期間と仕事」の部分です。残る給与や年金などの確認欄は、会社の証明や実際の支給額とも関わってきます。

4. 最後のチェック欄が、支給額を左右します

2ページ目の後半には、申請期間中の給与、年金、労災補償を確かめる欄があります。休んだ期間を書き終えるとひと安心したくなりますが、ここは実際の支給額にも関わる部分です。

まず「報酬を受けましたか」という質問です。有給休暇の賃金や、休職中も支払われた手当がないか、給与明細を見ながら答えましょう。「はい」を選んだ場合は、会社が3ページ目に証明する内容と一致しているかも確かめます。食い違いがあれば、会社に正しい証明を依頼します。

同じ病気による障害厚生年金・障害手当金を受けている場合、傷病手当金は金額が調整されます。退職後の期間を申請する場合は、老齢・退職年金の受給状況も確認します。また、別の病気で労災の休業補償給付を受けているときも調整の対象になり、金額によっては差額が支払われます。労災を請求中かどうかの回答も忘れないようにしましょう。

添付書類は回答によって変わります。例えば、年金について情報照会を希望しない場合の年金証書や金額を示す書類、労災給付を受けている場合の支給決定通知書のコピーなどです。すべてを集める必要はなく、自分に当てはまる項目から必要なものを確認すると整理しやすくなります。

5. 会社が証明するのは、休んだ日と支払った給料です

3ページ目は会社に記入してもらいます。本人が給与明細を見ながら欠勤日数や金額を計算して埋めるのではなく、会社が申請期間中の出勤状況と、働いていない日に支払った報酬を証明するページです。

その月に一度も出勤していなくても、勤務状況欄の「年・月」は必要です。出勤した日に丸をつける欄だからといって、出勤がゼロなら何も書かなくてよいわけではありません。

報酬の欄は、さらに間違いやすいところです。有給休暇を取った日の賃金に加え、休んでいても支払われる通勤手当・扶養手当・住宅手当なども記入の対象になります。食事や住居などの現物支給も含まれます。一方、実際に出勤した日に対する残業代や、一時的な見舞金は区別して扱います。数か月分の通勤手当をまとめて受け取っている場合も、支給対象の期間と金額を会社に正しく記入してもらいます。

特に困るのは、支払われていない給料が「支払われた」と証明されることです。傷病手当金の額が小さく計算されるおそれがあります。支給がなければ、会社の報酬欄にわざわざ「0円」と記入する必要もありません。証明の日付は、申請期間が終わったあとの日付になります。

退職後の日だけを申請するときは、会社の記入欄は空欄で提出します。在職中なら、有給休暇の残日数、休職中の給与の扱い、給与締切日、申請書の受け渡し方法を人事担当者にまとめて聞いておくと便利です。療養中に何度も会社へ連絡する負担も減らせます。

6. 医師が証明するのは、通院日数ではありません

「休職の診断書を出したのに、また医師に書いてもらうのですか」と感じるかもしれません。4ページ目は、その診断書とは役割が違います。医師などの療養担当者が、病名、症状や経過、医学的な所見を踏まえて、療養のために働けなかったと認める期間を記入するページです。

例えば、通院を始めた日からずっと仕事を休んでいたとしても、通院期間がそのまま申請書で証明される期間になるとは限りません。医師が書くのは診察に来た回数でも、単に治療を続けている日数でもなく、仕事ができなかったと判断する期間です。会社が証明する出勤・賃金の記録とは、見ているものが違います。

途中で病院を変えたり主治医が交代したりした場合は、それぞれの医療機関に担当期間の意見を求めます。医師欄が複数になるときは、申請期間を分け、本人欄と会社欄もそれぞれ用意する形になります。

もう一つ、書式の確認も大切です。本人と会社は新しい様式なのに医師欄だけ古い様式だと、事務処理に時間がかかる場合があります。4ページを同じ新様式でそろえれば、本人・会社・医師のリレーがつながります。

7. 適応障害で休職したら、月にいくら受け取れる?

休職が決まったとき、書類以上に気になるのは毎月の生活費かもしれません。「給料の3分の2はもらえる」と聞いたことがあっても、ここには別々の二つの話が混ざっています。

まず、休職中に会社から給料が出るかは、会社の就業規則によります。無給となる会社もあれば、休暇制度などによって賃金が支払われる会社もあります。そして健康保険の傷病手当金は、手取り給与をそのまま3分の2にする制度ではありません。適応障害で休む場合も、ほかの対象となる病気で休む場合も、病名だけで金額が決まるわけではありません。

計算に使うのは、原則として支給開始日以前の継続した12か月の「標準報酬月額」です。これは健康保険料などの計算に使われる給与の等級です。協会けんぽの公的な計算例で、金額を追ってみましょう。

直近12か月の標準報酬月額が、26万円の月が7か月、30万円の月が5か月だったとします。平均額は約27万6,667円です。これを30で割って10円未満を四捨五入すると、9,220円になります。さらに3分の2にして1円未満を四捨五入すると、傷病手当金は1日6,147円です。

支給対象の日が30日ある場合は、6,147円×30日=184,410円となります。ただし、これは待期の3日間を含まない、支給対象日が30日あった場合の計算です。休職を始めた最初の30日間を、そのまま30日分の給付として見積もることはできません。

また、休んだ日に給与が支払われ、その額が傷病手当金の日額以上なら、その日については原則支給されません。少なければ差額が支給されます。有給休暇の賃金はもちろん、休職中にも出る住宅手当や通勤手当なども計算に関わります。支給開始前の加入期間が12か月に満たない場合は、別の比較計算が必要です。

支給される期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。まず給与明細と就業規則を並べて、「会社から何が出るのか」「健康保険からいくら補われるのか」を分けて考えると、休職中のお金の見通しが立てやすくなります。

8. 申請期限の「2年」は、休んだ日ごとに進みます

「休職が終わってからまとめて申請しよう」と考えているなら、期限の数え方を知っておきたいところです。傷病手当金の請求権は2年で時効になりますが、申請書1枚に共通の締切日があるわけではありません。働けなかった日ごとに、その翌日から2年を数えます。

厚生労働省が示した例では、2022年9月1〜30日の分を2024年9月15日に請求すると、9月1〜14日分は時効となり、15〜30日分は支給対象として残ります。ひと月分を一緒に請求しても、前半と後半で結果が分かれるのです。なお、時効によって支払われなかった日は、支給期間の「通算1年6か月」を使った日数には数えません。

とはいえ、2年を目いっぱい使う必要はありません。申請期間が終わってから会社と医師の証明をそろえて提出するのが基本です。協会けんぽは、給与の証明と合わせやすいように、会社の給与締切日ごとに1か月単位での申請を勧めています。

「いつかまとめて」より「今月分が終わったら次の申請へ」と進めるほうが、休職中の入金予定も追いやすくなります。

9. 退職したら、傷病手当金と失業保険はどうなる?

休職が長引くと、退職も選択肢に入ってくるかもしれません。ここで混同しやすいのが、健康保険の傷病手当金といわゆる失業保険です。前者は療養のため働けない期間を支える制度で、後者の雇用保険の「基本手当」は、働く意思と能力があり、求職していても就職できない人を対象にしています。

そのため、退職後も病気で今すぐ働けない状態なら、基本手当は受けられません。病気などで30日以上続けて働けない場合には、基本手当の受給期間を延長する仕組みがあります。通常の受給期間は離職翌日から原則1年ですが、働けなかった日数に応じて最長3年間延長できるので、ハローワークで早めに手続きを確認しましょう。

一方、健康保険の傷病手当金は、退職後も受け取りを続けられる場合があります。条件は、退職日までに対象となる健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あることと、退職時点で傷病手当金を受給中か、受けられる状態であることです。任意継続や国民健康保険などの加入期間は、この1年に含めません。

特に大切なのは退職日の過ごし方です。退職日に出勤すると、退職後の継続給付を受けられません。退職の手続きを進める前に、この条件を確かめておきましょう。

もう一つ、雇用保険にも「傷病手当」という名前の制度があります。これは求職の申込みをしたあとに、病気などで15日以上続けて働けなくなった場合の給付で、健康保険の「傷病手当金」とは別のものです。同じ日に他の法令による類似の給付を受けている場合は支給されません。名前だけで判断せず、今は療養が必要なのか、求職できる状態なのかを軸に整理すると分かりやすくなります。

10. 書類がそろったら、いつ振り込まれる?

本人・会社・医師の欄がそろったら、自分に必要な添付書類を確かめて提出します。協会けんぽの紙の申請書は、加入している都道府県支部へ郵送します。加入支部は「資格情報のお知らせ」などで確認できます。

電子申請なら入力漏れをシステムが確認してくれ、提出後の処理状況もスマートフォンやパソコンで見られます。紙の申請でも、不要な出勤簿や賃金台帳のコピーを一律に付ける必要はありません。

審査で支払い可能と判断された場合、協会けんぽの支払い目安は受付日から10営業日以内です。書類を会社に渡した日から数えるわけではない点も覚えておきましょう。

4ページ全部を一度に片づけようとしなくて大丈夫です。まず本人欄を記入し、会社と医師に証明を依頼し、申請期間が終わってから提出します。順番が分かれば、手続きは一つずつ進められます。

よくある質問

Q. 休職中に会社から給料が出ていても、傷病手当金を申請できますか? 申請できますが、支給されるかどうかは給与の額によります。休んだ日に対する給与や手当が傷病手当金より少なければ差額が支給され、同額以上ならその日の給付は原則ありません。会社の休職規程と給与明細を見て、支払いの対象期間も確認しましょう。

Q. 途中で病院を変えた場合、申請書はどうなりますか? 転院前後の医療機関それぞれに、担当した期間について意見を記入してもらいます。主治医の変更などで医師欄が分かれる場合は、申請期間も分け、本人欄と会社欄を含む申請書をそれぞれ用意します。

Q. 退職後、傷病手当金と失業保険の両方をもらえますか? 傷病手当金は働けないときの給付で、雇用保険の基本手当は働ける状態で求職するときの給付です。退職後の傷病手当金には継続加入期間などの条件があり、病気で30日以上働けない場合は基本手当の受給期間延長を利用できることがあります。退職前に健康保険とハローワークの両方で条件を確認しましょう。

参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません)

  • 全国健康保険協会『健康保険 傷病手当金支給申請書 記入の手引き(2026年10月版)』2026年。
  • 全国健康保険協会『健康保険傷病手当金支給申請書』『病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)』ほか、2026年11月取得。
  • 厚生労働省保険局保険課『健康保険法及び船員保険法改正内容の一部に関するQ&A追加』2021年。
  • 厚生労働省・ハローワーク『基本手当について』2026年11月取得。
  • 厚生労働省『モデル就業規則』。
  • 夏目誠、『臨床精神医学』編集委員会編『精神科診療に必要な書式マニュアル[第四版]』アークメディア、2017年。
  • 『精神科治療学』編集委員会編『精神科臨床144のQ&A』星和書店。
  • 櫻澤博文『ストレスチェック面接医のための メンタル産業医入門』日本医事新報社。

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執筆・監修

精神保健指定医 野口晋宏

春日メンタルクリニック院長。精神科・心療内科の診療経験をもとに、受診前の不安や制度の疑問を整理しやすい情報提供を心がけています。

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