「ちゃんと寝ているはずなのに、昼間はどうしても眠い」。そんな状態が続くと、過眠症ではないかと気になります。セルフチェックは眠気を言葉と数字にする助けになりますが、点数が教えてくれるのは眠気の強さであって、その原因ではありません。まずは自分の眠気をどう確かめるかから考えてみましょう。
「疲れた」と「眠ってしまう」は同じでしょうか
「午後になると頭が働かない」「会議で話を聞いているつもりが、いつの間にか意識が途切れている」「休日に長く寝たのに、まだ眠れそうな気がする」。どれも「眠い」と言い表せますが、診察で確かめたいことは少しずつ違います。
過眠とは、本来なら起きて活動する時間に強い眠気が続き、居眠りを繰り返すような状態をいいます。夜の睡眠が長くなる場合もあります。一方で、「疲れて動けない」「気力が湧かない」と感じていても、実際には眠り込まない人もいます。疲労と眠気は重なる部分がありますが、同じものではありません。
たとえば、自分は「横になって休みたい」のか、「座っていると抗えずに眠ってしまう」のかを考えてみてください。うつ病などでは疲労感と眠気の両方が出ることもあり、本人にも区別しづらい場合があります。だからこそ、何時間寝たかに加えて、起きている間に何が起こるかが大切になります。
ここで覚えておきたいのは、眠気が強いことと、中枢性過眠症という病気があることは別だという点です。慢性的な睡眠不足でも、夜間に眠りが妨げられる病気でも、昼間には強い眠気が現れます。順番としては、まず「どのくらい眠いか」を調べ、そのあとで「なぜ眠いか」を考えます。
エプワース眠気尺度は「眠り込みやすさ」の物差しです
眠気のセルフチェックとしてよく知られているのが、エプワース眠気尺度(ESS)です。日常で出会う8つの場面を想定し、それぞれで居眠りしそうになる程度を本人が評価します。今日一日の眠さを尋ねるというより、普段の生活でどれほど眠りに落ちやすいかを数字にする質問票です。
ESSでは、合計が10点を超えると臨床的に重要な眠気として扱う医療者が多いとされています。つまり11点以上なら、眠気を詳しく調べるきっかけになります。とはいえ、11点になった瞬間に「過眠症」と診断されるわけではありませんし、ナルコレプシーなのか、睡眠時無呼吸なのか、単なる睡眠不足なのかを点数から読み分けることもできません。
日本には、日本の文化の中での答えやすさを検討して作られた日本語版(JESS)があります。原版を各自が自由に訳した質問票とは別のもので、検証も行われています。この記事では正式な8つの設問を独自に作り直して載せることはしないので、実際に評価するときは日本語版の質問票を使ってください。
もう一つ意外なのは、点数が低くても「問題なし」とは言い切れないことです。ESSが評価するのは、本人が感じている眠り込みやすさです。実際、睡眠時無呼吸の重症度が違っても、ESSの点数には差が出ないことがあります。眠気の数字を、睡眠中の呼吸や脳の状態を直接調べた結果のように読まないことが大切です。
点数と一緒に「困った場面」も残しましょう
セルフチェックで合計点が出たら、その横に具体的な出来事を一つ書いてみてください。「会議の途中で居眠りした」「朝起きられずに遅刻した」「作業中に気づかないうちに眠っていた」といった記録には、合計点だけでは見えない生活への影響が表れます。
過眠によって集中力や記憶力が落ちたり、仕事や人間関係に支障が出たりすることがあります。運転中や機械の操作中に意図せず眠ってしまう場合は、点数にかかわらず危険が伴います。数字が基準に届くまで待つ必要はなく、眠気で生活が妨げられているなら、それ自体が診察で伝える理由になります。
居眠りについては、その長さと目覚めた後の感覚も残しておくと役立ちます。短い居眠りですっきりするのか、長く眠ってもぼんやりしたままなのかという違いは、あとで過眠症の種類を考えるときの手がかりになります。
「午後は眠い」の一言より、「何をしているときに、どんなふうに眠ってしまったか」のほうが、次に何を調べるべきかを考える材料になります。セルフチェックは合否を決める試験ではなく、受診したときに自分の状態を説明するための道具として使えます。
最初の手がかりは、昨日の睡眠時間だけではありません
眠気の原因を考えるとき、最初に確かめたいのは睡眠不足です。多くの人は7〜9時間ほどの睡眠を必要としますが、必要な長さには人によって違いがあります。6〜8時間寝ていても、もともと長い睡眠が必要な人なら足りていない可能性があります。「平均くらい寝ているから足りている」とは限らないのです。
そこで役に立つのが睡眠日誌です。寝た時刻、起きた時刻、昼寝、昼間の眠気を、その日のうちに書き留めます。数日分をあとから思い出して埋めるより、毎日つけるほうが実態をつかみやすくなります。
時刻にも目を向けてください。たとえば、午前3時から8時まで眠った日は昼間に眠く、午前3時から11時まで眠れた日は楽になるなら、睡眠の長さと体内時計のずれが関係している可能性があります。同じ「昼間の強い眠気」でも、十分に眠る時間を確保した後にどう変わるかで、考える方向が違ってきます。
チェックで眠気を確かめ、記録で睡眠の実態を確かめると、点数だけを見つめているよりも、原因に近づくための情報がそろってきます。
いびきがあるなら、昼より夜に目を向けましょう
「寝ている時間は足りているのに眠い」という人でも、夜に十分休めているとは限りません。睡眠時無呼吸症候群では、眠っている間に呼吸が妨げられ、眠りが細かく途切れることがあります。本人は長時間寝たつもりでも、昼間には居眠りしたくなるわけです。
いびきは大事な手がかりですが、音の有無だけでは判断できません。呼吸の乱れが目立たなくても、気道が軽くふさがることで眠りが分断される場合があります。むずむず脚症候群や周期性四肢運動障害も、夜の睡眠を妨げて日中の眠気につながることがあります。
ESSが11点以上なら評価する理由になるのはもちろんですが、11点未満だから無呼吸が軽いと読むこともできません。眠気の尺度が測っているのは、夜の呼吸の乱れそのものではないからです。
薬と気分の変化も、睡眠の記録に並べてみます
眠気を調べるときは、寝る時間と同じくらい、何を飲んでいるかも手がかりになります。抗うつ薬、抗不安薬、痛み止め、抗てんかん薬などには、眠気に関わるものがあります。市販薬も例外ではなく、抗ヒスタミン薬で眠くなることがありますし、飲酒も眠気に影響します。
「いつから眠いか」を振り返るときに服薬や飲酒の状況も一緒に書いておくと、診察で話がつながりやすくなります。ただし、薬が原因だと決めつけて自分で中止するのは避けてください。見直すかどうかは、もとの病気との兼ね合いも含めて考える必要があります。
気分が落ち込んでいるときも、疲れて動けない感覚と、実際に眠ってしまう感覚は混ざりやすくなります。うつ病が眠気に関わる場合もあれば、精神疾患と過眠症が一緒にある場合もあり、どちらが中心かは簡単には決まりません。貧血や甲状腺機能低下症など、身体の病気が疲労や眠気に関わることもあります。
ですから、眠気が強いと分かったら、病名を急いで一つに絞るより、夜の眠り、薬、気分、身体の状態を並べて眺めてみることが大切です。
夜の眠りを確かめても残る眠気があります
十分な睡眠時間を取れるようにしても、夜の睡眠を妨げる病気が見当たらなくても、昼間の耐えがたい眠気が続くことがあります。そこで考えるのが「中枢性過眠症」です。代表的なものに、ナルコレプシー、特発性過眠症、そして反復性過眠症であるクライネ・レビン症候群があります。
同じ「起きていられない」でも、この三つは眠気の現れ方がずいぶん違います。違いを見るときは、眠ってしまう場面、昼寝の長さ、起きた後の感じ、眠気が毎日続くのか時期を区切って現れるのかが手がかりになります。
ただし、慢性的な睡眠不足があると中枢性過眠症によく似た症状になり、検査の結果まで似てしまうことがあります。順番を飛ばさずに、睡眠日誌などで実際の睡眠量を調べる意味はここにあります。
ナルコレプシーでは、短い居眠りの後にすっきりすることがあります
最も目立つのは、強い眠気が突然押し寄せ、起きていたい場面でも眠り込んでしまうことです。商談や食事の最中、集中が必要な仕事の途中など、ふつうなら起きている場面でも睡眠発作が起こりえます。数分から十数分ほど眠るといったんすっきりしますが、しばらくすると再び眠気がやってくることがあります。
もう一つ特徴的なのが、大笑いしたり驚いたり怒ったりしたときに、体の力が突然抜ける「情動脱力発作(カタプレキシー)」です。膝が崩れるような大きな脱力だけでなく、ろれつが回りにくくなるなど体の一部に出ることもあり、発作中の意識や記憶はふつう保たれています。眠気の強さを尋ねるだけのチェックでは、こうした症状は拾いきれません。
ナルコレプシーにはタイプ1とタイプ2があり、情動脱力発作の有無や髄液中のオレキシンの低下などが分類に関わります。オレキシンは、目覚めた状態を保ち、睡眠と覚醒の切り替えを安定させる働きをもつ物質です。この仕組みがうまく働かなくなることが、睡眠発作などに関係すると考えられています。
昼間の眠気だけでなく、夜中に何度も目が覚める人もいます。寝入りばなや目覚めるころに体が動かなくなる金縛りや、人の気配を感じるような鮮明な体験が起こる場合もあります。ただ、こうした体験は健康な人にも起こりうるため、「金縛りがあるからナルコレプシー」とは判断できません。
特発性過眠症では、眠った後も眠気が抜けにくくなります
ナルコレプシーの短い居眠りと対照的なのが、特発性過眠症でみられる長い昼寝です。1時間以上眠ってもすっきりせず、目覚めてからもしばらく頭が働かないことがあります。夜に10時間以上眠る人もいますが、夜の睡眠が通常の長さでも起こるため、睡眠時間だけで除外することはできません。
「朝、目は開いても起き上がれない」「起きた後の出来事が頭に入ってこない」といった強い起床困難は、睡眠慣性が長く続いている状態として説明されます。頭に霧がかかったような感じや、記憶・注意の困難を訴える人もいます。ESSには、こうした起きにくさや、昼寝をした後の回復感を書き込む欄はありません。
もちろん、長い昼寝をしたからといって特発性過眠症と決まるわけではありません。とくに情動脱力発作のないナルコレプシーのタイプ2は、特発性過眠症と症状の重なりが大きいとされています。だからこそ、本人の眠気の描写だけで診断を急がず、睡眠の経過と検査を組み合わせて考えます。
反復性過眠症では、眠い時期と普段の時期が入れ替わります
「何日もほとんど眠って過ごしたのに、その後はいつもどおりの生活に戻った」。そんな経過を繰り返すのが、反復性過眠症の一つであるクライネ・レビン症候群です。ほかの過眠症と違い、強い症状がある時期とない時期の差が目立ちます。
症状が出ている時期には、食事やトイレのために一時的に起きるほかは、ほとんど眠って過ごすことがあります。2019年の文献では、睡眠時間が1日18時間ほどになる例や、症状の強い時期が中央値で10日間続くという報告が紹介されています。症状のない時期には、睡眠も気分も考える力も普段の状態に戻るのが特徴です。
変化は睡眠だけにとどまらず、記憶や食欲、行動が変わったり、幻覚が現れたりする場合もあります。「長く寝る」という一点だけでは、この病気の特徴は捉えきれません。
まれな病気で、2019年の文献では100万人に1〜2人と推定されています。思春期ごろに始まる例が多く、原因は分かっていませんが、感染症やストレスがきっかけになる可能性も指摘されています。眠気が続く長さだけでなく、眠い時期が繰り返し現れ、その合間には普段の状態に戻るかが重要な手がかりになります。
睡眠外来では、チェックの次に何を調べるのでしょうか
ESSが自分で感じる眠気を測るのに対し、睡眠外来の検査では、夜の睡眠と昼間の眠りやすさを別々に調べ、点数の背後で何が起きているかを確かめます。
まず、睡眠日誌や、体の動きから睡眠時間を推定するアクチグラフィで、普段の睡眠を確かめます。睡眠不足でも過眠症に似た検査結果が出ることがあるためです。
夜間に行う終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)は、睡眠中の呼吸の問題などを調べる検査です。ナルコレプシーを調べる際には、十分な睡眠が取れたことや別の睡眠障害がないことを確かめたうえで、翌日に反復睡眠潜時検査(MSLT)を行います。昼間に何度か眠る機会を設け、眠りに入るまでの速さやレム睡眠の現れ方を調べます。
起きていられるかどうかを調べる覚醒維持検査(MWT)もあります。「眠りに落ちるまで何分かかるか」と「どれだけ起き続けていられるか」は、似ているようで違う問いです。検査結果は、普段の睡眠や薬の影響も踏まえて読みます。
受診を決めるのは、点数だけではありません
ESSが11点以上なら、眠気を詳しく調べる一つのきっかけになります。一方で、点数がそれより低くても、会議で繰り返し居眠りする、朝起きられずに仕事に遅れる、運転や機械の操作中に眠り込むといったことがあれば、生活への支障はすでに出ています。
十分に眠っても眠気が続く場合や、強い眠気が周期的に現れる場合も、睡眠外来で調べる理由になります。日誌には睡眠時間だけでなく、居眠りした場面、目覚めた後の感覚、いびき、服薬や市販薬の使用状況なども書いておくとよいでしょう。
チェックに合格も不合格もありません。数字に加えて、いつ眠くなり、何に困っているのかを伝えることが、原因を調べる一歩になります。
よくある質問
Q. エプワース眠気尺度で11点以上なら過眠症ですか? 11点以上は、眠気を詳しく調べる目安です。睡眠不足や無呼吸、薬の影響でも点数は高くなるため、それだけで病名は決まりません。点数が低くても生活に支障があれば、原因を調べる意味があります。
Q. 毎日8時間寝ていても過眠症の可能性はありますか? あります。ただ、まずはその8時間が自分にとって十分かどうかを確かめます。必要な睡眠時間が長い人では、8時間でも足りないことがあります。睡眠日誌で実際の睡眠を記録し、十分に眠れた日にも強い眠気が残るかどうかが手がかりになります。
Q. 反復性過眠症と、休日に寝だめすることは違いますか? クライネ・レビン症候群では、非常に強い眠気の時期が繰り返し現れ、考える力や行動が変わる場合もあります。その時期以外は普段の状態に戻るのが特徴です。休日に長く寝るという一点だけでは判断できません。
参考にした資料(要約・再構成。原文の転載ではありません)
- 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』American Psychiatric Association(髙橋三郎・大野裕 監訳)/医学書院/2014年
- 『精神科治療処方ガイドブック』高江洲義和・井上雄一、今西彩ほか/星和書店/2015年
- 『知っておきたい稀な精神症候・症候群』佐藤幹/星和書店/2019年
- 「中枢性過眠症」国立精神・神経医療研究センター病院/ウェブ資料、発行年不明
- “A New Method for Measuring Daytime Sleepiness: The Epworth Sleepiness Scale” Murray W. Johns/Sleep/1991年
- “A Practical Approach to Excessive Daytime Sleepiness: A Focused Review” Brian J. Murray/Canadian Respiratory Journal/2016年
- “Development of a Japanese version of the Epworth Sleepiness Scale (JESS) based on item response theory” 竹上未紗ほか/Sleep Medicine/2009年
- “Clinical and Polysomnographic Characteristics of Patients with Excessive Daytime Sleepiness” Yun Kyung Parkほか/Sleep Medicine Research/2018年
- “Idiopathic Hypersomnia” Lynn Marie Trotti/Sleep Medicine Clinics・Elsevier/2017年
- 「昼間の眠気―睡眠不足だけではなく睡眠・覚醒障害にも注意が必要」厚生労働省・健康日本21アクション支援システム/ウェブ資料、掲載年不明