デパス(一般名: エチゾラム)は、不安や緊張をやわらげるベンゾジアゼピン系の抗不安薬です。不安や緊張、眠れないときのほか、首や腰の痛み・緊張型の頭痛に伴う筋肉のこわばりにも、以前から幅広く処方されてきました。
効き目を実感しやすい薬である一方、長く続けるうちに依存が生じることがあり、近年は処方のあり方が見直されている薬でもあります。このページでは、デパスの効果と副作用、減らすとき・やめるときの注意点までを、添付文書に沿って整理しました。
すでに服用中の方に最初にお伝えしたいのは、「自己判断で急にやめないでください」ということです。不安な点があれば、このページを参考にしながら、主治医に相談してください。
どんな薬か
デパスは、脳の興奮を鎮めることで不安や緊張をやわらげる抗不安薬です。ベンゾジアゼピン系と呼ばれるグループに属し、不安をやわらげる作用に加えて、眠気を促す作用や筋肉の緊張をほぐす作用をあわせもっています。
添付文書上の効能・効果は、神経症やうつ病における不安・緊張・抑うつ・睡眠障害など、心身症(高血圧症、胃・十二指腸潰瘍)における身体症候と不安・緊張・抑うつ・睡眠障害、統合失調症における睡眠障害、頸椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛における不安・緊張・抑うつおよび筋緊張です。精神科だけでなく、内科や整形外科などでも処方されてきた薬です。
なお、デパスは「第三種向精神薬」に指定されており、保険診療では1回の処方が30日分までと決められています。
効果と作用の仕組み
脳内には、神経の興奮を抑えるGABA(ギャバ)という物質の仕組みがあります。デパスはこのGABAの働きを強めることで、不安や緊張、眠れないといった症状をやわらげます。
飲んでから比較的早く効果を感じやすく、効き目がはっきりしていることが特徴です。強い不安や緊張がつらい場面を乗り切る助けになる一方で、この「切れ味の良さ」が、あとで述べる依存につながりやすい面もあります。
また、不安が長く続く場合には、その背景に全般性不安障害などの病気が隠れていることがあります。その場合は、デパスで一時的に症状を抑えるだけでなく、背景にある病気そのものの治療を考えることが大切です。
服用の仕方
添付文書上の標準的な用法・用量は次のとおりです。ただし、これはあくまで標準であり、実際には症状や年齢、体の状態に合わせて医師が量と回数を調整します。
- 神経症・うつ病: 1日3mgを3回に分けて服用
- 心身症・頸椎症・腰痛症・筋収縮性頭痛: 1日1.5mgを3回に分けて服用
- 睡眠障害: 1日1〜3mgを就寝前に1回服用
高齢の方は副作用が出やすいため、1日1.5mgまでとされています。また、急性閉塞隅角緑内障のある方、重症筋無力症のある方は、症状を悪化させるおそれがあるため服用できません(禁忌)。
飲み忘れたときに、まとめて2回分を飲むことはしないでください。対応に迷うときは、主治医や薬剤師に確認してください。
効果が出るまでの期間
デパスは、服用後およそ3時間で血中濃度が最も高くなるとされています。抗うつ薬のように効果まで数週間かかるタイプの薬ではなく、飲んだその日から効果を感じやすい薬です。
一方で、体から抜けるのも比較的早く、消失半減期は約6時間とされています。そのため効果は数時間で薄れていき、「効いている時間」と「切れてくる時間」の差を感じやすい薬でもあります。薬が切れる時間帯に不安が強まるように感じるときは、自分で量や回数を増やすのではなく、主治医に伝えてください。
主な副作用と対処
最も多い副作用は眠気とふらつきです。添付文書では、眠気は13.2%、ふらつきは5%以上の頻度で報告されています。日中の眠気が強いときや、ふらついて転びそうになるときは、量や飲む時間の調整で軽くなることがありますので、主治医に相談してください。
そのほか、めまい、頭痛・頭重感、口の渇き、吐き気、食欲不振、倦怠感、脱力感などが報告されています(頻度0.1〜5%未満)。多くは軽いものですが、続くときやつらいときは、我慢せず診察でお伝えください。
特に高齢の方は、ふらつきから転倒・骨折につながることがあるため注意が必要です。夜中にトイレへ立つときなどは、ゆっくり動くようにしてください。
まれだが注意したい副作用
頻度は不明とされていますが、添付文書には次のような重大な副作用が記載されています。
- 依存性(急な減量・中止による離脱症状を含む)
- 呼吸抑制、炭酸ガスナルコーシス(呼吸の働きが弱まる状態)
- 悪性症候群(高熱、筋肉のこわばり、意識の変化など)
- 横紋筋融解症(筋肉痛、脱力、尿の色が濃くなるなど)
- 間質性肺炎(発熱、咳、息切れなど)
- 肝機能障害、黄疸(強いだるさ、皮膚や白目が黄色くなるなど)
いずれもまれですが、上のような症状に気づいたときは、続けるかどうかを自己判断せず、早めに主治医に連絡してください。意識がもうろうとしている、呼吸の様子がおかしいなど差し迫った状況では、救急(119)に連絡してください。
減らすとき・やめるとき
デパスは、連用により薬物依存が生じることがある薬です。長く飲んでいると体が薬に慣れていき、急に減らしたりやめたりしたときに、不眠や不安の悪化、ふるえ、まれに痙攣発作やせん妄などの離脱症状が現れることがあります。
大切なのは、「だから今すぐやめなければ」と焦らないことです。長く服用しているからといって、直ちに体に害が生じるわけではありません。危険なのは自己判断で急にやめることであり、減らすこと自体は、時間をかければ多くの場合、安全に進められます。
減らすときは、症状が落ち着いていることを確認しながら、主治医と相談のうえで少しずつ量を下げていきます。途中で不安や不眠が強まったときは、無理をせず、いったんペースを緩めることもあります。眠るためにデパスを使ってきた方では、依存の生じにくいタイプの睡眠薬への切り替えを検討することもあります。眠りの悩みについては不眠症のページも参考にしてください。
生活上の注意
- 車の運転など: 眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるため、添付文書では、服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないこととされています。服用中の運転は避けてください。
- アルコール: お酒と一緒に飲むと、精神機能や知覚・運動機能の低下が強まるおそれがあります。服用中の飲酒は控えてください。
- 妊娠中: 妊婦または妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与するとされています。妊娠中の方や妊娠を考えている方は、必ず主治医に伝えてください。
- 授乳中: 薬が母乳に移行し、赤ちゃんに影響が出ることがあるため、添付文書では授乳を避けることとされています。
- 飲み合わせ: ほかの睡眠薬や安定剤、一部の抗うつ薬(フルボキサミン)などとの併用で、作用が強まることがあります。服用中の薬・市販薬・サプリメントは、診察のときにお知らせください。
当院で処方するとき
当院では、デパスの効き目の確かさと依存のリスクの両方をご説明したうえで、必要最小限の量と期間で使うことを基本方針としています。不安や不眠が続く場合には、その背景にある病気の治療を優先し、依存の生じにくい薬や、薬以外の方法もあわせて検討します。
すでに他院などでデパスを長く服用してきた方に、急に中止を求めることはありません。現在の症状と服用の状況をうかがいながら、続けるか、少しずつ減らしていくかを一緒に考えます。「やめたいのにやめられない」というご相談も、どうぞそのままお話しください。
参考文献
- KEGG MEDICUS 医療用医薬品: デパス(添付文書) — 2025年12月改訂(第2版)、参照日: 2026-07-07
よくある質問
デパスはどのくらいで効いてきますか?
服用後およそ3時間で血中濃度が最も高くなるとされ、抗うつ薬のように数週間待つタイプではなく、飲んだその日から効果を感じやすい薬です。一方で効果の続く時間は比較的短く、切れ目を感じる方もいます。効き方に不安があるときは、量を自分で調整せず主治医に相談してください。
デパスを飲み続けると依存になりますか?
連用により薬物依存が生じることがあると添付文書に記載されており、漫然と長期間続けることは避けるべきとされています。ただし、飲んでいる方全員に問題が起こるわけではありません。大切なのは自己判断で急にやめないことです。減らすときは主治医と相談しながら少しずつ進めることで、多くの場合、安全にやめていくことができます。
デパスを飲んでいる間、車の運転はできますか?
できません。眠気や注意力・集中力・反射運動能力の低下が起こることがあるため、添付文書では、服用中は自動車の運転など危険を伴う機械の操作に従事しないこととされています。通勤や仕事で運転が必要な方は、処方を検討する段階で必ずご相談ください。
妊娠中や授乳中でも飲めますか?
妊娠中または妊娠している可能性のある方には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用するとされています。授乳中は、薬が母乳に移行するため授乳を避けることとされています。妊娠中・妊娠を考えている方・授乳中の方は、自己判断で中止せず、まず主治医に相談してください。
デパスは30日分までしか処方できないと聞きました。なぜですか?
デパスは「第三種向精神薬」に指定されており、保険診療では1回の処方が30日分までと決められているためです。長期の出張や旅行などで通院間隔が空いてしまう場合の対応は、事前に主治医にご相談ください。