「診断書をお願いします」と頼んだあとで会社から「指定の用紙で出してください」と言われ、病院にもう一度足を運ぶことがあります。傷病手当金を申請するときには、休職の診断書とは別の書類が必要になります。書類の名前を覚えるより先に、何に使うか・提出先の書式・いつまでに必要かの3つをそろえておきましょう。
1. 「診断書をください」のあとに、何を伝える?
診察室で「診断書が欲しいです」とだけ言うと、医師はまず「何に使う書類でしょうか」と確かめることになります。会社に休職を申し出るのか、復職に向けた意見なのか、学校に休学を届けるのかで、書く内容が変わるからです。
最初に伝えたいのは、その書類で何をしたいかです。同じ勤務先に出す書類でも、会社を休みたいときと、休んでいた会社に戻りたいときでは問われることが違います。休むときは今の状態と休養の必要性が、戻るときは仕事に戻れる状態かどうかと必要な配慮が中心になります。
次に、提出先から渡された用紙があれば診察に持っていきます。会社や学校に指定の書式があるのに、病院の一般的な診断書を先に作ってしまうと、書き直しになることがあります。まだ用紙を受け取っていなければ、指定の書式があるかどうかだけでも確かめておくとよいでしょう。
そして期限です。「できるだけ早く」より「来週の金曜日まで」と伝えるほうが、作成にかかる日数を確認しやすくなります。たとえば「会社に休職を申し出たいです。人事から渡された用紙があります。来週の金曜までに必要と言われています」と話せば、医師も依頼の全体をつかめます。ただし、希望の期限を伝えたからといって、その日に発行できるとは限りません。
医師が書くのは、本人の希望を代わりに文章にしたものではなく、診察でつかんだ症状や経過にもとづく医学的な判断です。表題が「診断書」「意見書」「証明書」のどれであっても、提出先が何を知りたいかによって書く内容が変わります。
当院では、書類の希望を事前のWEB問診に書いていただいています。休職の診断書は、診察の結果必要と判断すれば、初診当日に発行することもあります。
2. 適応障害の診断書を会社に出すと、どうなる?
適応障害の診断書を上司に渡しても、その紙が机の引き出しにしまわれて終わるわけではありません。厚生労働省の職場復帰支援の手引きが示す流れでは、管理監督者から人事労務の担当部署へ情報が伝わり、休業の手続きが進みます。本人には、休職中の事務手続きや傷病手当金などの経済的な支え、復職に向けた手順を説明することが想定されています。
このとき会社が読み取ろうとするのは、「適応障害」という病名だけではありません。今の状態で働くのが難しいのか、休養がどのくらい必要と考えられるのか、働き続けるならどんな配慮が要るのかも大事な情報です。同じ病名が書かれていても、必要な休養期間や仕事上の制限まで同じになるわけではありません。医師は診察した時点の状態とこれまでの経過を踏まえて判断します。
診断書を出せば自動的に一定期間の休職が決まる、と思っている方もいるかもしれませんが、実際の手続きや休職制度は職場ごとに異なります。提出の前後に「誰に渡すのか」「いつから休職扱いになるのか」「制度上どのくらいの期間休めるのか」「休んでいる間の連絡や書類の提出はどうするのか」を人事などに確かめておくと、次にすることが見えてきます。
もう一つ気になるのは、診断書を誰が読むかです。上司に渡した病名が職場じゅうに広まるのではないかと心配になるのも無理はありません。厚生労働省の手引きでは、健康に関する情報は必要な範囲で扱い、集めたり共有したりするときは本人の同意を重んじるとしています。提出先だけでなく、情報を管理する部署や共有される範囲も確かめておくと安心です。
一枚の紙が動かすのは、病名の報告だけではありません。本人が療養するための、職場の手続きそのものなのです。
3. 「復職できます」と書かれたら、すぐ元の仕事に戻れる?
休んで体調が上向き、主治医から「復職可能」と書かれた診断書を受け取ると、翌週から前と同じように働ける気がするかもしれません。けれども、日常生活を送れるまで回復したことと、職場で求められる仕事をこなせることは、いつも一致するとは限りません。
主治医は、診療でつかんだ症状や治療の経過をもとに、仕事に戻れそうかを判断します。一方で会社は、実際の仕事の内容や負担、職場の状況も考えなければなりません。そのため産業医などが主治医の意見を確かめ、必要があれば本人の同意を得て追加の情報を求めることがあります。
たとえば「復職可能」という一行があっても、元の勤務時間にすぐ戻すのか、仕事の量を調整するのか、配置を見直すのかまでは決まりません。復職日、担当する仕事、勤務の形、復職後の様子の確かめ方などを具体的に考えるのが、職場復帰の支援計画です。主治医の意見はその判断材料になりますが、実際の働き方を決めていく過程には、本人、職場、産業医などが関わります。
復職の診断書を頼むときは、今の体調だけでなく、元の職場でどんな仕事をしていたか、何が負担になりそうかも伝えておくと、仕事上の配慮について話しやすくなります。
4. 学校に出す診断書は、誰が読むのか
大学で休学を申し出ると、学校から診断書を求められることがあります。同じ学校に出す書類でも、読む人によって必要な情報は違います。
教務などの事務の担当者が知りたいのは、休学や復学の手続きを進めるために、いま学業を続けられる状態かどうかです。一方、保健センターなどの医療職にとっては、学生生活を支えるうえで治療の状況や今後の見通しが役立つことがあります。事務手続きに足りる簡潔な診断書と、支援に役立つ詳しい情報は、必ずしも同じものではありません。
たとえば授業に戻ることを考えるときは、どのくらい学業に取り組める状態かという情報が必要になります。休学中の支援を考える担当者には、治療の見通しが参考になることもあります。ただ、診断名や治療の詳細は大切な個人情報です。学校のどの部署にまで伝えるのかは、本人の希望を踏まえて確かめておきたいところです。
学校から診断書を求められたら、休学用なのか復学用なのかを確かめ、指定の用紙と提出期限を調べて診察に持っていきましょう。送り先が事務の窓口なのか保健センターなのかも分かっていると、何をどこまで書くか相談しやすくなります。
5. 傷病手当金は「休職の診断書をもう一枚」ではない
会社に診断書を出して休職に入ったあと、「今度は傷病手当金の書類を病院で書いてもらってください」と言われることがあります。休む必要があるともう診断されているのに、なぜ別の書類が要るのでしょうか。
それは、会社に出す診断書と傷病手当金の医師証明とでは、答える問いが違うからです。会社に出す診断書は、いま仕事を休む必要があることを伝えて、休職の手続きにつなげます。傷病手当金のほうは、病気やけがで働けず、給与を十分に受け取れない期間の暮らしを支える制度です。申請のときには「この期間、ふだんの仕事ができる状態だったか」が確かめられます。
ですから病院には、一般的な診断書をもう一枚頼むのではなく、「傷病手当金支給申請書の医師記入欄をお願いしたいです」と伝えます。申請書には、本人が書く欄、会社が勤務の状況や給与について証明する欄、医師が療養の状況について意見を書く欄があり、医師の証明だけで手続きが済むわけではありません。
ここで意外に大事なのが、ふだんの仕事の内容です。同じ症状を抱えていても、どんな業務を担当しているかで「これまでの仕事ができるか」を考える材料が変わります。診察では「会社員です」で終わらせず、具体的にどんな仕事をしていたか、休んだ期間にどんな状態だったかを伝えると、医師が判断する助けになります。最終的に支給するかどうかは、医師の意見だけでなく、仕事の内容などの条件も踏まえて決まります。
協会けんぽの傷病手当金では、仕事以外の原因による病気やけがの療養で仕事を休んだ場合、連続する最初の3日間が待期期間となり、4日目以降が支給の対象になります。給与が支払われていないことなども条件の一つで、給与が一部出ている場合は支給額が調整されます。
長く休むときは「何か月分をまとめて書いてもらえばいいのか」と迷うかもしれません。協会けんぽは、会社の給与締切日に合わせて約1か月ずつ申請する方法を勧めています。まず会社に締切日と申請する期間を聞き、その期間が分かるようにして用紙を病院に持っていくと、話がスムーズに進みます。
なお、医師が書類を作る時間と、健康保険の側が審査して振り込むまでの時間は別です。協会けんぽの案内では、申請を受け付けて支払えると判断した場合、10営業日以内に支払うとしています。診断書を頼んだ日から10営業日で振り込まれる、という意味ではありません。
6. 障害年金の診断書には、診察室の外の暮らしが要る
診察室で「最近どうですか」と聞かれて、「まあ、何とかやっています」と答える方がいます。短い診察のあいだは会話ができ、身なりも整って見えるかもしれません。それでも家に帰ると食事の支度が難しく、家族に毎日声をかけてもらってやっと暮らせている、ということがあります。
障害年金の診断書では、こうした診察室の外で、どれだけの支えが必要かが大切になります。一般的な休職の診断書が仕事を休む必要性を中心に伝えるのに対し、精神の障害用の年金診断書には、病状とあわせて日常生活や社会生活がどの程度制限されているかを詳しく書きます。病名だけを見て等級を決めるための書類ではありません。
たとえば「食事は取れています」の一言だけでは、暮らしの様子は十分に伝わりません。自分で買い物をして献立を考え、料理しているのか。家族が用意してくれるから食べられているのか。同じ「食べている」でも、必要な手助けは違います。「家事はできています」も、洗濯物をためずに片づけられるのか、家族に促されてやっと取りかかるのかで、暮らしの難しさの伝わり方が変わります。
ここでは、頑張ってできたことだけを報告しなくてかまいません。「一人では始められず、家族に声をかけてもらっています」「調子の悪い日は家事を代わってもらっています」と、どんな手助けを受けているかも伝えましょう。支えを受けながら落ち着いて暮らしていることと、支えなしで同じ暮らしを続けられることは別だからです。日本年金機構の記載要領でも、家族と同居しているなど手助けのある環境で生活が安定している場合は、手助けがない状況を想定して生活能力を評価する考え方が示されています。
診察した日の様子だけで決めないのも、この診断書の特徴です。記載要領は、おおむね過去1年間の、症状の良い時期と悪い時期の両方を考えに入れるよう求めています。昨日は外出できたけれど、その前の週はほとんど家事ができなかった、という場合、どちらか一日だけを切り取ると実際の姿から離れてしまいます。「調子がよい日はこれができますが、悪い日はここまで難しくなります」と伝えるほうが、波のある暮らしをそのまま示せます。
診断書には、今の状態だけでなく、発病からの経過、受けてきた治療、学校や仕事での様子も必要です。いつ頃から何が難しくなり、どんな支えを受けてきたかを短いメモにしておくと、整理しやすくなるでしょう。立派な文章にする必要はありません。医師に知ってほしいのは、よく見えた一瞬でも、いちばんつらかった一日だけでもなく、続いてきた暮らしの実際です。
7. 「障害年金の診断書を書いてくれる病院」を探す前に
「今の病院で年金の診断書を書いてもらえませんでした。書いてくれる病院に移ったほうがいいですか」。そう思ったときは、病院を探し始める前に確かめておきたいことがあります。
まず年金事務所などで、請求の要件、使う診断書の種類、症状を記載する日付を確かめます。日本年金機構も、作成を頼む前にこの点を相談するよう案内しています。初めて障害年金を請求する場合と、すでに受給していて障害状態確認届を出す場合とでは、必要な書類も手続きも違います。更新の用紙が届いているなら、提出期限も確かめておきましょう。
次に、通院の歴史を時間の順に整理します。ここで分けて考えたいのが、「今の病院に初めてかかった日」と「その病気で初めて医師に診てもらった日」です。後者が今の病院より前になることもあります。年金の診断書には、その最初の受診日を診療録で確かめたのか、本人から聞いたのかも区別して書きます。以前かかった医療機関、受診した時期、紹介状や治療記録があるかどうかを整理しておくことには、ちゃんと意味があるのです。
転院先の医師が、初めて会った日に過去の病状や長い治療の経過をすべて確かめられるとは限りません。まずは今の主治医に、作成が難しい理由は何か、診療の経過や資料がもっと必要なのかを聞いてみましょう。別の病院に問い合わせるなら、「精神の障害用の年金診断書に対応していますか」「作成できるか判断するまでに、どんな診療情報が必要ですか」と聞くと、話が具体的になります。
書いてくれる病院が見つかることと、希望どおりの内容で診断書ができること、年金が認められることは、それぞれ別です。必要なのは希望の等級を書いてくれる医師ではなく、病歴と今の暮らしを医学的に確かめられる診療の積み重ねです。
8. 保険会社の用紙は、何をどこまで証明する?
民間の医療保険を請求しようとすると、保険会社から「病院で診断書を書いてもらってください」と言われることがあります。手元にすでに診断書があっても、それで足りるとは限りません。保険会社が確かめたいのは、契約にもとづく請求に必要な入院や通院、治療の内容などだからです。
まず保険会社に、どの書類が要るのか、指定の用紙があるのかを確かめます。用紙が届いたら診察のときに持っていき、「この保険の請求に使います」と伝えるとよいでしょう。医師は、診察した内容や診療の記録を確かめて記入します。過去のあらゆる状態や、通っている病院が把握していない事実まで証明できるわけではありません。
保険会社が病院に直接、詳しい医療情報を求めることもあります。その際に大切なのが本人の同意です。同意書を渡されたら、何について、どの期間の情報を、誰に渡すことになるのかを読んでおきましょう。保険の請求に必要な情報と、医療機関が確かめて書ける情報の範囲をすり合わせることが、書類を頼む最初の一歩です。
9. 診断書はいくら? 何日でできる?
「診断書は3,000円くらいでしょうか」「明日までにできますか」。頼む前に気になるのはこのあたりでしょう。けれども診断書には、全国共通の料金表も、どの病院にも当てはまる仕上がりまでの日数もありません。費用は書類の種類で変わり、提出先が指定した書式かどうかでも違ってきます。
一つの例として、東京科学大学病院の医科の料金表を見てみましょう。2026年4月1日からの改定後の料金では、病院が用意する一般的な診断書は税込5,500円、保険会社の通院・入院・手術に関する指定診断書は13,200円、障害年金診断書は8,800円です。同じ病院でも、書類が変われば費用も変わります。これはあくまで一つの病院の料金で、全国の平均額ではありません。
同じ病院では、医師が作る書類の所要期間を2〜3週間ほどと案内しています。休診日や担当医の都合で延びることもあります。書類によっては詳しい診療経過の確認が必要になるため、急いでいても希望の日に間に合うとは限りません。
また、この料金表では、傷病手当金の支給申請書は一般の自費の診断書とは分けて、保険が使える書類として扱われています。「医師に書いてもらう紙はどれも自費の診断書」というわけではないのです。
頼む前に確かめておきたいのは、指定の用紙、文書の料金、受け取れるまでの目安です。給付金を請求する書類なら、病院で書類ができあがったあとに、提出先での審査や支払いの手続きが続くことも見込んでおきましょう。「書類ができる日」と「お金が振り込まれる日」は、別々の予定として考えておくと安心です。
10. 「希望どおりには書けません」と言われたら
「しばらく休みたいのに、希望した期間を書いてもらえませんでした」。診断書を頼むつもりで受診した方には、納得しにくい出来事かもしれません。けれども、つらさがあることと、求められた内容を医師が証明できることは別です。
たとえば初診では、話を聞いて診察しても、これまでの経過や回復の見通しまでは十分に判断できないことがあります。仕事の制限や休養期間を「何か月」と書くには、診察を重ねて状態をつかむ必要がある場合もあります。受診していなかった時期の症状は、当時の記録がなければ確かめられないこともあるでしょう。
会社でつらい出来事があった方が、「上司の言動が原因で病気になったと書いてほしい」と望むこともあります。医師は症状や病状の経過について医学的な所見を示せますが、誰が何をしたのか、その出来事が実際にどうだったのかまで、ふだんの診察だけで確定できるとは限りません。本人の経験を疑っているからではなく、医学的な判断と出来事の事実を確かめることとでは、扱える範囲が違うからです。
反対に、会社に知られたくないから軽く書いてほしい、制度の申請に必要だから重く書いてほしい、という希望にも、そのまま応じられるわけではありません。診断書は、書く時点で医師が把握している状態を表す書類だからです。
希望した文面は難しいと言われたら、「今の診察で書けるのはどこまでですか」「何が確かめられれば判断できますか」と聞いてみてください。診療の経過や資料をもっと重ねる必要があるのか、書類の用途に合う別の書き方があるのかが見えてくるかもしれません。
最初に準備するのは、何に使うか、提出先の書式、いつまでに要るかの3つです。診断書は、希望する結論を代わりに主張してくれる紙ではなく、医療で確かめた今の状態を次の手続きへ渡すための紙です。
よくある質問
Q. 初診の日に休職の診断書をもらえますか?
初診の当日に作成されることもありますが、診察で休養が必要と判断できることが前提です。症状やこれまでの経過について確かめきれないことがあれば、判断に時間がかかる場合もあります。希望する期間や文面のとおりに必ず発行される、という意味ではありません。提出先と期限を前もって確かめ、診察で何に使う書類かを伝えましょう。
Q. 傷病手当金の医師証明は、いつ頼めばいいですか?
まず会社に、給与の締切日と申請する期間を確かめてください。協会けんぽは、給与の締切りに合わせて約1か月ずつ申請する方法を勧めています。その期間が分かるようにして申請書を病院に持っていき、医師記入欄を頼みます。会社に出した休職の診断書とは、目的の違う書類です。
Q. 障害年金の診断書を今の病院で書いてもらえないときは、転院すればいいですか?
まずは今の主治医に、作成が難しい理由や足りない診療情報を聞いてみましょう。年金事務所などで必要な書式と症状を記載する日付を確かめ、これまでの受診歴も整理しておきます。転院したばかりの医師には、長い経過を判断する材料が十分にないこともあります。病院を変えるだけで、希望どおりの診断書や受給が約束されるわけではありません。
参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません)
- 『精神科診療に必要な書式マニュアル[第四版]』「臨床精神医学」編集委員会編、アークメディア、2017年
- 「所定用紙の診断書・証明書等一覧(医科)」東京科学大学病院、2026年2月26日時点(4月1日改定)
- 「精神の障害用の診断書を提出するとき」日本年金機構、2024年更新
- 「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」日本年金機構
- 「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)FAQ」全国健康保険協会
- 「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」厚生労働省