家族の腕に傷を見つけたとき、何を言えばいいのかわからなくなるのは自然なことです。「どうしてこんなことを」「もう絶対にしないで」と言いたくなるかもしれませんが、その言葉が本人をさらに追い詰めてしまうこともあります。大切なのは、その場で自傷をやめると約束させることより、次につらくなったときに隠さず話せる関係を残しておくことです。
傷を見つけたとき、最初に何と言えばいい?
洗濯物を畳みながら、家族が最近長袖ばかり着ていることに気づきます。ある日、袖口から傷が見えて、思わず「何これ!」と声が出そうになります。
驚くのも、悲しくなるのも、腹が立つのも無理はありません。大切な人が自分を傷つけていたと知れば、家族の心も大きく揺れます。
ただ、その動揺をそのまま本人にぶつけると、最初の会話が最後の会話になってしまうかもしれません。
最初から事情を聞き出そうとしなくても大丈夫です。まずは少し間を置いて、落ち着いた声で話しかけてみてください。
本人から打ち明けてくれたなら、たとえばこんな言葉があります。
- 「教えてくれてありがとう。話すのは勇気がいったと思うよ」
- 「今まで一人で抱えていたことがあったのかな」
- 「心配しているよ。よかったら話を聞かせてほしい」
- 「すぐに全部説明しなくてもいいよ」
偶然傷を見つけた場合は、少し言い方を変えます。
「腕の傷に気づいたんだけど、私は心配しているよ。何かあったなら聞きたいと思っている」
このとき大切なのは、傷の理由を問い詰めるより、本人を心配している気持ちを伝えることです。
「いつから?」「何回やったの?」「どうして言わなかったの?」と次々に聞きたくなるかもしれませんが、本人も自分のつらさをうまく説明できないことがあります。
「別に」「何でもない」と返ってくることもあるでしょう。
そのときは「今は話したくないんだね。話せそうなときには聞くよ」と伝えて、少し時間を置いてもかまいません。
話してくれたこと自体を大切にしてください。本人が言葉を探しているあいだ、沈黙を家族が埋めなくてもかまいません。
「やめなさい」が届かないのには理由があります
自分で自分の体を傷つける行為は、家族にはなかなか理解しがたいものです。
「そんなことをしても何も解決しないでしょう」
そう言いたくなるのは、傷つけずに済む方法を選んでほしいからでしょう。
実際、自傷をしても、本人を苦しめている問題そのものは解決しません。
それでも本人にとっては、その瞬間の苦痛を何とかするための行為になっていることがあります。
たとえば、何をしても頭から離れない嫌な出来事があったとします。悲しいのか怒っているのかも自分でわからず、誰にも説明できません。
そんなとき、自傷によって一時的に気持ちが静まったり、自分で何かをコントロールできたように感じたりする人がいます。
もちろん危険を伴う行為ですが、本人にとっては、ほかに苦痛をしのぐ方法が見つからない状態なのかもしれません。
この違いを知らないと、家族と本人の会話はすれ違います。
家族は「体を傷つけてほしくない」と訴え、本人は「それをしなければ、苦しい気持ちをどう扱えばいいのかわからない」と感じています。
どちらも切実なのに、会話がかみ合わないのです。
自傷を繰り返すうちに、苦痛を感じ、自傷で一時的に落ち着き、後悔や罪悪感でまた苦しくなる、という循環ができることもあります。
「やめなさい」と伝えるだけでは難しいのは、そのためです。
自傷を見つけたときには、行為を止める話と並行して、「そこまで苦しくなる前に何があったのだろう」と考えてみてください。
本人が何に困っているのかを知ることが、関わり方を考える手がかりになります。
「もうしないと約束して」が逆効果になるのはなぜ?
「お願いだから、もう二度としないと約束して」
家族の立場なら、そう言いたくなるでしょう。約束さえしてくれれば、少しは安心できそうです。
本人もその場では、本気で「もうしない」と答えるかもしれません。
問題は、その約束を守れなかったときです。
再び自傷をしてしまうと、本人は傷つけたことへの後悔に加えて、「家族を裏切ってしまった」「また失望させる」という苦しさを抱えることがあります。
すると、次はもっと隠そうとするかもしれません。
本当は助けを求めたいのに、約束を破ったことが怖くて相談できなくなるのです。
家族が守ってほしかった約束が、かえって助けを求める妨げになることがあります。
では、何を話せばよいのでしょうか。
「絶対にしない」という約束を求める代わりに、次につらくなったとき、どうやって周りに知らせるかを一緒に考えてみてください。
たとえば、こんな会話です。
「また苦しくなったとき、私に何かできることはあるかな」
「話すのが難しければ、メッセージだけでもいいよ」
「言葉にできないときの合図を、一緒に決めておこうか」
つらさを声に出せない人もいます。短いメッセージや手紙、二人だけに意味がわかる絵文字などが、助けを求める方法になるかもしれません。
落ち着いているときに、何がきっかけで苦しくなりやすいか、誰に連絡できるか、どんな対応が助けになるかを一緒に整理することもできます。
すぐに答えが出なくてもかまいません。
約束を守れたかどうかで本人を評価するより、困ったときに知らせてもらえる道を作っておくことが大切です。
隠していたことを責めないでください
自傷について「人の気を引きたいだけでは」と考える人もいますが、実際には、自傷を周りに知られたくない人も多くいます。
心配をかけたくない、叱られたくない、行動を制限されたくないという気持ちのほかに、知られたら家族との関係が変わってしまうのではという不安もあります。
ですから、隠していたことを知って「どうして家族に相談しなかったの」と責めると、本人はますます話しにくくなるかもしれません。
学校の先生や友人には話していたのに、家族には話していなかったという場合もあります。
親としては寂しく感じるでしょうが、それが家族を信頼していない証拠とは限りません。
誰か一人でも話せる相手がいたことを、まずは大切にしてください。
学校から連絡を受けた場合も、知らせてくれた人への不満を本人の前でぶつけないようにしましょう。本人から学校という相談先まで奪わないためです。
家族が自分を責めすぎる必要もありません。
「自分の育て方が悪かったのか」「あのとき叱ったせいだろうか」と考え始めると、きりがありません。
自傷の背景は複雑で、家族の一つの言動だけで説明できるものではありません。
大切なのは、過去の犯人探しに時間を使うより、これから本人がつらさを話せる関係を作っていくことです。
「また傷つけてしまった」と言われたときにも、「どうして約束を破ったの」ではなく「何かつらいことがあったんだね」と返せるような関係です。
そうしたやり取りを重ねることが、いつか自傷する前に「今、つらい」と伝えてもらうための入口になるかもしれません。
傷の手当ては、気持ちの話とは分けて考えます
傷を見つけた家族がためらうことの一つに、「優しく手当てをしたら、また切ってしまうのでは」という心配があります。
しかし、傷を丁寧に扱うことと、自傷を認めて放っておくことは別です。自傷による傷も、手当てが必要なけがです。
「まず傷のことが心配だから、手当てをさせてもらってもいい?」
そんなふうに声をかけてみてください。本人が傷を見せたがらない場合も、隠していたことを責めたり、力ずくで見せさせようとしたりする必要はありません。ただし、傷の状態によっては急いで医療につなぐ必要があります。
本人に「手当てなんていらない」と言われると、家族もどうしてよいかわからなくなるでしょう。けれども、ここは自傷した責任を問う場面ではありません。「傷ついたところを放っておきたくない」と、体の安全を気にかけていることを伝えます。
出血しているときは、出血している場所にガーゼや清潔なタオルなどを当て、その上からじかに押さえて止血を試みます。手当てをする人は、できれば手袋を使い、なければビニール袋を手にかぶせるなどして、血液に直接触れないようにします。
汚れのある傷は、できるだけ早く水道水などの清潔な流水で十分に洗います。深い傷や汚れがひどい傷は、洗ったあと清潔に保ち、速やかに医師の診察を受けてください。
手当ての最中に「こんなことをして」と叱る必要はありません。傷を洗い、血を止める時間を、説教の時間にしないことです。
一方で、傷の処置だけで終わらせないことも大切です。傷ができるほどつらかったことにも、あとから目を向けます。体の傷と心の苦しさは、どちらか一方だけを扱えばよいものではありません。
「大丈夫そう」に見えても、命のことは確かめます
袖口から見えた傷が小さいと、「この程度なら大丈夫」と思いたくなるかもしれません。反対に、傷跡がいくつも見つかると、何もかもが手遅れのように感じるかもしれません。
けれども見た目だけで、そのときの命の危険やこれからの自傷を決めつけることはできません。家庭で傷の長さや数を数えて、安全か危険かを判定する方法もありません。
まず確かめたいのは、目の前のけがに対応が必要か、本人が呼びかけに応じられるか、そして今の安全です。
呼びかけても反応がない、反応しているか判断できない、多量の出血があるなど、命の危険が考えられる場合は、119番に通報してください。 周りにも応援を求め、反応がないときはAEDの手配を頼みます。出血している場合は、救急隊が来るまで傷口を直接押さえ続けます。
意識があって会話ができるからといって、医療的な確認が要らないとは限りません。深い傷やひどく汚れた傷は、速やかな診察が必要です。傷の処置を受けることと、自傷に至った事情を相談することは、両方進めてよいのです。
本人が「平気」と言っても、その言葉だけを頼りに、すべてを終わらせなくてよいでしょう。
「平気だと言っているのはわかったよ。でも、私は傷のことが心配なんだ」
こう伝えれば、本人の言葉を否定せずに、こちらが心配している理由も伝えられます。
自傷には、体のけがと心の苦しさの両方が関わります。傷を見ただけで全体を判断しようとせず、本人が何に困っているのか、今どのような状態なのかを確かめていくことが大切です。
「死にたいと思っている?」と聞いてもいいのでしょうか
自傷には、耐えがたい感情をしのぐために行われるものもあれば、死にたい気持ちが関わっているものもあります。自傷をしているから必ず死にたいと思っているわけではありませんが、「リストカットだから自殺とは関係ない」とも言えません。
もし本人が「消えてしまいたい」と口にしたり、自暴自棄になったり、身の回りのものを人に渡し始めたりしたら、その変化を気にかけてください。
聞くのが怖い質問ですが、遠回しに探るより、「私はあなたが心配なんだ。死にたいと思っている?」と率直に尋ねてよいのです。
打ち明けてくれたら、「そんなこと言わないで」とすぐに打ち消さず、まず話を聞きます。自殺の危険が考えられるときは、一人にしないでそばにいて、早めに専門家につなぎます。
本人の苦しさが強まっている、自傷の回数や程度が増えている、死にたい気持ちが強くなっているといった変化があれば、それは相談を先延ばしにしない理由になります。
また、本人が「死にたいわけじゃない」と話してくれたとしても、それで自傷の問題がなくなるわけではありません。死にたい気持ちがあるかどうかだけで、苦しさの大きさを測ることはできないからです。
「また自傷するのか」「これから命に関わることが起きるのか」と、家族が一人で先を見通そうとする必要はありません。
今の状態や本人が話してくれたことを、本人と相談しながら医療者にも伝え、必要な助けを一緒に考えていきます。
受診を勧める言葉は、命令より「一緒に探そう」
「精神科に行きなさい」と言われると、本人は自分の行動を取り締まられるように感じるかもしれません。
自傷を知られたあと、外出や友人との付き合い、好きなことまで制限されるのではと心配する人もいます。そもそも、自分には医療が必要だと思っていない場合もあります。
ですから、「自傷をやめさせてもらうために行こう」という話だけにしないことです。
「今どんなことがつらいのか、私だけではわからないところもあると思う」
「少しでも楽に過ごせる方法を、一緒に相談してみない?」
「一度行ってみて、合う相談先か考えるところからでもいいと思う」
このように、本人の困りごとを真ん中に置いて話すことができます。
自傷について相談できる専門の医療機関を探し、見つからないときは精神科で相談する、という始め方があります。一度目の受診ですべて解決しようとせず、本人に合う支援につながる最初の一歩と考えてください。
本人が「病院に行ったら、好きなことを全部禁止されるんでしょう」と心配しているなら、その不安についても話を聞きます。
受診を嫌がる理由がわからないまま説得を続けても、話は平行線になりがちです。何が嫌なのか、どんなことが不安なのかを聞くところから始めてもよいでしょう。
無理やり連れていこうとすると、これから相談していく関係そのものが難しくなることもあります。差し迫った危険がない場面では、本人の意向を大切にしながら、どうすれば相談しやすいかを一緒に考えます。
受診を拒まれた家族にも、できることはあります。本人が来られない場合に、家族だけで相談できる窓口や医療機関もあります。
本人を説得する言葉が見つからないときこそ、家族が外の人に話を聞いてもらうことに意味があります。家族自身が接し方を相談し、助けを借りることも、本人を支える道の一つです。
「次につらくなったら」を、落ち着いている日に考えます
自傷に気づいてから、家族は本人の様子が気になって仕方なくなるかもしれません。
部屋に一人でいると心配になり、長袖を着ていると傷を隠しているのではと考えてしまいます。少し表情が暗いだけでも、また自傷するのではと不安になります。
けれども、家族が一日中見張り続けるのは難しいでしょう。本人も、いつも疑われているように感じると、かえって息苦しくなるかもしれません。
そこで考えたいのは、見張りを増やすことより、困ったときの備えを一緒に作ることです。
英国NICEの診療指針では、自傷を経験した本人と協力して、安全のための計画を考えることが勧められています。
たとえば、落ち着いて話せる日に、次のようなことを一緒に整理します。
- どんな出来事や気持ちが、自傷したくなるきっかけになりやすいでしょうか。
- 苦しくなり始めたとき、自分ではどんな変化に気づくでしょうか。
- 音楽を聴く、体を動かすなど、ほかに試せそうな対処法はあるでしょうか。
- 家族以外も含めて、誰なら連絡しやすいでしょうか。
- 自分では対処できなくなったとき、どこに助けを求められるでしょうか。
家の中の危険なものをどう扱うかも、本人と相談しながら安全な環境を考えるための項目です。
大切なのは、家族だけで決めて本人に守らせる計画にしないことです。医療者とも相談しながら、本人が使いやすい形を探していきます。
たとえば家族が「つらくなったら必ず電話して」と言っても、本人には電話をかけること自体が難しいかもしれません。
それなら、「今日は話せない」と短いメッセージを送る方法でもよいでしょう。
「何があったか説明して」と問い詰める代わりに、「今は話を聞くほうがいい? それとも一緒に少し過ごそうか」と尋ねることもできます。
何が助けになるかは、本人に聞かなければわかりません。
家族が安心するための決まりではなく、本人が助けを求めやすくなるための備えとして、一緒に考えてみてください。
また自傷したとき、家族はどうすればいい?
一度話し合い、受診も勧め、本人も「気をつける」と言ってくれました。
それなのに、また新しい傷を見つけたらどうでしょう。
「これだけ心配しているのに」「あの話し合いは何だったの」と、がっかりするかもしれません。
しかし、そこで本人を責めると、再び自傷したことだけでなく、家族に知られたことまでが苦しい出来事になってしまいます。
そんなときは、最初に傷を見つけたときの対応に戻ってみてください。
「またつらいことがあったのかな」
「知らせてくれてありがとう。傷のことも心配しているよ」
以前の約束を持ち出すより、今の状態を確かめ、必要な手当てや相談につなげることを優先します。
自傷をしなかったら欲しいものを買う、繰り返したら好きなことを禁止する、といった駆け引きも避けたいところです。
家族の反応そのものが、自傷の意味を変えてしまうおそれがあるからです。
もちろん、家族がどれほどつらくても我慢し続けなければならない、という話ではありません。
「私は心配で、どうしたらいいかわからなくなることがある。一緒に考えるために、私も誰かに相談したい」
このように、自分の気持ちを主語にして伝える方法があります。
一度でうまく対応できなくても、その後の関わり方は考え直せます。家族にも、失敗したあとにやり直す余地があってよいのです。
きょうだいも、家族の様子を見ています
自傷への対応で家族が疲れ切っていると、家庭全体の雰囲気が変わることがあります。
本人の様子を気にかけるあまり、ほかの家族と過ごす時間が少なくなるかもしれません。
特にきょうだいがいる場合、何も言わずに我慢していることもあります。
「最近、あなたの話をゆっくり聞けていなかったね」
そんな言葉をかけて、きょうだい自身の気持ちにも関心を向けてみてください。
自傷のことを、家庭の中で一切触れてはいけない話題にする必要もありません。
ただし、本人のいないところで「あの子には困ったものだ」と悪く言うのは避けます。ほかの家族も、自分が失敗したら同じように言われるのではと感じるかもしれないからです。
一人の苦しさを大切にすることと、ほかの家族の気持ちを大切にすることは、両立させてよいのです。
支える家族にも、話を聞いてくれる人が必要です
自傷を知った家族は、誰にも相談できず、家庭の中だけで抱え込んでしまうことがあります。
本人の秘密を守りたい気持ちや、周りから育て方を批判されるのではという不安もあるかもしれません。
けれども、本人を支える人まで孤立する必要はありません。
家族は本人との距離が近いからこそ、冷静に考えるのが難しくなります。本人が自傷するたびに一喜一憂し、何も手につかなくなることもあるでしょう。
家族自身が相談相手を持つことで、本人との接し方を少し離れたところから考えられるようになる場合があります。
本人が受診を拒んでいても、家族だけで相談できる公的な窓口や医療機関を探す方法があります。すでに主治医がいる場合は、家族が気づいた変化を伝えることもできます。
なお、春日メンタルクリニックでは、ご本人についてご家族だけでのご相談はお受けできません。ご本人が受診できない場合は、公的な相談窓口や受診予定の医療機関へお問い合わせください。ご家族がご自身の不調で受診されることは、これとは別の話です。
家族自身が眠れなくなったり、気持ちが張り詰めたりしているなら、その苦しさも大切にしてください。
本人を支えるために、家族が自分の生活をすべて犠牲にする必要はありません。
必要なときには少し距離を取り、ほかの人に支えてもらうのも一つの選択肢です。
一人で何とかしようとするより、頼れる人を少しずつ増やしていくことが、本人にとっても家族にとっても助けになります。
傷がなくなった日だけを、成功にしないでください
家族としては、いつか自傷が完全になくなってほしいと思うでしょう。
それは自然な願いです。
ただ、自傷をしなかった日数だけを数えていると、再び傷をつけたときに、それまでの努力がすべて無駄になったように感じてしまいます。
本当に目指したいのは、本人が苦しい気持ちに振り回されることを少しずつ減らし、穏やかに暮らせるようになることです。
つらい出来事があっても、誰かに話せた日があるかもしれません。自分の気持ちを少し言葉にできたり、以前より助けを求めやすくなったりすることもあるでしょう。
そうした変化にも目を向けてください。
家族がまず覚えておきたいのは、完璧な声かけの言葉より、「また傷つけてしまった」と打ち明けられたときにも話を聞こうとする姿勢を残しておくことです。
今日、本人が何も話してくれなかったとしても、次に話せる機会までなくなったわけではありません。
自傷をやめさせることだけに必死になるより、つらいときに帰ってこられる会話を残しておくことです。
その関係が、これから助けを求めるための大切な入口になるかもしれません。
よくある質問
Q. リストカットをしている人に「やめてほしい」と言ってはいけませんか?
やめてほしいという気持ちを伝えること自体が悪いわけではありません。ただ、命令や説教になると、本人が相談しにくくなることがあります。「私は心配しているよ」と気持ちを伝えたうえで、何がつらいのか、どんな助けが必要なのかを一緒に考えてみてください。
Q. またリストカットをしたら、怒らずに放っておけばよいのでしょうか?
怒らないことと、何もしないことは違います。傷の状態と本人の安全を確かめ、必要な手当てや医療につなげることが大切です。そのうえで、何があったのかを聞ける関係を保ち、繰り返す背景にある苦しさにも目を向けていきます。
Q. 本人が何も話してくれないとき、家族はどうすればよいですか?
無理に聞き出さず、「話したくなったら聞くよ」と伝えておく方法があります。本人が家族以外の友人や先生に話せているなら、そのつながりも大切にしてください。家族自身も相談先を持ち、本人への接し方を一人で抱え込まないようにしましょう。
参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません)
- 『自分を傷つけてしまう人のためのレスキューガイド』松本俊彦 監修、法研、2018年。
- 『Self-harm: assessment, management and preventing recurrence(NG225)』National Institute for Health and Care Excellence(NICE)、2022年。
- 『「自傷」というサイン』厚生労働省「こころもメンテしよう」、年不詳。
- 『「消えてしまいたい」と考えるとき』厚生労働省「こころもメンテしよう」、年不詳。
- 『救急蘇生法の指針2020 市民用 改訂6版』日本救急医療財団 心肺蘇生法委員会 監修、2020年版。